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2023年10月12日
東京電力エナジーパートナー株式会社

 当社は、設備機器の省エネルギーや人的リソースの省力化に向け、2020年4月から、AI技術を活用したエネルギーマネジメントシステム※1(以下、「EMS」)の開発を進めておりました。
 今回開発したEMSでは、蓄熱槽や発電設備を含む複雑な電熱併給型システム※2の運転を最適化するためにAI技術を活用しています。これにより、電力および熱需要を短時間(30分周期)で高精度に予測※3することができるため、熱源機等の高効率な運転を計画するだけでなく、デマンドレスポンス(以下、DR)等の要請にも即時に対応できる計画へ更新することが可能となり、システム全体として最適な運転計画を自動作成することに成功しました。
 現在、本EMSの実運用に向けた準備を進めておりますが、2024年度上期中の製品化を予定しており、その後の導入に向けた協議を開始しています。

AI技術を活用したエネルギーマネジメントシステムの開発について

 電熱併給型システムを構成する1つである蓄熱槽は、熱エネルギーを水に蓄えて、その熱を空調として使用するもので、熱源機等の高効率運転や負荷平準化に寄与します。さらに、発電設備を持つことでBCP対策※4への寄与も期待されています。
 また、昨今の再生可能エネルギーの全国的な普及や天候の影響等による急な出力変動により、電力システム全体の需要と供給のバランスが崩れるおそれが高まっていることから、需要家側の電力使用の調整力が求められています。蓄熱槽や蓄電池は、即時的な対応が必要とされるDRに適した調整力のある設備としても注目されています。

 電熱併給型システムの運用は非常に複雑であり、運転員の経験則に基づき運転を決定していることが多く、今後の課題として、運転員の人手不足と負担軽減が挙げられています。
 そこで、東京大学 生産技術研究所の大岡 龍三教授と、御琴ストラテジー株式会社※5(東京都千代田区、代表取締役社長:池田 伸太郎)協力の下、AIを活用したEMSの研究を共同で進めてきました。
 本EMSには、「エネルギー需要予測AI」、「機器モデリングAI」、「運転計画立案AI」の3つのAIが搭載されています。特に「運転計画立案AI」では、予測された電力・熱需要および各種条件(DR要請や契約条件等)にも柔軟に対応したうえで、30時間先の最適な運転計画を立案します。共同研究者である大岡教授および池田氏が、空気調和・衛生工学会学会賞にて論文賞(学術論文部門)※6を受賞した「εDE-RJ法」※7というAI手法を用いることで、無数にある運転パターンの中から、短時間(30分周期)で目的に合わせた運転計画の立案を可能にしています。

<本技術による実績とエネルギー需要予測の比較(夏期)>

◆電力需要

◆電力需要

◆冷熱需要

◆冷熱需要

 実用化に向け、実際に運用中の地域冷暖房施設(以下、「DHC」)にて検証を行いました。運転員による運用実績と本EMSの最適化シミュレーション結果を比較したところ、一次エネルギー消費量は約13%、CO2排出量は約21%の削減に繋がることが確認できました。高精度な負荷予測の結果を用いることにより最適な運転計画を立てられたことが、削減に繋がったと想定しております。また、当結果は、各種契約条件などを考慮しているため、実運用上においても問題がないことを確認しています。

<DHCの運用実績と最適化シミュレーション結果比較による削減効果の検証>

<DHCの運用実績と最適化シミュレーション結果比較による削減効果の検証>

*夏期代表日・30時間運転の比較

 当社は、AI等の先端技術を活用したエネルギーの最適利用に積極的に取り組むことで、お客さまのエネルギー運用における最適なパートナーを目指してまいります。

以 上

  • ※1 

    エネルギーを使用状況に応じて管理するシステム。今回開発したEMSは、電熱併給型システムの運転を最適化するAI機能を付与している。

  • ※2 

    電気と熱を供給するシステム。特に、特定送配電事業と地域冷暖房事業を合わせたシステムを想定している。

  • ※3 

    電力・熱エネルギー需要予測機能の精度検証に、予測精度の相対誤差をみる指標の一つであるEEP(Expected Error Percentage)を用いた場合において、下記の結果を確認。なお、EEPは数値が低いほど良い結果であることを表す。
    ・電力(通期):期間平均EEP4%以下
    ・冷熱 夏期:期間平均EEP15%以下、冬期:期間平均EEP4%以下
    ・温熱 冬期:期間平均EEP7%以下

  • ※4 

    非常事態が発生したときに事業を継続・復旧できるようにする計画や措置のこと。

  • ※5 

    2022年1月設立。主な業務内容は、コンサルティング、ITサービス。

  • ※6 

    空気調和、衛生、環境、エネルギー等に関する工学領域における学術団体として活動している空気調和・衛生工学会において、昭和38年(1963年)以来、学術と技術の進歩を図る目的で、建築設備技術の業績などの中から特に優秀なものに賞を贈って表彰している制度。

  • ※7 

    Epsilon differential evolution with random jumpingの略称。生物の進化過程に着想を得たアルゴリズムの一種である独自のAI手法。ε制約法(エネルギーシステムの運転計画最適化に必須な等式・不等式制約を効率的に処理)とDE法(最適組合せを高速に見つける)、RJ法(大域的な探索を可能)を組み合わせることで、無数にある機器運転計画の組み合わせから短時間で求解可能とする。求解に必要な計算時間を自由に設定でき、その時間内で得られた最も良い解を提示してくれるもの。

別紙

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