1) 事故はどのようにして起きたのか
福島第一原子力発電所には1号機から6号機まで6つの原子炉があります。 東北地方太平洋沖地震が発生したとき、1号機、2号機、3号機は定格出力で運転しており、4号機、5号機、6号機は定期検査中でした。
号機 | 定格出力 | 地震前の状態 | 地震直後の状態 |
---|---|---|---|
1号機 | 46万kW | 運転中 | 自動停止 |
2号機 | 78.4万kW | 運転中 | 自動停止 |
3号機 | 78.4万kW | 運転中 | 自動停止 |
4号機 | 78.4万kW | 定期検査中 | - |
5号機 | 78.4万kW | 定期検査中 | - |
6号機 | 110万kW | 定期検査中 | - |
1号機、2号機、3号機では、地震の揺れが大きいことを検知し、全制御棒が自動的に挿入され、原子炉は安全に停止しました。地震の影響で福島第一原子力発電所は全ての外部電源が喪失しましたが、非常用ディーゼル発電機が自動起動したことで発電所内の電源は確保され、原子炉は冷却されていました。その後、地震により発生した巨大な津波が来襲し、非常用ディーゼル発電機などの電源設備や冷却用海水ポンプなどが浸水して使用不能となりました。今回の事故対応をさらに困難にしたのは、外部電源や非常用ディーゼル発電機からの電気が供給できなくなったことだけではなく、中央制御室で原子炉内の水位や圧力を監視したり、原子炉を冷やすために最低限必要な直流電源のバッテリーまでもが、津波による浸水やバッテリー切れにより使用できなくなり、監視や冷却の操作ができなくなったことでした。
原子炉内の燃料が十分に冷却できなくなった結果、各号機の原子炉圧力容器内の水位が低下し、燃料が水に覆われずに露出しました。そのため、燃料の外側を覆っている燃料被覆管という金属製の管が高温により損傷し、閉じこめられていた放射性物質が放出されました。また、燃料被覆管と水蒸気の化学反応により大量の水素が発生しました。これらの放射性物質や水素は、蒸気とともに主蒸気逃し安全弁等を経て原子炉格納容器へ放出され、さらに、高温にさらされた格納容器上蓋の結合部分等のシール部分から原子炉建屋内に漏えいしたと推定されます。1号機と3号機は、漏えいした水素が原子炉建屋上部に蓄積し、原子炉建屋が爆発するという事態に至りました。4号機は3号機の格納容器ベントの際に、排気筒合流部を通じて原子炉建屋内に水素が流入し蓄積したと推定されており、その結果、爆発するという事態に至りました。
一方、1号機から6号機の各原子炉建屋内の使用済燃料プールと運用補助共用施設内の使用済燃料共用プールの冷却機能も、全交流電源の喪失等により失われました。
福島原子力事故調査報告書(中間報告書)
※報告書中、『2.3福島原子力発電所事故の概要』、『6.地震の発電所への影響』『津波による設備の直接被害の状況』『9.プラント水素爆発評価』『10.事故の分析と課題の抽出』をご参照下さい。
福島原子力事故調査報告書(中間報告書) 本編(概要版)(平成23年12月2日)
福島原子力事故調査 中間報告書の公表について(平成23年12月2日)
※福島原子力事故調査報告書(中間報告書) 本編の他、添付資料等をご覧頂けます。