4) 再び大きな地震・津波がきた場合の対策
再び大きな地震、津波がきた場合に備えて、バックアップ設備の配備や連絡体制の強化等の対策を行っています。
① 地震への備え
今回の地震によって、原子炉建屋およびタービン建屋や耐震安全上重要な機能を有する主要な機器・配管に大きな損傷はありませんでした。実際の地震観測記録をもとに、原子炉建屋およびタービン建屋、耐震安全上重要な機能を有する主要な機器・配管がどの程度の影響を受けたかを解析した結果、評価基準値よりも十分な余裕を有していたことを確認しています。
■2・4号機 原子炉建屋
福島第一原子力発電所における東北地方太平洋沖地震の観測記録を用いた地震応答解析結果に関する報告書等の経済産業省原子力安全・保安院への提出について(平成23年6月17日)
■1・3号機 原子炉建屋
福島第一原子力発電所における東北地方太平洋沖地震の観測記録を用いた地震応答解析結果に関する報告書等の経済産業省原子力安全・保安院への提出について(その2)(平成23年7月28日)
■その他(タービン建屋)
また、現在1号機、3号機、4号機は、原子炉建屋が爆発により壊れた状態です。この状態でも将来発生しうる大きな地震に対して原子炉建屋の耐震安全性が確保できるかを確認するため、耐震設計審査指針に基づく基準地震動を用いて、建屋が損傷した状態を模擬して、原子炉建屋がどの程度の影響を受けるかどうかを解析した結果、この場合も評価基準値よりも十分な余裕を有していること、すなわち将来の大きな地震に対しても原子炉建屋の耐震安全性が確保されることを確認しています。
4号機原子炉建屋については、耐震性評価によって評価基準値よりも十分な余裕を有していることを確認していますが、さらなる安全裕度の向上のために、7月末に使用済燃料プール底部に支持構造物を設置しました。その結果、安全余裕(耐震強度)がさらに2割程度向上しました。
福島第一原子力発電所4号機 原子炉建屋使用済燃料プール底部の支持構造物の設置工事完了(平成23年7月30日)
② 津波への備え
複数の専門家や機関によって想定されている、東北地方太平洋沖地震の震源域よりも沖側(東側)において想定されうる最大マグニチュード8級の大きな余震に伴う津波(予測津波高さ:約7~8m)に備え、以下の対策を行いました。
まず、原子炉や使用済燃料プールへの注水に必要な設備の対策として、平成23年6月までに、原子炉へ直接注水を行っている全ての原子炉注水ポンプを高台に移設しました。非常用の仮設電源や消防車等の設備については、同年4月には高台へ移動しました。また、主要建屋設置エリア付近への浸水を防止するため、6月までに海抜約4mの高さにあるトレンチ立坑を閉塞し、海抜10m盤に仮設防潮堤(高さ約2.4~4.2m)を完成させました。
③ 万一の事態への備え
①「地震への備え」、②「津波への備え」に述べたように将来発生する可能性がある地震や津波に対して対策を講じていますが、さらに、複数の機器の故障や外部電源の喪失などに備えて多重・多様にバックアップできる設備にしています。
原子炉への注水が停止する原因として、水源の喪失、注水ラインの損傷、電源の喪失、炉注水ポンプの故障が考えられます。
水源については、現在原子炉注水にあたって処理水を貯水している処理水バッファタンクを使用していますが、その他に予備として、ろ過水タンク(2基:8,000m3)、純水タンク(2基:2,000m3)、3号機復水貯蔵タンク(CST)(1基:2,500m3)が使用可能です。ろ過水タンクは、大熊町にある坂下ダムから補給を受けることが可能で、いずれの水源も確保できない場合は、消防車で海水を汲み上げる準備ができています。
また、注水ラインの損傷に備え、予備の配管を敷設し新たな注水ラインを構築するとともに、発電所内にその他に予備のホース3kmを配備しています。
電源については、外部電源として大熊線2号線・3号線、夜の森線1号線・2号線、東北電力(株)東電原子力線、と5系統の電源から受電可能であり、それら全てが受電不能となった場合でも、仮設ディーゼル発電機により非常用高台炉注水ポンプに電源を供給できるようにしています。
炉注水ポンプの故障に対しては、常用高台炉注水ポンプ、非常用高台炉注水ポンプ、純水タンク脇炉注水ポンプ、タービン建屋内炉注水ポンプ、CST炉注水ポンプ等が設置されている他、消防車も複数台発電所内に配備されています。
これにより、ひとつの設備だけが故障した場合には、速やかに体制を整えた後、30分以内に原子炉への注水を再開できるようにしています。また、万一、予備を含めた全ての設備が使用不能となっても、速やかに体制を整えた後、3時間程度で消防車によって注水が再開できるようにしています。
なお、原子炉への注水機能が喪失した場合、平成23年10月時点において、喪失から18 時間後までに原子炉への注水ができれば、炉心再損傷を防止できるものと評価しています。
使用済燃料プールについては、仮にポンプ等の故障によって長時間冷却できない状態になったとしても、ただちにコンクリートポンプ車で注水を行う準備をすることで、約6時間で注水できるようにしています。
なお、例えば4号機の場合、使用済燃料プールの冷却機能が停止した場合、水位が水遮へいが有効とされる使用済燃料の有効燃料頂部の上部2mに至るまでには、平成23年10月時点において最短でも約16日の時間的余裕があると評価しています。
福島第一原子力発電所1~4号機に対する「中期的安全確保の考え方」に関する経済産業省原子力安全・保安院への報告について(その1)(改訂2)(平成23年12月7日)
(解説)原子炉注水システムに異常が発生した場合の備え
【動画】第一弾「冷温停止の実現と維持に向けた取り組み」第3回 原子炉注水システムに異常が発生した場合の原子炉・燃料の状況について(平成23年10月1日) 13:50
④ 緊急時対応体制について
緊急時に速やかに情報を伝達するために、現場と本社や各自治体へ連絡をとる体制は不可欠ですが、事故当時は連絡手段において様々な課題が浮上しました。
福島第一原子力発電所の構内連絡用として通常時に使用されていたPHSや固定電話などの通信設備は、電源喪失等の影響で使用不能になったため、発電所の対策本部と現場、中央制御室と現場間の情報連絡が困難な状況となりました。中央制御室と発電所対策本部との間も使用できた連絡手段はケーブルで直接延長している固定電話のみでした。
既存のPHSについては平成23年3月中に復旧をしましたが、現在は通信手段の増強に向けた取り組みとして、保安電話、社内LAN、映像伝送などの臨時通信回線を構成するために、衛星通信システム(車載型、可搬型)を配備しています。
また、消防・自衛隊・自治体など関係機関との連絡手段を確保するため、発電所構内に携帯電話基地局を設置しました。
その他、地震発生後に他の事業所から融通した無線機に加え、新たにトランシーバーも約100台配備し、不測の事態に備えています。