家電王中村 剛監修
家電王
中村 剛なかむら つよし
2002年に「TVチャンピオン」のスーパー家電通選手権で優勝。現在は家電王として動画「くらしのラボ」をFacebookとYouTubeで毎週配信中!
「省エネって難しそう」、「我慢することが多そう」。そんなイメージがあるかもしれません。でも、特別に難しいことをしなくても、便利な生活を諦めなくても、消費電力量を減らすことは可能です。ここでは「省エネ」の基本を4つのステップに分けて紹介します。
「我慢」ではなく
「楽しくトクする」省エネを
「我慢」ではなく
「楽しくトクする」省エネを
省エネというと「多少の不便さは我慢して、電気を節約しながら暮らす」といったイメージがあるかもしれません。しかし、本来の「省エネ」とは我慢が伴うものではなく、エネルギーをセーブしつつも、家電製品を使う目的や得られる効果は落とさない、「かしこい使い方や効率的な暮らし方」のことを指します。
快適な生活を維持しつつ家計の負担も減り、地球環境にもやさしい暮らしができる。そんな三方よしの省エネをマスターすれば、今までよりも気分よく、ポジティブな気持ちで過ごせるはずです。
そこで、ここからは決して我慢をせず「おトクに、そして楽しく暮らす」ための省エネの基本について紹介していきます。
我が家の「ムダ」は?
電気の使用状況をチェック
省エネを始めるにあたり、最初のアクションは「電気の使用状況」のチェックです。自分の暮らしはどれくらいの電気を使っているのか?家電製品の使い方や使う時間帯、季節によって電気料金・使用量はどう変わるのか?使用状況を知ることが、具体的な省エネ対策を考える際の手がかりになります。
東京電力エナジーパートナーの会員サービス「くらしTEPCO web」の場合、最大で過去2年分の電気料金・使用量(売電料金・売電量)をグラフで表示可能。月別、日別、30分ごとなど、期間別のグラフも見られ、使用状況の傾向がわかります。
(※スマートメーター設置の有無、契約する料金プランにより利用の可否は異なります)。
グラフをチェックすることで、例えば「エアコンを多く使った日の消費電力量」がどれくらいだったか、「就寝中も稼働している冷蔵庫などの家電」によってどれくらいの電気料金がかかっているのかなどのイメージを持つことができ、ムダが多い部分を割り出せるでしょう。
エネルギー消費量の多い
家電製品を知っておこう!
自宅の電気の使用状況を把握すると同時に、そもそも「消費電力量が多い家電は何か?」を知ることも大切。まずはボリュームの多いところから手をつけていくほうが、効果が現れやすいからです。家庭における家電製品の電力消費割合を見てみましょう。
家電ごとの使用頻度は季節により異なりますが、消費電力量が増える夏と冬でいえば上位の顔ぶれに大きな違いはありません。そのため、「エアコン」「冷蔵庫」「照明」「給湯」などは季節に関係なく、省エネインパクトの大きい家電であるといえます。
ただし、注意したいのは消費電力量を抑えたいからといって、決して「我慢」をしないこと。特に夏にエアコンを使わず過ごすといった極端な「節電」をしてしまうと、部屋の中にいても熱中症のリスクが高まります。冬にはヒートショック対策も必要です。繰り返しになりますが、省エネは我慢ではありません。家電を快適に使いつつ、少しの工夫で大きな結果を出すことを意識するのが大切です。
余計な電気を使ってない?
家電を「正しく」使おう!
では、どうすれば負担やストレスなく省エネできるのでしょうか?家電ごとに細かい対策はありますが、すべてに通じる考え方は「製品の性能を最大限に発揮できる使い方」を意識することです。
最近の家電製品は少ない電力で高い効果が得られるよう、エネルギー効率が上がっています。例えば、冷蔵庫。2023年時点の冷蔵庫は10年前の製品に比べ、年間消費電力量が平均で約28~35%も低くなっています(※1)。その性能を十分に引き出すためには、「庫内に食材を詰め込みすぎない」「設置場所の周囲に十分な隙間を作る」といった、適切な使い方を守ることが重要です。
逆に、冷蔵庫の上に段ボールなどを置いたりすると、放熱を妨げ余計な電力を消費してしまうことも(小型の冷蔵庫で、上に電子レンジを置くために天面を耐熱設計している製品はこの限りではありません)。まずは、一つひとつの家電について、各メーカーが推奨する使い方ができているか見直してみましょう。
鵜呑みにできない
「省エネ術」も
世の中に出回る「省エネ術」のなかには、オススメできない内容も見受けられます。例えば、冷蔵庫の開閉時に冷気を逃がさないよう透明なカーテンをつける「テクニック」がありますが、取り付ける場所によってはカーテンが庫内にある温度センサーの働きを阻害し、性能を落としてしまうことも。雑菌の繁殖も気になります。誤った対策で、かえって製品のエネルギー効率を下げてしまわないよう注意しましょう。
壊れたから慌てて…ではなく
良いものをじっくり選ぼう
前述の通り、10年前と比較して家電のエネルギー効率は大きく向上しています。そのため、製品によっては買い換えることが一番の省エネにつながる場合も。
なかでも照明は買い替えたときのインパクトが大きく、白熱電球を電球形LEDに変えるだけで約86%の省エネになります(※2)。
家電を壊れるまで使うのは、物を大切にするという意味では尊いことです。しかし、省エネという観点で見れば、必ずしもプラスではありません。また、壊れてから慌てて買うとなると、今ある在庫のなかから選ばざるを得なくなります。価格や性能をじっくり吟味するためにも、自分の意志で計画的に買い換えることは重要です。
何より、家電を新しくすると暮らしは便利になります。特に、10年ぶりに冷蔵庫やテレビを新調するとなれば、その性能の差は歴然。生活が豊かになり、以前より少しだけ楽しい気持ちで毎日を過ごせるはずです。
みんなの家電
買い替えサイクルは?
主要な家電製品はどれくらいの使用年数で買い換えるのが一般的なのでしょうか。内閣府の消費動向調査(令和6年3月実施調査結果)によれば、買い替え前の平均使用年数は「エアコン」が14.1年、「冷蔵庫」が14.0年、「洗濯機」が10.9年、「カラーテレビ」が10.7年となっています。もちろん家庭によって事情は異なるため一概には言えませんが、買い替え時期を検討する一つの参考にしてみてはいかがでしょうか?
※令和5年4月から令和6年3月の間に当該製品の買い替えをした二人以上の世帯について、買い替え前に使用していた製品の平均使用年数を調査。
出典:内閣府「消費動向調査(令和6年3月実施調査結果)」をもとに作成