活用アイデアの実証結果から見えた、EVが描く一歩先の未来とは
2020/08/06
東京電力グループは、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッドカー等の「電動車両」の普及に向けたさまざまな活動に取り組んでいます。2017年には「EV活用アイデアコンテスト」を実施し、多岐にわたるアイデアを募集しました。今回は選出されたアイデアの実証結果を追うとともに、これからの電動車両に寄せられる期待について、携わる社員に聞きました。
東京電力ホールディングス株式会社
経営技術戦略研究所 研究総括室
オープンイノベーション推進グループ 兼
本社技術戦略ユニット技術統括室
原田 太郎
2016年入社。2019年より現部署にてコスト低減や収益向上に向けたオープンイノベーションの調査・企画等の業務に従事。
全国各地で電動車両推進のためのプロジェクトが進行
電動車両には、使用時にCO2を排出しない環境に優しい移動手段であることや、災害時には非常用の「動く電池」として活用できることなど、多様な利点があります。特に環境面への効果については、自動車などの輸送部門が日本のCO2排出量における2割を占めるとも言われていることからも電動車両が社会に寄与できる部分は大きく、東京電力グループでもEVをより多くの方々・企業に利用していただくための取り組みを進めています。
2017年に実施された「EV活用アイデアコンテスト」もその取り組みの一つです。電動車両活用の新たな技術や事業に関するアイデアを広く一般から募集することを目的に開催したもので、23件寄せられたアイデアの中から、選考により最優秀賞1件と優秀賞4件を決定しました。選ばれた団体には日産自動車株式会社のEV「e-NV200」を3年間無料で貸し出し、各アイデアを実行に移して、その効果について検証していただきました。
EV活用コンテスト選考結果
選考結果 | 提案者 | 提案内容 |
---|---|---|
最優秀賞 | 東京都市大学 | 再生可能エネルギーで充電したEVを他施設へ運び、給電することで、再生可能エネルギーをシェアする |
優秀賞 | 有限会社城山企画 | 鹿児島県屋久島で観光客がEV車中でキャンプ感覚を体験するサービスを提供する |
愛知県東栄町総務課行政係 | 東栄町未来予想図(ドリームタウン)構想にて、太陽光発電でEVに充電し、V2H※による自家消費や災害時の活用を行う | |
郡上市交流・移住推進協議会/特定非営利活動法人 やすらぎの里いとしろ | 岐阜県郡上市において観光客、市民、テレワーク事業者らによるカーシェアリングを実現する | |
有限会社インターネット神戸 | EVのカーシェアリングサービス付加によって既存マンションの価値を向上する |
※V2H(Vehicle To Home):EV から家庭へ給電を可能にする装置
最優秀賞を受賞したのは東京都市大学です(コンテスト後の対談記事はこちら)。3年間の実証により、キャンパス屋上を活用した太陽光発電由来の電力をEVに利用、また他の施設にEV経由で電力を供給することで、CO2を生み出さない、クリーンエネルギーによる施設運営を実現されました。加えて、2019年に台風19号が発生した際、キャンパス内での停電発生時にEVを非常用電源として活用し、EVが災害時にも有効であることを実証されました。
有限会社城山企画は、鹿児島県の屋久島におけるEVの活用について検証されました。屋久島では基本的に水力発電で電力が供給されており、再生可能エネルギー100%が達成されている数少ない地域なので、クリーンなエネルギーを基にEVを運転することができます。
今回のアイデアはEVを一つの“部屋”として捉え、マルチルーム(キッズルームや授乳室、仮眠できる個室等)として活用するものです。停電時にEVの中へ避難し、エアコンが効いた環境でTVを見るような”部屋”としての使い方が十分に出来ることがわかったので、今後は、車両を改良し、無料で利用できるEV用充電スタンドが複数備えられている屋久島において、”電源コンセントを備えたキャンピングカー”としての利用が検証されます。
愛知県東栄町では、病院や小学校などの施設に太陽光パネルやEV充電スタンドを新たに設置し、各拠点をEVがつなぐエココミュニティタウンの実現に向けた取り組みが進められました。実証の結果、山間部から通学する児童の移動や町民の病院施設への送迎など、日常生活の一部としてEVが十分活用できることが確認されました。今後、病院施設で利用するための非常用電源として活用することも検討されています。
「EV活用アイデアコンテスト」から、さらに一歩先の未来へ
プロジェクトごとに多種多様な効果が得られ、さらなる電動車両活用への道が見出された一方で、電動車両の車種が限定されていること、導入コストが大きいこと、ガソリン車に慣れている方はEVを選定するハードルが高いことなど、普及に向けた課題も見えてきました。こうした課題の解決には自動車メーカーの協力も必要になるため、オープンイノベーションという観点で、電動車両開発に関わるメーカーならびに電力会社での電動車両に関する課題の解消に向けた取り組みを進めています。
また、2020年5月には「電動車活用推進コンソーシアム」を立ち上げ、一社だけでは電動車両導入時の課題解決ができない企業・団体等と課題を共有しながら、その解決に向け連携した取り組みも行っています。
これらの課題に加えて、東京電力グループが取り組むべき課題として、充電スポットの充実などが挙げられます。この課題を解消すべく、2019年10月に株式会社e-Mobility Power(イーモビリティパワー)を設立しました。電動車両の普及拡大に不可欠な充電インフラの整備などを通じて、電動車両の開発・普及を推進しています。
本コンテストに携わった方々はEVの有益性を実感し、「EVの魅力を多くの人に発信していく」という次のステップに進んでおり、私もその動きに貢献していきたいと考えています。また、電動車両の普及が進むにつれて、東京電力グループの新たなビジネスにつながる可能性も生まれていきます。EVへの取り組みを通して、私たちが暮らす社会と東京電力グループ、両方の成長に寄与していきたいと思います。
環境問題は、世界が一丸となって取り組まなければならない大きな課題です。その進歩に東京電力グループとして貢献できる部分は大きいと感じています。今後もEVの可能性を広げるべく、まい進していきます。
関連情報
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電動車両が拓く未来
世界全体で気候変動対策を進めることは喫緊の課題であり、脱炭素化社会の実現に向けて運輸部門の電動化が期待されています。
東京電力グループでは、自社の業務車両の電動化だけでなく、他企業とも一体となって電動化に向けた課題解決に取り組んでいます。