取材協力
株式会社 湯浅ファーム
〒 969-3539 福島県喜多方市塩川町源太屋敷字前畑1572番地
【掲載年月日:2019年5月31日】
2011年12月、震災後初の12頭の出荷。
出荷が遅れて肥育月数が伸び、牛の体調が一番の気がかりだった。
「徹底的に管理した結果が出ましたね。すべての牛の肉質は最高クラスの5等級をつけてもらえたんです」
湯浅さんは意気揚々と牛肉の競り場に着いた。さあ、いよいよ競りだ!
“1kg1500円!“ …シーン…
どうした? 湯浅さんは耳を疑う。
“1200円!“ …シーン…
“1000円!“ …シーン…。
買ってくれる人が誰もいない。
“お願いします、お願いしますっ“と頼み込む。
それでも買ってくれる人がいない。
“900円・・・800円!“ ピンポンピンポンピンポン!
そこまで下がって、ようやく買い手がつく。
「震災前なら1kg2200円くらいだったのに、たったの800円。売らなければ金にはならないし、ここでやめる訳にもいかない。この時の値段を聞いて、本当にこの先どうなるのか、頭の中が真っ白になりました」
震災後の初出荷。その損失は1000万円ほどにもなったという。
福島県から出荷される牛は全頭検査を行ない、その結果も公表している。放射性物質の検出率はほぼゼロだ。
飼料も稲わらも、履歴を追って管理が適正であることが確認され安全性が証明されている。
それでも、売れない、高値がつかない。
「東京卸売市場の買参人の中には、“いいものを買いたい”と前向きに考えてくれる人はいました。でも、その肉の売り先の販売店からは“福島産“というだけで見向きもされない。”持ってこないで“と返されることもありました。買参人からは”買ってあげたいけれど、売り先がない“と言われて。かつて10人を超えてついていた買参人も、半分以下に減ってしまったんです」
これまでに積み上げてきたふくしま会津牛の良いイメージは、震災によって完全に破壊されてしまった。
東京の消費者も福島県産の肉を手にすることは少なくなっていた。
全農では東京で販売される肉を買い戻し、福島県内で販売することもあった。
苦肉の策だ。
当初、県は全頭検査の徹底に追われ、安全性を広く社会にPRできるようなタイミングはまだ先であった。
自分たちでも何かしなければ。
湯浅さんは仲間の畜産農家と話し合って、東京で店頭販売や、試食会を開催した。
「嬉しいことにお客さんも集まって、行列をつくってくれました。でも並んでいるお子さんに試食の牛肉をあげようとすると、その子のお母さんが、“この子にはいいです”って、食べさせない。“私が食べますからいいです”っておっしゃるんです。傍でお子さんは“食べたい、食べたい”って言っているんですけど、“ダメだから、ダメだから”って。そんなことを目の当たりにして、それはやはりショックでした」
全頭検査を行っている。厳しい食品検査基準値を超える牛肉はない。安全が証明されている。
そうした情報は、実際のところ消費者には全く知られていなかった。
牛肉を試食販売で出していても、“これ検査した肉?”と聞かれることが何度かあった。
「“福島”というだけで、どんなに頑張って良い品質の牛にしても売れない。ようやく売れても高値で取引できませんでした。牛肉も、飼料も、水も、稲わらも、全て安全基準を満たしているのに」
福島県産の牛への風評被害はその後3年以上も続いていく。そんな苦しい中地道な努力を続け、その後栄誉ある賞を受賞するまでに・・・。 (第4話へ続く)
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株式会社 湯浅ファーム
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