尾瀬を知る

尾瀬だより

第12回 「秋本番を迎えた尾瀬」

平成22年10月1日

尾瀬周辺の山々や湿原では、いよいよ紅葉や草紅葉の見頃となってきました。紅葉は、春のミズバショウ、夏のニッコウキスゲに続き、尾瀬の3大シーズンの一つです。

これからの季節は、日中と朝晩の温度差が非常に大きくなるため、長袖1枚ほど余分に準備し、フリースなどの防寒着を必ず持参されることをお勧めします。さて、今回の尾瀬だよりは、いよいよ秋本番を迎えた尾瀬の風景や植物に加え、東京電力自然学校尾瀬・戸倉教室および当間「森と水辺の教室 ポポラ」の様子について、辰井よりご紹介します。

【エゾリンドウ】
オヤマリンドウに似ていますが、湿原内に生育します。中部以北、北海道の深山や亜高山の地域に自生することからつけられた名前です。花は茎先や葉の脇に数個付け、葉はやや縦に細長いのが特徴です。尾瀬に咲く花の中では、最終ランナーとして有終の美を飾る植物です。

(9月22日 山ノ鼻~牛首間)

【ゴゼンタチバナの実】
尾瀬の樹林帯に多く生育し、一つの株に5~8個の赤い実をつけています。花の咲く茎は葉が6枚で、咲かない茎は4枚の葉が付きます。葉は、車の車輪状に輪生し、春の6月上旬頃から、白い花を咲かせますが、白い花びらに見えるものは、ミズバショウの花と同じく葉が変化したもので、総苞片(そうほうへん)と言われているそうです。

(9月21日 沼山峠)

【シラタマノキ】
比較的樹林帯に多く生育しますが、湿原内の低木下にも生育する常緑小低木です。球形で白く、1cm程の小さな実がなることからつけられた名前です。実や枝葉は香りを持ち、湿布薬に似たツンとした匂いをします。花は、7月上旬から8月上旬にかけて、黄緑色の小さな花を数個付けます。

(9月21日 白砂峠)

【ミズキ】
鳩待峠から山ノ鼻間や白砂峠などで生育しています。春先に枝を切ると樹液が、したたり落ちるくらいみずみずしい木という意味から付けられた名前です。初夏の頃には、枝いっぱいの白い花を咲かせます。秋には、紫黒色で1cmくらいの小さな実をたくさん付けます。

(9月21日 沼山峠)

【熊棚(くまだな)】
クマがウワミズザクラの木に登り、食べた後です。本来ですと、太い枝に腰を下ろして、周りの枝を手繰り寄せて、木の実を食べ、その枝を自分のお尻の下に敷くので、木の上に円座のようなものができます。これを「熊棚」と言います。尾瀬では、ミズナラの木などに多く見られます。

(9月22日 鳩待峠~山ノ鼻間)

【ヤマドリゼンマイ】
尾瀬の風景になくてはならない、名脇役の植物です。昔は、山小屋の食卓も飾っていました。ヤマドリの尾に似ていることや、芽が出始めの頃、丸く巻いている姿が、貨幣の銭(ぜに)にたとえて付けられた名前です。秋は、葉が茶色く紅葉します。

(9月22日 竜宮~ヨッピ吊橋間)

【至仏山から富士山】
天気の良い日に至仏山に登ると、山頂からは富士山をくっきりと肉眼で見ることができます。この時期は、空気も澄んで天気の良い日には見られます。至仏山以外にも展望の良い所からは、富士山を望むことができました。

(9月11日 至仏山山頂にて撮影)

【池塘に映る逆さ燧】
牛首からヨッピ吊橋へ向かう途中の池塘にて、きれいに映る「逆さ燧」を見ることができました。前日までの雨により空気は澄んで、周りの景色は色とりどりに映し出されました。今まで吹いていた風が止むと、くっきりと池塘に映りました。草紅葉の始まった湿原とマッチして、美しい一枚となりました。

(9月14日 牛首~ヨッピ吊橋間にて撮影)

【ニホントカゲ】
ここからは、東京電力自然学校尾瀬・戸倉教室の最近の展示についてご紹介します。まずは、金色のニホントカゲ。カメラを向けると、すばしっこい動きで逃げていきました。逃げる姿を追いかけていると、どうやら疲れてきたのか、束の間の休息タイムを撮影することに成功しました。

(9月16日 東京電力自然学校尾瀬・戸倉教室)

【動かない!?アズマヒキガエル】
ニホントカゲを撮っていた横をよく見てみると、土の中には、大きなカエルがいました。土と変わらない色をしていたので、一瞬分からず、カエルの目がギロっと動いた瞬間はとても驚いてしまいました。しばらくカメラを向けていたのですが、まったく動く気配がない!!東京電力自然学校スタッフの話によれば、動きが鈍いようですが、観察するにはちょうどいいそうです。

(9月16日 東京電力自然学校尾瀬・戸倉教室)

【何の木でしょう?】
東京電力自然学校 尾瀬・戸倉教室では、尾瀬で見られる動物の他に、樹木や植物のコーナーも展示しています。ここでは、尾瀬にあるブナやミズナラ、トチ、カラマツの木の特徴を実際に体験して学ぶことができます。同じように見える木でも人間と同じように、重さや木の樹皮にもそれぞれ違いがあります。ここでは「木を当てる」ゲームで楽しめるようです。ぜひ、クイズにチャレンジしてみてくださいね。

(9月16日 東京電力自然学校尾瀬・戸倉教室)

【運動神経抜群!ニッコウイワナ】
写真ではうまく撮影できなかったのですが、このニッコウイワナが泳いでいる水槽の上で、自然学校スタッフがえさをつけたピンセットを置くと、なんと、イワナが水面を超えてジャンプし、えさに飛びついてきました。この一芸は、まるで水族館でイルカのショーを見ているようで、何も知らずに水槽に顔を近づけていた私は水しぶきをかけられてしまいました。スタッフにしてやられました。皆さんもぜひ見に来てください。

(9月16日 東京電力自然学校尾瀬・戸倉教室)

【森と水辺の教室 ポポラ 新拠点オープン!】
ここからは東京電力自然学校の最近のニュースをお知らせします。自然学校の取り組みの活動拠点として、尾瀬には“尾瀬・戸倉教室”がありますが、新潟県十日町市の当間高原には、“あてま森と水辺の教室 ポポラ”があります。このほどその活動拠点となる「森のホール・水辺のホール」が竣工し、9月18日(土)と19日(日)の二日間にわたりオープニング記念イベントを行いました。もともと里山だった“当間高原”という広大なフィールドで、たくさんの生き物、植物などを発見しながら学ぶことができます。これから寒さが厳しくなりますが、冬でも自然を体験できるプログラムは充実していますので、ぜひ足を運んでみてください。

(9月18日 森のホール)

【入り口に棚田】
今回のオープニング記念イベントには、計1200名以上の方が訪れ、大変にぎわいました。森のホールでは、主に十日町地域の棚田を表現した生態展示を行い、稲、ブナの幼木、ため池水槽など本物にこだわった生態展示を設置し、“生き物の宝庫”である田んぼに暮らす生き物や命のつながりについて紹介しています。また、水辺のホールでは、この建物を設計した世界的建築家の安藤忠雄氏をお招きして講演会を開催しました。詳細についてはこちらをご覧下さい。

(9月18日 森のホール)

次回の尾瀬だよりは、10月中旬、草紅葉の様子を中心に、桑原よりお伝えいたします。

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