2. 福島第一原子力発電所の現状とこれまでに実施してきた対策

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5) その他リスクに対する対策

① 汚染水の地下水への漏えい防止対策について

建屋地下へ漏えいした高濃度汚染水(滞留水)については、「循環注水冷却システム」によって水処理をした上で再び原子炉へ注水していますが、水処理設備を拡充するなどの措置によって滞留水全体量が減少しました。建屋地下にある滞留水の水位が地下水位よりも高くなると、滞留水が地下水へ流出してしまう可能性がある一方で、滞留水の水位が下がって地下水位と水位差が大きくなり過ぎると、逆に地下水が流入し滞留水の量が増加することから、滞留水の水位については、建屋地下への地下水の流入分と水処理設備への移送分をバランスさせ、建屋地下の滞留水を一定水位(海抜約3m程度)に保つ取り組みを続けています。

2・3号機のタービン建屋地下水位の変動

図10. 2・3号機のタービン建屋地下水位の状況

平成24年1~2月には、凍結が原因と思われる漏水が約30件発生しました。前年12月から高濃度汚染水が含まれている配管、原子炉への注水に使用する配管へ優先的に保温材の取り付けなどの凍結防止対策を進めてきましたが、放射性物質を含まないろ過水などの配管に対する凍結防止対策が間に合わなかったり、対策を実施済みではあったものの、不十分だったものです。その後、保温材の取り付けを行なったほか、小屋掛け(機器や配管を直接風雪に晒さない)などの追加対策を実施し、凍結を原因とする漏水リスクを低減しています。

この他、発電所内には高濃度汚染水を処理した後の処理水が、平成24年2月21日現在、約12万トン保管されています。この処理水は、高濃度汚染水ほどではありませんが放射性物質を含んでおり、いかに安全に保管するかが重要な課題です。まずは、配管やタンクの点検や取替などの信頼性向上を図り、漏えいするリスクを低減します。また、平成24年度上半期を目途に「多核種除去設備」の設置を進め、処理水に含まれる放射性物質を法令で定められている濃度限度以下まで低減していくこととし、万一漏えいしても環境への影響が無いレベルにする予定です。

② 作業員の安全対策

これまでの復旧作業において、放射線の被ばくにより健康面での影響が確認された協力企業作業員や当社社員はいませんが、平成24年2月末現在、緊急作業時における被ばく線量限度250mSvを超えた社員が6名います(協力企業作業員は0名)。6名のうち、最大で678.80mSv(最小は310.97mSv)でした。事故直後の対応において、全面マスクの隙間などから放射性物質のヨウ素131が体内に取り込まれた内部被ばくが主な原因でした。また、平成23年3月24日には3号機のタービン建屋地下において、協力企業作業員3名が高濃度汚染水に足を浸けてしまい、最大で238.42mSv(最小は175.62mSv)の被ばくをしています。高濃度汚染水に浸かったためベータ線熱傷の疑いがありましたが、放射線医学総合研究所において異常なしとの診察結果が出ています。上記の9名は現在は発電所では作業をしておりません

事故後しばらくの間、外部被ばく線量を測定する個人線量計(APD)と内部被ばく線量を測定するホールボディカウンター(WBC)が不足しましたが、現在ではそれぞれ十分な数を備えております。なお、被ばく線量が100mSvを超える作業員及び緊急作業への従事期間が1か月を超える作業員については、毎月、臨時健康診断を実施しております。

その他、発電所内に緊急医療室を設置したり、医師の24時間常駐化を行うなどの医療体制の強化を図ったほか、夏には熱中症防止対策として休憩所の設置やクールベストの配備を行い、冬には5,000人を超える作業員に対しインフルエンザの予防接種を無償で実施するなど、作業員の健康管理に取り組んでいます。

外部被ばく線量と内部被ばく線量の合算値の分布表

表2. 外部被ばく線量と内部被ばく線量の合算値の分布表

■被ばく線量の状況

(解説)放射線測定方法

放射線量の高い建屋内や屋外では、平成23年4月からロボットを使用して建屋内の線量を測定したり、屋外の放射線量の高い瓦礫をロボットを用いて無線による遠隔操作で撤去する作業を行っています。ロボットの他、無人ヘリなども使用されていましたが、調達に当たっては、国内のみならず海外からも幅広くご提供頂いています。

主な現場導入済みロボット(例)

主な現場導入済みロボット(例)


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