2) 大気への放出抑制対策
大気への放射性物質の放出抑制対策として、建屋や周辺部の地面に飛散防止剤を散布し、放射線量の高い埃の舞い上がりを抑制する措置を講じました。また、1号機の原子炉建屋全体を覆うカバーを取り付けました。
さらに、原子炉格納容器からの放出を低減するために、1~3号機に格納容器ガス管理システムを設置しました。この設備は、格納容器内のガスを放射性物質を除去する装置を通して排気することによって、(格納容器内のガスに含まれる)放射性物質の放出を低減させるものです。
4号機原子炉建屋は、3号機のベントの際に流入した水素によって爆発したと推定されていますが、全ての燃料は使用済燃料プールの冷却によって維持されており、同号機からの放射性物質の放出はほとんどないと考えられます。また、使用済燃料プールから水の蒸発とともに放射性物質が大気中へ移行することはほとんどなく、建屋内の瓦礫にも放射性物質の付着は少ない状況です。したがって、発電所から放出されている放射性物質の放出源は、主に1~3号機の原子炉建屋です。
①飛散防止剤の散布
平成23年4月より人による散布を開始し、その後、クローラーダンプ、同年5月より屈折放水塔車(高圧放水車)とコンクリートポンプ車を用いて、発電所構内(平地・法面)および建物周り合計約56万m2に対して飛散防止剤を散布し、同年6月末時点に予定範囲への散布を完了しました。
【動画】福島第一原子力発電所2号機原子炉建屋外壁・屋根への飛散防止剤の散布(平成23年6月1日撮影) 02:08
②1号機原子炉建屋カバー取付
平成23年5月から10月にかけて、1号機の原子炉建屋において、放射性物質の飛散を抑制する原子炉建屋カバーを取り付けました。このカバーに取り付けられた排気設備によって原子炉建屋から放出される空気中の放射性物質の濃度を100分の1以下に減らすことができる他、原子炉建屋への雨水等の浸入を防止することができます。
工事に当たっては、古来より木造建築で用いられている工法から発想の得られた、作業員の被ばく低減のため全ての部材の組み立てを遠隔操作で行う画期的な工法を採用しました。
福島第一原子力発電所1号機原子炉建屋カバー計画概要と本体工事の着手について(平成23年6月14日)
福島第一原子力発電所1号機原子炉建屋カバー工事の完了について(平成23年10月28日)
③格納容器ガス管理システムの設置・運用
平成23年10月に2号機、12月に1号機の格納容器ガス管理システムの運用を開始しました。3号機も平成24年2月から試運転を開始しました。
この装置によって、放出される放射性物質の濃度を100分の1以下に減らすことができる他、放射性物質の成分や水素濃度を測定することができます。核分裂が発生すると観測される、半減期の短いキセノン135の濃度についても測定を行い、原子炉内で再臨界が起きているかどうかの確認をしています。
平成23年11月に2号機でキセノン135の濃度が約1×10-2Bq/cm3の濃度で測定されましたが、これは、キュリウム242やキュリウム244の自発核分裂によるものであり、原子炉内で再臨界が起きているものではないと判断しています。
※記載内容に一部誤りがございましたので、以下訂正させて頂いております。(平成24年3月13日訂正)
<訂正前>「平成23年11月に2号機でキセノン135の濃度が約1×10-3Bq/cm3の濃度で測定されましたが、」
<訂正後>「平成23年11月に2号機でキセノン135の濃度が1×10-2Bq/cm3レベルの濃度で測定されましたが、」
福島第一原子力発電所2号機原子炉格納容器ガス管理システムの運用開始について(平成23年10月27日)
福島第一原子力発電所1号機原子炉格納容器ガス管理システム試運転開始について(平成23年12月8日)
福島第一原子力発電所2号機におけるキセノン135の検出に関する経済産業省原子力安全・保安院への報告について(平成23年11月4日)
記者会見配付資料
※格納容器ガス管理システムによる放射性物質濃度の測定結果等については適宜『記者会見配付資料』の中で、『福島第一原子力発電所○号機原子炉格納容器ガス管理システムの気体のサンプリング結果について』という資料名で掲載しています。
なお、発電所敷地境界に設置されたモニタリングポストや事故後発電所内に設置された仮設モニタリングポストによって、計11箇所で常時、放射線量の測定を行っている他、空気中の放射性物質の濃度測定を日々行い、監視を続けております。
(参考)発電所敷地外の放射線量
(解説)放射線量、放射性物質濃度とは
【動画】第三弾「発電所内の放射線モニタリング」第1回放射線の計測方法 25:08
※動画中、8分40秒~「放射線と放射能の単位」をご参照下さい。