エアコンの省エネ術
エアコンは家庭での消費電力量が多く、そのぶん省エネインパクトも大きい家電です。夏の冷房、冬の暖房ともに「過ごしやすい体感温度」をキープしつつ、無理なく消費電力量を減らす3つのポイントを紹介します。
「体感温度」を意識して
夏も冬も過ごしやすく
実践する時のポイント
- ・風向きや風量、サーキュレーターで「体感温度」を調整
- ・設定温度は夏の冷房28℃、冬の暖房20℃が目安
エアコンを使う目的は、「快適な温度で過ごすこと」です。しかし、だからといって設定温度をむやみに上げすぎたり、下げすぎたりすると、かえって体に負担をかけてしまうことも。また、外気温と設定温度に差があればあるほど多くの電力を消費するため、省エネという観点からも無駄が大きいといえます。
大切なのは設定温度ではなく、「体感温度」のコントロールです。例えば、季節によってエアコンの風向きを変えてみましょう。暖かい空気は天井付近に上昇しやすく、冷たい空気は下に下りてくるため、冬の暖房の際は風の方向を下向きに、夏の冷房の際は風を遠くへ飛ばすため水平に調整すると、過ごしやすい体感温度になります。他にも、温度ではなく「風量」を変えたり、サーキュレーターで風を攪拌させたり、ドアや窓の開閉を少なくするのも有効です。
ちなみに、設定温度の目安は夏の冷房時が28℃、冬の暖房時が20℃です。夏の冷房時の設定温度を27℃から28℃にした場合、年間の電気代は約940円おトクに(注1)、冬の暖房時の設定温度を21℃から20℃にした場合、年間の電気代は約1650円もおトクになります(注2)。(※1)
(注1)外気温度31℃の時、エアコン(2.2kW)の冷房設定温度を27℃から1℃上げた場合(使用時間:9時間/日)
(注2)外気温度6℃の時、エアコン(2.2kW)の暖房設定温度を21℃から20℃にした場合(使用時間:9時間/日)
「窓」を変えるだけで断熱性UP
体感温度は、建物の断熱性能や部屋の日当たりなどによっても大きく変わります。比較的、コストや手間をかけずにできる対策としては、熱の出入りが多い窓を変更すること。既存の窓をペアガラス(複層ガラス)や真空ガラスに変えるだけでも断熱性能は向上します。また、夏はレースのカーテンなどで日差しをカットしたり、冬は床まで届く厚手のカーテンを使うのも有効です。
過ごしやすい時間帯は
エアコンを切って換気
実践する時のポイント
- ・冷房、暖房は「必要な時だけ」つける
- ・つけっぱなしのほうがおトクになるケースも
夏や冬はエアコンを一日中フル稼働させている家庭も多いと思いますが、冷房、暖房ともに「必要な時だけ」つけるのが基本です。
例えば、夕方になり部屋の中より外気温の方が下がっている時など、窓を開けて換気をしたほうが快適に過ごせる場合はエアコンを切りましょう。冷房を1日1時間短縮した場合(設定温度28℃)は年間の電気代が約580円おトクに、暖房を1日1時間短縮した場合(設定温度20℃)は年間の電気代が約1260円おトクになります(※1)。
ちなみに、「エアコンはつけっぱなしのほうが電気代は安くなる」という話を聞いたことはないでしょうか?結論から言うと、これはケースバイケースですし、建物の断熱性能によっても異なります。
基本的に、在宅時の(必要な時間帯は)つけっぱなしでOK。最新のエアコンには赤外線センサー、人感センサー等多くのセンサーが搭載されていて、その部屋に人がいない場合は自動で省エネ運転に切り替わる等の最適運転を行うため、部屋を移動するたびにオン・オフしたりはせず、エアコンに任せたほうがおトクです。
使うたびに「賢くなる」エアコンも
最新のエアコンのなかには、使うたびに家の断熱性能を学習し、最も効率的かつ快適な運転になるようパーソナライズしてくれるものもあります。また、外出時などの「つけっぱなし判定機能」を備えたエアコンも。専用アプリに外出時間を入力するだけで、消さずに外出した場合と、いったん運転を停止し帰宅後に運転を再開した場合、両方の予測電気代と帰宅時の予測温度がわかって便利です。
冬はエアコンをメインに
暖房器具の使い分けを
実践する時のポイント
- ・部屋全体の暖房にはエアコンを使用しよう
- ・その他の暖房器具は適材適所で使い分けを
夏の冷房はほぼエアコン一択なのに対し、冬の暖房はエアコン以外にもファンヒーターやオイルヒーター、電気ストーブ、床暖房、ホットカーペットなど、様々な方法があります。そのため、冬はあまりエアコンを使わないという人もいるかもしれません。
しかし、暖房と一口に言っても、その方式によってメリットやデメリット、暖めるエリアは異なります。そのため、暖めたい場所や目的などに合わせ、適切な暖房方式を選ぶことが大事です。
例えば、エアコンやファンヒーターのような「対流式」の暖房方式は、部屋全体を暖めるのに適しています。また、ハロゲンヒーターや電気ストーブといった輻射式の暖房方式は、部分的に暖めたい時に使います。一方、同じ輻射式でもオイルヒーターなどは高気密・高断熱の部屋でなければ十分に性能を発揮することはできません。
部屋全体の暖房については基本的にエアコンを使い、人がいる場所をピンポイントで暖めたい時には電気ストーブを使うなど、暖房器具を適材適所で使い分ける。そうすることで、それぞれの性能を最大限に発揮させることができ、結果的に省エネにつながります。
エアコンは
低コストな暖房器具
同じ暖房でも、機器によってランニングコストは大きく異なります。1時間あたりの電気代はエアコン(効率平均的APF)が5.4円なのに対し、電気ストーブ(赤外線ヒーター・セラミックヒーターなど)は31円。都市ガスや灯油を使った暖房と比較しても、エアコンの方がランニングコストを抑えることができます。
[試算条件]
電気料金:31円/kWh(税込み)「全国家庭電気製品公正取引協議会」
ガス料金:153.86円/m3(税込み)東京ガス「一般契約」料金表B東京地区等(2024年5月検針分)
灯油料金:2,093円/18L(税込み)石油情報センター
民生用灯油(給油所以外)価格調査(消費税込み店頭価格)(関東局)(2024年4月)
エアコン選びの
ポイントをチェック!
省エネインパクトの大きいエアコンは、「買い替えによる省エネ効果」もとても高い家電です。エアコンの買い替えサイクルは14.1年(※2)。そろそろ買い替え時期かな? と思ったら、ぜひ「機器選びのポイント」もチェックしてみましょう。
「エアコン選びのポイント」をチェックする
2002年に「TVチャンピオン」のスーパー家電通選手権で優勝。現在は家電王として動画「くらしのラボ」をFacebookとYouTubeで毎週配信中!