尾瀬を知る

尾瀬だより

第8回 「尾瀬に生きる小さな"命"たち」

平成22年8月21日

8月に入ってからは、連日のように夕立(ゆうだち)が続いています。夏休みということもあり、家族連れが多く見られ、幼稚園ぐらいの子どもたちも元気に歩いていました。また、スタッフたちの話によると、「山ガール」と呼ばれるおしゃれな服装を着た若いハイカーたちも増えてきているそうです。最近、ニュースで「猛暑日」と言われるように、尾瀬でも日中は日射しがまだまだ強いのですが、8月も後半に差しかかり、夕方には時折涼しい風が吹き始めました。この時期は、突然の夕立が起こることもありますので、尾瀬に行かれる際は、雨具を用意していくことをおすすめいたします。

さて、今回は尾瀬戸倉山林にまつわるお話、植物などを中心に桑原がお届けします。

【イワショウブ】
花の茎がねばねばしているのが特徴です。茎に近づくと、小さな虫などがくっついているのを見ることができます。これは、アリなどの地面を這う(はう)昆虫類が花粉や蜜を持ち去っていかないように防ぐためだそうです。植物も一生懸命生きていくためには、色々なしくみがあるのですね。

(8月6日 尾瀬沼)

【ヤナギラン】
大江湿原には「ヤナギランの丘」と呼ばれる場所があり、3~4cmの大きさで、紅紫色のきれいな花をつけます。高さは、1.5メートルほど人間の背丈ぐらいの大きさに成長するそうです。葉の形がヤナギに似ていて、蘭(ラン)のような花を咲かせることから付けられた名前だそうです。

(8月6日 大江湿原)

【ノリウツギ】
5cmほどの花を枝先に数個つけます。一見、花がアジサイに似ているようだと思い、調べてみたところ、アジサイ属の花のようでした。樹液を和紙を漉くときの糊として使ったことから名付けられたそうで、別名「糊(のり)の木」とも呼ぶそうです。

(8月1日 竜宮)

【ハナニガナ】
写真で見ると、大きいようにも見えるのですが、2cmほどの小さい花をつけるそうです。ニガナの変種だそうで、ニガナと同じ時期同じ場所で仲良く咲くそうです。ハナニガナとの見分け方は花びらの枚数だそうです。ニガナは5枚つけるのに対し、ハナニガナは8~11枚つけるようです。

(8月1日 白砂峠)

【シラフヒゲナガカミキリ】
幼虫の時はシラビソ、オオシラビソ、トウヒなどの針葉樹を好むため、その樹木の周辺に生息しているそうです。尾瀬では、尾瀬沼周辺で一番多く見られるそうです。スタッフの話によれば、一見、ゴマダラカミキリと間違えられるそう。白斑が細かい上に数も多く、特にオスは写真のように触角がとても長いのが特徴だそうです。なんだか、ひげが長いせいか、王様のような威厳を感じてしまいました。

(8月6日 沼尻)

【ツリガネニンジン】
秋の到来を感じさせる植物の1つと言われています。10月まで咲く花だそうで、まさにマイペースで花を咲かせているような気がします。釣り鐘状の花が咲き、大きな根を朝鮮人参にたとえたことから名付けられたそうです。また、花の形から地方によっては、フウリンソウ(風鈴草)、チョウチンバナ(提灯花)などと呼ばれているそうです。

(8月6日 三平下)

【ジャコウソウ】
森林内の樹の陰や湿ったところを好むそうで、淡い紅紫色、長さ3~4cmの筒状の花を数個ずつ付けています。シソ科の植物で、茎や葉をゆすると香料の麝香(じゃこう)に似た香りがすることから名付けられたそうです。といっても、写真からでは匂いが伝わらないですよね・・・。

(8月8日 牛首~ヨッピ吊り橋間)

【サワギキョウ】
夏から秋にかけての湿原の主役を務める植物です。きれいな花のようだとも思うのですが、実は有毒植物だそうです。花びらは横から見ると、唇(くちびる)のような形をしているそうで、一見変わった花の形をしています。よ~く見ていると、だんだん人の顔に見えてきたのは私だけでしょうか・・・。9月頃まで咲いているそうですので、尾瀬に行く方はぜひ見つけてみてくださいね。

(8月8日 東電小屋周辺)

【コクワガタ】
スタッフが牛首のベンチで休憩をしていたら、湿原内ではめったに見ることのないコクワガタのオスを「見ることができた!」と興奮して、写真に収めてくれました。コクワガタのメスはよく見かけるそうです。見た目が黒く、どれも同じように見えてしまうため、私の中ではまだまだ見分けがつかないのですが、奥が深いものです。尾瀬では、ゆっくり歩いていると、トンボだけではなく、色々な昆虫を見る発見ができますよ!以上、8月の植物・昆虫情報でした。

(8月10日 牛首)

【嵐のあとは・・・】
前日は、ちょうど台風が東北地方に上陸しているときでした。尾瀬ヶ原では大雨や強い風が吹き荒れ、まさに嵐のようでした。台風が過ぎ去った翌日は、すっきりとした空が見渡す限り広がり、とてもいい気持ちでした!空気もおいしくて、思いっきり背伸びをしてしまいました。

(8月13日 尾瀬ヶ原)

【ぷらり館に横断幕登場】
尾瀬のふもと・戸倉には"尾瀬ぷらり館"があり、「東京電力自然学校尾瀬・戸倉教室」が入っています。ちょうど、ぷらり館の入り口に「東京電力自然学校尾瀬・戸倉教室」の目印としての横断幕を設置しているところでした。満足そうに眺めていた環境部の湯浅と横断幕をパチリ!戸倉に行ったときは、この横断幕を頼りに、ぜひ東京電力自然学校尾瀬・戸倉教室に立ち寄ってくださいね。

(8月13日 尾瀬ぷらり館)

【世田谷区教育フォーラムで緊張】
世田谷区教育委員会が主催した「世田谷区教育フォーラム」に参加してきました。エコ活動に日頃から取り組んでいる小中学校の生徒たちの成果発表会の中で、「尾瀬の自然をまもる活動」のお話をさせていただきました。子どもたちの他に、先生や保護者と100名ほどが参加していたそうです。尾瀬の出前授業では、子どもたちを前に説明するのですが、今回は大人が多かったせいか、いつもよりとても緊張しました。お話の中で一番驚いたことは、「尾瀬」という言葉は聞いたことあるけど、「尾瀬」の場所がどこにあるかを知らない人たちが多かったことでした。このホームページを通して、もっと、多くの人たちに「尾瀬」のことを身近に感じてもらえるよう、ご紹介していきたいと思います。

(8月6日 世田谷区役所)

【年に1度の森の健康診断】
ここからは、尾瀬国立公園の南側「尾瀬戸倉山林」のお話になります。平成22年2月に国際的な森林認証「FSC-FM認証」を取得した尾瀬戸倉山林で、8月10日~12日にかけて、審査員による年に1度のチェックを受けました。最初の2日間は、昨年度森の手入れ(間伐など)をした箇所を中心に見ていただき、環境保全スタッフたちへの聞き取り調査が行われました。スタッフと一緒に対応した辰井の話によると、何を聞かれるのかと終始ドキドキしていたそうです。

(8月10日 尾瀬戸倉山林)

【森の"血管・作業道"の秘密】
昭和38年以降、この尾瀬戸倉山林を下流の水力発電所の水源涵養林として、大切に保育し、間伐を中心とした森林の管理を行ってきました。昨年度の間伐作業では、道路から離れた深奥部で伐った材(木)を運び出すことができるようにと、昨年度、環境省の許可を得て、初めて作業道 を敷設しました。これにより間伐材の搬出がスムーズになり、今まで真っ暗さった森に光が差し込み、森全体が明るくなったと審査員の方にも高く評価していただきました。

(8月10日 尾瀬戸倉山林)

【貴重な樹木や動植物を守るために】
審査員の方に見ていただいているこの赤いテープは、事前に行った環境調査において貴重な樹木や動植物が見つかった箇所を示すものです。この作業道を選定するときに、この貴重な生物が発見された箇所は避けて、環境に与える影響を最小限に抑えるよう、念入りに調査をしました。動植物の住み処は大事にしないといけないですよね。

(8月10日 尾瀬戸倉山林)

【最終日は東京で】
最終日は東京へ場所を移し、書類のチェック、審査員の方々からの講評をいただきました。周辺環境や生物多様性保全に配慮した森の手入れをしていたと高い評価をいただくことができました。ホッとしたのも束の間、課題もいただいたので、アドバイスをもとに、今後も適切な管理をしていきたいと思います。

(8月12日 当社)

次回は、9月始めに、下草刈りボランティア、8月後半の尾瀬を中心に辰井よりお届けいたします。

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