新潟で働く私たちの思い
~決して妥協しない。一つひとつの積み重ねを安全につなげていくために。

2016/06/13

柏崎刈羽原子力発電所では、福島第一原子力発電所の事故の反省をふまえて、設備の強化・新設に加え、緊急時における対応力の強化に取り組んでいます。その現場で働く技術者に、仕事に対する思いを聞いてみました。

「もっと安全のためにできることがあるのでは」…業務の全てが原子力安全につながるから、常に自問し続ける

―田中さんが担当している業務を教えてください。

入社して30年になりますが、ずっと電気設備の工事監理や点検といった保全部門にいます。
まず新入社員として、福島第一原子力発電所に配属され、7年後の転勤で生まれ育った柏崎での勤務になりました。
現在は、プラントの保全に関する業務を行いながら、福島第一の事故以降に新しく配備された設備の操作訓練も行っています。私自身は、プラントに電源が供給されなくなった時のために配備した、ガスタービン発電機車の操作訓練を行っています。

―地震後は何をされていましたか?

3月13日には事故対応の応援として福島第一に入り、事故の現場を目の当たりにしました。それまで自分たちの発電所が、まさかこんなふうになるとは考えたこともありませんでした。信じてきたものが目の前で音をたてて崩れ、自分はこれからどこへ向かえばいいのかわからなくなり、道を見失った気がしました。
そんな時、公私ともにつきあいのある同じ保全部の先輩が「山に行こう」と誘ってくれました。「いい空気が吸えるぞ」と言うんです。それまでも一緒に、春や秋に山菜を探しながら山歩きをしたことはありました。その時は正直、あまり乗り気がしなかった。でも、山に登って何も考えずに空を見ていたら、はっと我に返り、自分を取り戻した気がしました。

―事故の前後で、田中さん自身、何か変わりましたか?

入社以来、「原子力はいくつもの壁で守られているから安全だ」と言われてきましたが、大きな事故を起こしてしまったことで、意識が変わったと思います。自分に対する問いかけが生まれたこと。日常業務のなかで「今やっていること、このやり方は本当に安全につながっているのか」と自分自身に問いかけ、行動するようになりました。

振り返ってみれば、福島第一の事故以前は、日常の業務の中で、決められたやり方を疑うことはありませんでした。でも、私の行う業務のすべては原子力安全につながっていることが身にしみて分かった今、「決して妥協してはならない」と一つひとつを振り返り、「もっと安全のためにできることがあるのではないか」と、自問しながら仕事をするようになりました。

私の妻は福島の出身です。生まれ育った家は避難指示区域にあり、妻の母は未だ自分の家に戻ることができません。震災後に亡くなった父の骨も納骨できず、今も仮設住宅で暮らしています。身近に感じたその事実で、改めて「二度と事故を起こしてはならない」と強く思うのです。

「誇りを持て」という先輩の言葉を思い返し、より高い安全性を求めて前進する日々

―今、仕事をしていて何を感じていますか?

私が所属する保全部門というのは、どちらかといえば、プラントを裏で支える仕事です。やはり電力会社は、電気を生み出す仕事、プラントの運転が一番大事で、大変な業務だと思います。でも今は、入社した時に先輩に言われた「現場第一線のこの仕事を、誇りを持ってやれ」という言葉の重みを実感しています。

そして福島第一の事故以降、様々な状況を想定した訓練に取り組むようになり、そんな毎日は、これまでの会社生活で一番充実していると思えます。一見、同じことを繰り返しているように見えても、メンバーのスキルは着実に向上していて、日に日に変わっていくことが感じられます。私自身「もっと、もっと」と、より高い安全性を求めて前進しようとする毎日でとても充実しています。

―復旧班の班長という立場で何を思いますか?

福島第一の事故対応では、一人ひとりが「やらなければいけないこと」「できうる最大のこと」を無我夢中でやっていて、全員で立ち向かう姿が今でもふっと頭に浮かぶことがあります。もちろん、事故は絶対にあってはならないことで、事故を起こさないための備えも多重に講じています。それでも、緊急時に備え、チーム力を上げておかなければなりません。まず、若い人には判断する力、行動する力を高めてもらいたいと思っています。彼らが「田中さん邪魔!」と言って、率先して行動するくらいに。私は班長として、メンバーの一人ひとりが地道に培った力をまとめ、チームの底力を上げ続けていきたいと思うのです。

東京電力ホールディングス株式会社
田中 和夫

柏崎刈羽原子力発電所 第一保全部 電気機器1・4号グループ兼2・3号グループ兼 第二保全部 電気機器グループ所属。
1984年入社。新潟県柏崎市出身。

肩書は取材当時のものです。(2016年1月撮影)

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