尾瀬を知る

尾瀬だより

第14回 「駆け足で過ぎ去った秋」

平成22年10月21日

10月の3連休辺りから紅葉のピークを迎え、秋色に染まった尾瀬ヶ原や尾瀬沼では多くのハイカーが訪れていました。ストーブやこたつが欠かせないほど、朝晩が一層冷え、あちこちで山小屋の営業終了、尾瀬ヶ原の川にかかる橋板の取り外し作業など冬支度が始まりました。今年の終わりを告げる足音が少しずつ近づいてきています。尾瀬に行かれる方は事前にご確認をされることをおすすめいたします。「尾瀬に行くならここを要チェック」よりご確認することができます。

さて、今回は、かつて天上の楽園と呼ばれたアヤメ平の植生回復作業、東電小屋の小屋閉めなど冬に向けた準備の模様を辰井が、尾瀬での様々なできごとを桑原がお届けします。どうぞご覧ください。

【紅葉状況】
10月の3連休、辰井にて今年度のアヤメ平湿原の植生回復作業に同行してきました。周囲の山々やアヤメ平の湿原はすっかり秋の色に変わっていましたが、例年に比べると、本格的に紅葉する前に木々の葉が落ち始めているとのことです。

(10月10日 田代原)

【アヤメ平植生回復作業】
これまでは、尾瀬に自生するミタケスゲの種子を播くという方法で、荒廃した湿原の約9割には緑が回復しました。しかし残りの約1割については、植生の回復が遅れている箇所があるため、尾瀬保護専門委員を務める先生方と相談し、昨年から試験的に新しい工法で実施しています。

(10月10日 アヤメ平)

【新しい工法】
新しい工法について、簡単にご紹介します。植生回復が遅れている乾燥した場所、水が溜まっている場所、軽石が堆積している箇所など、それぞれについて試験区を設け、植物の生育を妨げている原因となっている軽石の層を攪拌し、周辺の池塘から採取した泥炭を数cmほど盛りました。

(10月10日 アヤメ平)

【種まき】
泥炭と土を混ぜ合わせたあとは、それぞれの試験区の状況に応じて、キダチミズゴケやウマスギゴケ、ヤチスゲ、ミカヅキグサといった、周辺で採取した植物の種子を播きました。もちろん、これらはすべて尾瀬に自生している植物であり、これらの作業は、環境省と文化庁の許可をいただいた上で慎重に行っています。

(10月10日 アヤメ平)

【植生保護ネット】
最後は、播いた種子が風に飛ばされたり、雨・雪に流されたりせずに根付くよう、植生ネットで覆い、こも止め木とペグで固定しました。また、以前泥炭の流出を防止するために設置していた土留め板は、場所によって水が溜まる原因となっているので、排水しやすくなるよう撤去し、種子の飛散を防ぐために敷いていたわらごもは、この植生ネットに変更しました。このような方法で現在は実施しています。

(10月10日 アヤメ平)

【1年後の経過観察】
昨年度の実施箇所です。周辺と比較して見ていただくと、1年が経って着実に根付いていることがおわかりいただけると思います。かつての美しいアヤメ平の姿に少しでも近づけるには、まだまだ永い年月がかかると言われていますが、少しでも昔の湿原の状態に近づけるよう、これからも経過観察をしながら回復作業を継続していきたいと思います。

(10月10日 アヤメ平)

【山小屋終いの準備】
10月半ばを過ぎると、多くの山小屋は今年の営業を終了し、山小屋の閉設作業を始めます。東電小屋もその一つです。尾瀬は真冬になると、約2~3mの雪が積もるため、山小屋の2階分まで隠れてしまうほどです。そのため、雪の重みで窓が割れないよう、東京電力環境保全スタッフたちが板を取り付けるなど、冬支度の作業を始めます。10月とはいえ、もう尾瀬の冬の足音が近づいてきているのですね。

【ヨッピ吊り橋の橋板取り外し作業】
牛首から東電小屋までの間にあるヨッピ吊り橋。これからの冬本番に備えて、橋の板を1枚ずつ丁寧に取り外していきます。山小屋の営業や尾瀬ヶ原にある川にかかっている橋の取り外し作業をこれから少しずつ進めていく予定だそうです。尾瀬に行く予定のある方は事前に確認されることをおすすめいたします。5月、長かった冬からやっとシーズンを迎えたかと思えば、駆け足のように季節が移り変わっていったような気がします。尾瀬のシーズンは早いものだとつくづく実感させられますね・・・。以上、辰井からのお便りでした。

【自然学校スタッフたちと】
ここからは、残りわずかとなった尾瀬シーズンで出会ったできごとを桑原よりお届けします。ご案内するお客さまが来るのを待ちかまえていた自然学校スタッフの(向かって左から)萩原、吉野、角田です。今シーズン、多くのお客さまに尾瀬で見ることのできる動植物のお話だけではなく、当社が約半世紀取り組んできた「尾瀬をまもる活動」もお伝えしてきました。長年、培ってきた経験ならではのお話をたくさん聞かせてくれ、楽しませてくれます。今年の尾瀬のシーズンも終わり、本当にお疲れ様でした!また、来年~!!

(10月8日 鳩待峠)

【紅葉名所・ヒツジグサ】
私が見つけた「紅葉名所」をご紹介します。夏から元気に咲いていたヒツジグサも秋の衣替えをしていました。たまたま、池塘が暗い色に感じるせいか、それぞれの葉の色合いが哀愁を帯びたような雰囲気を醸し出し、お寝坊さんで可憐なヒツジグサがまさしく少女から大人へと階段を上った瞬間を見たような気分でした。

(10月8日 上田代)

【ここも素敵な紅葉スポット!】
東電小屋から東電尾瀬橋に向かう途中に流れる只見川。川の音がとても近くに感じられ、いつも空気が澄んでいるお気に入りの場所です。鳩待峠から尾瀬ヶ原の方へ向かっていく川は、ヨッピ川などを通って只見川となり、新潟県の方へ流れていきます。樹々が色づき、尾瀬ヶ原一面の草紅葉とはまた違った一面が見られました。以上、紅葉名所情報でした。

(10月8日 東電小屋~東電尾瀬橋間)

【珍しい尾瀬の秋空】
夕焼けから暗闇になる頃、至仏山を見ようと外を出た瞬間、これまでに見たことのない"尾瀬の空"を見ることができました。私にとっては、とても珍しくそのままずっと立ちつくしてしまいました。空をとっても、葉っぱ一つをとっても、毎日違った風景に出会えるところが尾瀬の魅力ですよね!

(10月8日 見晴)

【あの正体は?!】
見晴から竜宮に向かう途中、右側にちらほらと見える山小屋が気になっていました。何だろうと思い、撮った写真をズームアップしてみたら、なんとその正体は、東電小屋でした!!

(10月9日 下田代)

【もう、ストーブの季節に・・・】
竜宮にある龍宮小屋ではストーブが置いてありました。この日は、雨が降っていたこともあり、とても寒い一日でした。龍宮小屋のおいしいコーヒーをいただきながら身体を温めていたものの、寒さはますます募るばかり・・・。龍宮小屋の主人、萩原澄夫さんも「今日はとても寒いね~」と言いながら、ストーブをSwitch!澄夫さんとたくさんお話しながら、ポカポカ温まってきました。

(10月9日 龍宮小屋)

【紅葉のトンネル】
この日は、尾瀬沼ビジターセンターで行われる「尾瀬国立公園ツキノワグマ対策会議」に出席するため、尾瀬山小屋組合長の関根さんと一緒に大清水から尾瀬沼へ向かって行きました。道中に尾瀬ヶ原の紅葉に負けないぐらい、色とりどりの葉をつけ、紅葉のオンパレードのようでした!

(10月12日 三平峠)

【ツキノワグマ対策協議会】
尾瀬沼にあるビジターセンターで、「ツキノワグマ対策協議会」が開催されました。尾瀬では、原生的自然の象徴であるクマを一方的に排除するのではなく、そこに訪れるハイカーとクマが共存できるよう、尾瀬に関わる関係者が集まり、様々な対策について活発な意見交換を行いました。尾瀬ヶ原には、木道の下をクマが通り、木道の上をハイカーが通ることで出会い頭の事故を防ぐ"高架式木道"や人が通ることをあらかじめ知らせる"クマよけの鐘"を設置しています。

(10月12日 尾瀬沼ビジターセンター)

【至仏山から眺めた尾瀬ヶ原】
この日は、至仏山へ登りに行きました。至仏山から見下ろした尾瀬ヶ原はうっすらと雲がかかっていたものの、一面が草紅葉へと移り変わり、尾瀬ヶ原を取り囲む2000m級の山々やアヤメ平も秋のピークを迎えていました。至仏山の頂上から望む360度の展望は絶景でした!

(10月17日 至仏山)

【現在、木道工事実施中です。】
尾瀬国立公園内には約65kmの木道が敷設され、そのうち、東京電力は約20kmの木道を毎年計画的に架け替えしています。尾瀬ヶ原の湿原を守るだけではなく、至仏山の植生も守るために、至仏山登山道の木道も維持管理しています。今年度は、鳩待峠からオヤマ沢田代の間で、木道の架け替え工事を行っております。安全と周辺環境には十分に気を配りながら、行ってまいります。また、道幅も狭いため、ハイカーの方々には大変ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。

(10月17日 鳩待峠~オヤマ沢田代間)

次回は、11月中旬頃、尾瀬にまつわる出来事や11月の尾瀬風景を中心に、辰井よりお届けします。

  • 尾瀬からの招待状 トップへ
  • 尾瀬を知る トップへ

ページトップへ