トップページ > 福島復興へ向けた取り組み > 東日本大震災後の福島第一・第二原子力発電所の状況 > 東京電力からのお知らせ > 今回の津波は、それまでの知見では想定できない大規模なものでした
新聞、テレビ、インターネットなどで取り上げられている話題について、東京電力から解説いたします。
平成24年4月17日更新
1.概要
今回の津波を発生させた東北地方太平洋沖地震は、マグニチュード9の巨大地震であり、国内観測史上最大、世界観測史上4番目の規模の地震でした。岩手県沖から茨城県沖に至る南北約500km、東西約200kmにおいて、多数の領域が連動して活動したもので、最大の滑り量は50m以上と言われています。このような地震は、東京電力のみならず内閣府の中央防災会議や文部科学省に設置された地震調査研究推進本部においても検討されていなかったものです。
2.これまでの津波評価
(建設時の経緯)
東京電力では、安全最優先の基本方針のもと、福島第一原子力発電所の建設時には有史以来、福島沿岸で経験された最大の波高を与えたチリ津波(小名浜港で約3m)でも安全性を確保できるように設計をしていました。その内容については国に提出した設置許可申請書にも記載され許可を受けております。
(土木学会の基準による見直し)
その後の技術進歩を踏まえて、2002年に土木学会「原子力発電所の津波評価技術」 が作成されました。これは、津波シミュレーション技術を適用し、より保守的な結果を与えるものと考えられ、この基準にしたがって再評価を行なった結果、津波の高さは約6mとなりました。東京電力では、この結果をもとに自主的に対策を講じ、結果について国に報告を行ってきました。なお、この津波評価技術は、大震災に至るまで国内の原子力発電所の標準的な津波評価方法であり、太平洋岸に設置される他の原子力発電所を含め全国の発電所で国に提出する評価にも使われているものです。
東京電力としては、この基準によって原子力発電所の安全は確保されていると考えておりましたが、結果として津波に対する備えが足りずに今回の事故を招いたことについては大変申し訳なく思っております。
3.新たな知見、学説等への対応
東京電力としては土木学会の基準によって原子力発電所の安全は確保されていると考えておりましたが、更に最新の知見や学説等についても適切に評価し、設備の設計や運用にフィードバックするという立場から、地震や津波に関する調査研究の動向についても注視し、それに対応した調査検討を進めていました。
例えば、2002年7月に地震調査研究推進本部による「三陸沖から房総沖の海溝沿いにどこでもマグニチュード8クラスの地震が発生する可能性がある」 という見解が公表されました。この見解については、福島県沖の海溝沿いが過去に大きな地震が発生していない空白域であったことから、土木学会では2003年から研究開発することとしていた確率論的評価手法の中で取り扱うこととしておりました。東京電力では、土木学会の検討成果である確率論的津波ハザード解析手法を用いて2006年に試算を行ったところ、高さ10mを超える津波が発生する頻度は10万年から100万年に1回程度となりました。しかしながら、この試算は開発段階にある手法の適用性の確認と手法の改良を目的に実施したものであり、福島の発電所が実際に津波に襲われる頻度を表したものという認識はありませんでした。
また、2008年には、耐震安全性評価の検討を進める中で、明治三陸沖津波の波源モデルを福島県沖の海溝沿いに持ってきた試算(結果:15.7m)を行っていますが、この波源モデルの妥当性は不明であったことから、過去に地震のなかった地域に波源を想定するかどうかも含め土木学会にその扱いについて検討を依頼しておりました。なお、この福島県沖の海溝沿いでの地震については、中央防災会議の津波評価、あるいは各自治体の防災上の津波評価でもこれまで検討の対象とはされていませんでした。
また、2009年4月に発表された869年の貞観津波に関する論文(佐竹(2008) )についても検討を行いました。論文に示されている波源モデルは、仙台平野および石巻平野での津波堆積物調査結果に基づくものであり、発生位置および規模等は未確定とされていたため、それらを確定させるためには福島県沿岸等の津波堆積物調査が必要とされていました。この論文を受けて、東京電力は津波堆積物調査を行った結果、福島県北部では標高4m程度まで津波堆積物が確認されましたが、福島県南部では津波堆積物が確認されませんでした。この結果は、論文に示された波源を使用して行った試算(結果9.2m)と整合しないことから、貞観津波の波源については、引き続き調査・研究が必要と考えられました。
(今回の地震)
図に示すとおり、今回の地震は岩手県沖から茨城県沖までの500km×200kmという広範な領域を震源としたものでした。これは地震調査研究推進本部のいう福島県沖海溝沿いの地震や貞観地震とはまったく規模が異なり、土木学会「原子力発電所の津波評価技術」で個々に評価することが求められていた波源の複数が同時に動いたことに相当するような巨大なものです。したがって、東北地方太平洋沖地震は、これまでの知見では想定できないような規模のものであり、この地震によって生じた津波の高さ(規模)を想定できるものではなかったと考えています。しかしながら、今回の事故を省みますと、当時の知見では想定できないものであったとはいえ、結果としてこうした巨大な津波への備えが不十分であり、取り返しのつかない事故を引き起こしたことにつきまして、深くお詫びを申し上げます。
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