日本初!福島第一原子力発電所で、自動運転EVバスが運行開始

2018/05/25

廃炉作業が進む福島第一原子力発電所では、日本ではじめて実用化された、自動運転EVバスの運行がはじまりました。それに先立って開催されたセレモニーの様子をお伝えするとともに、日本ではじめて自動運転EVバスの操作を担うオペレータ資格を取得した二人の担当社員が、EVバスの未来に託す思いを語ります。

東京電力ホールディングス株式会社 福島第一廃炉推進カンパニー
廃炉コミュニケーションセンター 視察コミュニケーショングループ

中島 仁子

1993年入社。福島第一原子力発電所・燃料グループで、核燃料物質の管理や国際原子力機関(IAEA)の査察対応などを担当。2017年12月より現職。

東京電力ホールディングス株式会社 福島第一廃炉推進カンパニー
廃炉コミュニケーションセンター コミュニケーション企画グループ

吉崎 沙紀

2007年入社。福島第一原子力発電所・第一運転管理部で、3・4号機運転当直の補機操作員として勤務。2013年から放射線防護部で、被ばく低減指導や個人被ばく線量管理などに携ったのち、2017年12月より現職。

自動運転で走るEVバスの愛称は“はまかぜe”

自動運転EVバスの本格的な運用開始とマスコミ公開を2日後に控えた4月16日、福島第一原子力発電所では、関係者によるささやかな“運用開始セレモニー”が開催されました。
セレモニーの冒頭、磯貝智彦発電所長が、EVバス前面のプレートを覆っていたシールをゆっくり剥がすと、そこに表れたのは“はまかぜe”というバスの愛称。

今後は3台の“はまかぜe”が、発電所構内入口の入退域管理施設から登録センターや免震重要棟などへのルートを往復し、まずは作業員の方々の移動用の足として活躍します。
その後の試乗会では、磯貝所長ら関係者を乗せたバスに、社員代表のオペレータとして中島さん、吉崎さんも一緒に乗り込み、廃炉作業が進む構内を走行。今はまだ、珍しそうにバスを眺める作業員の方々が行き交うなか、“はまかぜe”は、自動運転で安全確認をしながらゆっくりと走り抜けました。

「ガレキが散乱し、思うように移動できなかった事故当時を思えば、今、こうして自動運転のEVバスが走るまでに作業環境が改善したことをたいへんうれしく思っています。今後は、“はまかぜe”を作業員の方々の便利な足として利用するだけでなく、視察のためのバスとしても活用してまいります。また、自動運転EVバスの所内での走行データやノウハウを蓄積し、地域のみなさまの暮らしにも役立てることができるよう、新たな技術開発にも挑戦してまいります」と話す磯貝所長。
“はまかぜe”は、福島第一原子力発電所の安全や利便性向上に貢献するだけなく、福島の復興を目指して未来へ向かって走り続けます。

自動運転EVバス“はまかぜe”は、フランスのナビヤ社が設計・開発した自動運転専用のEVバスです。福島第一原子力発電所では、ソフトバンクグループの運行管理システムを使用して管理を行う計画です。
全長は約4.75メートル、高さは約2.11メートル。ハンドルや運転席はなく、立ち席を含め15人が乗車でき、構内を時速約20キロ未満で安全に走行します。
“はまかぜe”という愛称は、100件以上寄せられた、所員や協力企業のみなさんからの公募で選ばれました。

新たな技術の習得と課題への取り組み

中島「昨年度は、約12500人もの方々が福島第一原子力発電所を視察してくださいました。私の現在の業務は、そうしたみなさんが発電所の構内を安全に視察できるようご案内し、廃炉作業が進む現場の情報を正確にわかりやすくご説明することです。今後は“はまかぜe”が、その視察用のバスとしても活躍することになるので、私も吉崎さんとともに訓練を受け、自動運転EVバスのオペレータの資格を取得しました。とはいえ、“はまかぜe”を実際に視察で利用するまでには、まだ多くの課題もあります。ですから今は、その課題を着実に克服しながら、視察ルートや安全性の確保など、万全な準備を進めていきたいですし、日本ではじめて実用化された自動運転のEVバスが、発電所の視察に訪れていただくきっかけになればうれしいと思います」

吉崎「私がEVバスを担当することになったのは、昨年の12月からです。2018年春を目途に導入を検討していたため、それからの4ケ月間は、EVバスの契約関係の調整や、導入後の車両・運営管理について所内関係箇所との細かな調整、さらにオペレータとしての訓練もあり、まさに時間との戦いでした。オペレータの最終試験に合格したのも“運用開始セレモニー”の3日前でしたから、“はまかぜe”に正式なオペレータとして乗り込んだ試乗会ではとても緊張しました。しかし、大きな窓から、一般の作業服を着てバスのすぐ横を歩く作業員の方々の姿が見えたときにはその緊張もほぐれ、作業環境が大きく改善されたことを改めて実感するとともに、作業環境改善に携わっていただいたみなさんへ感謝の気持ちで一杯になりました。将来的には、無人運行も視野に入れているので、私たちが学ぶことや構内の環境整備など、今後も多くの課題があります。私たちは、安全を第一にそれらの課題に取り組んでまいりますので、自動運転EVバスという新しい技術にぜひ期待していただきたいと思います」

福島の復興に貢献し、未来の交通サービスを担うために

中島「私は、福島第一原子力発電所が立地する大熊町の出身です。子供のころから発電所を身近に感じて育ち、小学生のころは、発電所に隣接するサービスホールに毎日遊びに来ていました。そんな私にとって、発電所の事故は辛い経験でしたが、今は、東京電力の社員としてEVバスに関わる業務を担当し、地域のみなさまのために役立つ機会を得たことに心から感謝しています。今後の大きな目標は、EVバスが発電所の外でも活用され、地域の復興計画の一環として、交通サービスを担うようになることです。その第一歩として、“はまかぜe”での視察の経験を重ねながら、データやノウハウを蓄積し、地域のみなさまを乗せたEVバスが、一日も早く町を走ることができるよう、日々の業務に邁進してまいります」

吉崎「私も中島さんと同じ大熊町の出身です。小さいころは、発電所や周辺地域で開催されるイベントが楽しみで、毎年友人と一緒に参加した夏祭りは、子供時代のいい思い出です。事故から7年が経過し、地域の復興は少しずつ進んでいますが、当時のような楽しい話題はまだ少ないので、EVバスの運行開始が、明るいニュースとして地域のみなさまの関心事になってくれればと思います。そして、“はまかぜe”が、廃炉作業に従事する協力企業のみなさんや、福島の復興に携わるすべての方々のお役に立ち、元気の源にもなれるよう、担当者の一人として力を尽くしていきたいと思います」

関連情報

  • 放射線の管理を担う「保安屋さん」として、地域の安心につながる安全な現場をつくりたい

    前例の無い廃炉作業が進められる福島第一原子力発電所では、7年前の事故当時と比べて放射線量が大幅に低減し、現場の作業環境は大きく改善されました。
    そのかげで、目に見えない放射線を適切に管理し、安全な作業環境を支えている社員が、これまでの取り組みと福島への思いを語ります。

  • 私が、お応えします。
    廃炉の「今」と「これから」
    作業エリアの安全性向上

  • EVのある暮らし

    エネルギーや環境の問題に対しても貢献できるEV。
    私たちは、EVの普及に努めることで、社会の期待に応えていきます。

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