尾瀬を知る

尾瀬だより

第15回 「尾瀬の福島県側・檜枝岐村へ」

平成22年11月11日

今年の尾瀬のシーズンもあっという間に過ぎ去り、季節は秋から冬へと移り変わろうとしています。猛暑に見舞われた夏がつい昨日のことのように感じられますが、各地の山では10月に初冠雪を記録するなど、今年の冬は例年に比べて冷え込みが厳しいと言われていますので、皆様もインフルエンザや風邪などひかぬよう充分お気をつけておすごしください。

今回は、冬に向かう尾瀬の片づけ作業、同じ尾瀬国立公園内の田代山・帝釈山での調査、新潟県の当間高原で行った自然観察指導員の養成研修会について、辰井よりお届けします。

【立入禁止柵撤去作業】
シーズン中は数多くの高山植物が咲き、登山者の目を楽しませてくれた至仏山。冷たい風が吹き付ける中、貴重な高山植物を守るために設置していた立ち入り禁止柵を、雪で倒れないように東京電力環境保全スタッフ達が片付けました。

(10月22日 至仏山登山道にて)

【道標の看板撤去作業】
環境保全スタッフの仕事のうち、尾瀬を散策する登山者の安全を守る道標の看板を雪で壊されないように片付ける作業もその一つです。写真は、富士見峠から見晴へ向かう途中にある、昼場と呼ばれる場所の道標です。その昔、この道は山小屋の物資を運ぶ馬方の道でもあり、昭和41年にヘリコプターの物資輸送が始まるまでは、見晴地区や赤田代地区の山小屋まで馬や人の背中で山小屋の荷物を運んでいました。

(10月25日 八木沢昼場にて)

【アナグマ】
イタチ科の仲間でタヌキに似ていますが、顔の模様や尾が太く短いこと、穴を掘るために爪が長く強いなどの違いがあります。雑食性で、昆虫、カエル、ヘビ、ミミズ、小鳥、ネズミなどの他、植物の根、実、キノコなどなんでも食べるようです。尾瀬周辺ではムジナと呼び、ちょこちょこと歩く可愛い姿がたまに目撃されています。

(10月13日 山ノ鼻~牛首間にて)

【トウホクノウサギ】
東電小屋前にてトウホクノウサギと遭遇しました。雪の降る地域では、秋頃から毛が抜けはじめ、冬には耳の先の黒い部分を除き全体が白色になります。春になると、白から徐々に赤褐色から茶褐色の体毛に生えかわり、周りの色に溶け込むように変化をします。基本的には夜行性ですが、昼間でも尾瀬全域で目撃されているようですので、探してみてください。

(10月19日 東電小屋にて)

【なぜ、樹皮が剥がされたのか?】
無残にも樹皮が剥がされた木、痕をよく見ると歯型が残っています。近くにはカモシカとニホンジカの足跡が・・・、歯型をよく観察すると、縦に交差するようについているのが判りました。カモシカの上あごには歯が無いので下側から1方向の痕がつくはず、となると犯人は「ニホンジカだ!」となります。フィールドサインを探して動物たちの行動を想像するのは興味深いので、おすすめです。

(10月19日 西栗沢にて)

【クリタケ】
クリ、ナラ、コナラの切り株や倒木、スギやヒノキの埋もれ木、半枯れの木の根元などに群生するキノコです。傘の径が5cm前後で、赤みがかかったレンガ色をしています。食べ方は、汁のみや炒め物、てんぷら、まぜご飯などに調理すると美味しいキノコです。

(10月19日 西栗沢にて)

【ミズバショウの新芽】
今シーズンも多くのハイカーをとりこにしたミズバショウは、早くも来シーズンに向けての準備が始まっています。三枚の葉の真ん中にまっすぐ伸びる細い芽が新芽です。冬を待たずに、秋なると新芽を出して、そのまま雪の中で一冬を越します。雪解けとともに新芽は成長し、5月の中旬から6月上旬まで、多くのハイカーを楽しませる尾瀬を代表する植物です。

(10月20日 山ノ鼻~牛首間にて)

【ヒカリゴケ】
ヒカリゴケ(光苔)は、ヒカリゴケ科ヒカリゴケ属のコケで、1科1属1種の原始的で、とても貴重なコケ植物です。生育場所は、洞窟(どうくつ)のような暗所にて、自ら光っているのではなく、暗所に入ってくるわずかな光を反射して、葉の組織には葉緑体が多量にあるので、エメラルド色に光ります。

(10月21日 奥鬼怒林道にて)

【オオモミジ】
大清水湿原にて真っ赤に色づいていました。イロハモミジに次いで日本の代表的なカエデの仲間です。イロハモミジよりも葉はひと回り大きく、葉の切れ込みが細かく揃っているのが特徴です。4月から5月に小さな花を、15から30個纏(まと)まって咲かせます。

(10月22日 大清水湿原にて)

【福島県檜枝岐村へ!】
10月26日~27日、同じ尾瀬国立公園内でも、東京電力環境保全スタッフが普段訪れることのない福島県側の尾瀬の入口・檜枝岐村を訪ねました。この日は、なんと前日の夜から急激に寒気が舞い込み、北海道や東北地方の山などで初冠雪を観測し、宿泊した檜枝岐村にも雪が降りました。檜枝岐村へは東北新幹線の那須塩原駅から車で3時間ほどです。

(10月27日 馬坂峠登山口にて)

【木道の階段にも雪】
朝起床すると一面の銀世界にスタッフ達はもちろん、私達もビックリ!!昼から晴れる予報にはなっていましたが、朝は冷え込んでいたので、持ってきたすべての衣服を着込んで出発し、入山口で入念に準備体操をしてから入山しました。群馬県側のことなら何でもわかるスタッフ達ですが、福島県側は専門外。ということで、今回は研修を兼ねて福島県側でガイドをされている方に同行いただき、平成19年8月に尾瀬国立公園が誕生した際に新たに加わった帝釈山と田代山に登りました。

(10月27日 帝釈山登山道にて)

【田代山湿原】
歩き始めてから約3時間。帝釈山を越えて、ようやく田代山の山頂に到着しました。田代山の頂上一体は湿原になっているのですが、その広さは、なんと東京ドーム5個分!山頂部分にこれほど広大な湿原があるところは極めて珍しいそうです。ガイドさんからはトイレや看板の整備状況、クマやシカの被害などについて詳しく教えていただき、よい情報交換ができました。

(10月27日 田代山山頂にて)

【厚い氷が・・・】
下山途中、なんと氷が張っている場所を見つけました。興味深々で氷をつかんでみるとその厚さはなんと1センチほどもありました。歩いている途中は、とにかく指先が冷たかったです。

(10月27日 田代山登山道にて)

【雪の中の落ち葉】
歩いていると、雪の中に埋もれた落ち葉をあちこちで見つけました。赤や黄色というよりも、茶色の葉っぱが多かったです。環境省の自然保護官の方にお話を伺ったところ、今年の紅葉は燃えるような赤や黄色にはならないため、「上品な紅葉です」とご説明しているとのことでした。なるほどなるほど。昼には太陽も出て暖かくなり、歩き始めてから約4時間後に下山しました。田代山・帝釈山については以上です。

(10月27日 田代山登山道にて)

【自然観察指導員養成(初級)研修会】
ここからは10月20日~22日に、新潟県十日町市の当間高原にある東京電力自然学校「あてま 森と水辺の教室ポポラ」において実施した、自然観察指導員の養成研修会についてお伝えします。今回、樹木医の笛木は講師の一人として間伐をはじめとする森林管理を教え、私は生徒の一人として参加しました。特に子供達や初心者の方々を連れて自然観察会を行う際のコミュニケーションの取り方や指導法、自然解説を行うにあたっての注意点・安全管理等について教えて頂き、非常にためになりました。今回は当社社員18名および東京電力自然学校スタッフが参加しました。

(10月20日 東京電力自然学校「あてま 森と水辺の教室ポポラ」にて)

【いざ、フィールドへ!】
座学の講義のあとは、早速すぐ外のフィールドへ!講義で学んだ当間に生息する植物や動物と人間との関わりや生物多様性、自然体験活動についての基礎知識を整理するともに、各分野での実習をしました。特に間伐の実習では、全員ヘルメットをかぶって準備万端!講師役の笛木も熱心な指導で、木の植栽から下草刈り、枝打ち、ツル切り、間伐に至るまで実演を行い、森の役割や森林管理の重要性について学習しました。参加者全員が真剣な眼差しで説明に聞き入り、のこぎりなど慣れない道具を持って力を合わせて作業に取り組んでいました。

(10月20日 東京電力自然学校「あてま 森と水辺の教室ポポラ」にて)

【実践!インタープリター】
研修の中で知った当間の自然学校周辺で観察できる植物や樹木、キノコや生き物などの情報をインプットした上で、ひとりひとりが実際にインタープリター(自然解説員)役になって、実際にメンバーを連れて自然の中を案内し、観察された植物や樹木の説明をしました。

(10月21日 東京電力自然学校「あてま 森と水辺の教室ポポラ」にて)

【まとめ・発表】
研修の最後には、いつでも子供達を連れて自然解説ができるように、班ごとに発表会をしました。まず、どのようなフィールドで、どのような構成で、子供達に何を伝えたいのか、入念にプログラムを立てた上で発表しました。私の班は、まずドングリや落ち葉を拾ってきてもらって、画用紙の上でリスの模型をつくったあと、まとめとしてドングリはリスが運んでいること、植物達は子孫を残すために知恵を働かせ、様々な方法で種を運んでいると締めくくりました。

(10月22日 東京電力自然学校「あてま 森と水辺の教室ポポラ」にて)

次回は11月下旬、現在実施している戸倉山林の森林施業の様子、当社実施イベントのご紹介を中心に、桑原よりお届けします。

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