尾瀬を知る

尾瀬だより

第7回 「大清水からの尾瀬沼ルート」

平成22年8月11日

夏休みに入り、尾瀬も家族連れのハイカーが多くなってきました。全国的に山岳事故や水の事故が起きており、猛暑の中で熱中症にかかる方も増えています。特に、太陽光を避ける場所の少ない湿原では、こまめな休憩や水分補給、帽子をかぶるなどして、十分な熱中症対策をお願いします。また、事前に無理のない行動計画を立て、ゆとりを持って、尾瀬を楽しんで頂ければと思います。

さて、今回の尾瀬だよりは、7月22日~23日にかけて大清水から尾瀬沼へ上がり、白砂峠を越えて東電尾瀬橋まで行ってきましたので、ルートの魅力や植物をご紹介しながら、辰井よりお届けします。

【大清水セット】
今回のスタート地点である大清水入山口(標高1,180m)で、昼食に頼んだ“名物"「大清水セット」。炊き込みごはんとラーメンの豪華2品に、煮物とお漬け物がついた、スタミナ満点のメニューです。食堂の奥で、大清水休憩所のお母さん達が元気な声でつくってくださっていました。ここで腹ごしらえをして、入念に準備体操をしてから登山開始です!!

(7月22日 大清水休憩所)

【一ノ瀬休憩所】
大清水から歩くこと約1時間。多くの人でにぎわう一ノ瀬休憩所です。私も、遠くからずっと見えていた「氷」の文字に吸い寄せられるようにかき氷売り場へ。売店では、小さな男の子がお母さんを手伝っていました。エライね!!暑い中でいただいた、冷たくておいしいかき氷は至福の味でした。

(7月22日 一ノ瀬休憩所)

【三平峠のオオシラビソ林】
大清水から尾瀬沼に向かうルートは、川沿いに急峻な山道を登っていきます。かき氷を食べた一ノ瀬を出発してから約1時間、標高1,762mの三平峠まで来ると、このようなカラマツ林に囲まれた気持ちのよい道になります。三平峠を越えれば、尾瀬沼が見えてきます。

(7月22日 三平峠)

【尾瀬沼の魅力】
三平峠から15分ほどで、標高1,665mの尾瀬沼に到着しました!山の上にこんな大きな湖があるのかと、初めて訪れた方は歓声を上げていました。尾瀬ヶ原の雰囲気とはまた違って、豊富な水をたたえ、ゆったりとした静かな時が流れる尾瀬沼。尾瀬ヶ原にはもう行ったという方は、次回はぜひこの尾瀬沼を訪れてみてはいかがでしょうか。群馬県側からは大清水から徒歩で約2時間半、福島県側は沼山峠から約1時間で、尾瀬沼に行くことができます。

(7月22日 尾瀬沼)

【満開のニッコウキスゲ】
尾瀬沼のすぐそばにある大江湿原では、ニッコウキスゲが満開となっていました。私が尾瀬に出張する際は、たいてい現地調査や取材対応で、当社社有地である尾瀬ヶ原や至仏山、麓の戸倉山林に行くことが多いため、尾瀬沼や大江湿原を見たのは久しぶりでした。

(7月23日 大江湿原)

【三本唐松】
大江湿原の真ん中に、3本だけポツンと生えているカラマツがあります。晴天に恵まれ、透き通るような青空のもと、尾瀬沼の湖面を横目に見ながら、ゆったりとしたのどかな時間の流れを感じることができました。

(7月23日 大江湿原)

【東電尾瀬橋】
東電小屋から約5分、新潟県と福島県の県境に位置し、一級河川「只見川」にかかる全長28mの東電尾瀬橋です。平成20年6月に完成したこの橋は、実は4代目。これまではすべて木製の橋で、度重なる台風や大雨の都度流されて橋が通行不能となった経験から、今回は自然公園法(環境省)、文化財保護法(文化庁)をはじめ計7法令の許可を得て、初めてコンクリート製の橋脚と鋼製の主桁を立て、耐用年数の長期化を図ることにしました。多くの方にご利用いただいています。

(7月23日 東電尾瀬橋)

【周辺環境への影響を最小限に】
東京電力では、尾瀬国立公園の特別保護地区内にある東電尾瀬橋架替工事の実施にあたり、周辺環境に与える影響を最小限に抑えるため、工事箇所内で観察された稀少植物を別の場所に移植して経過を観察したり、工事箇所の植生回復作業など、工事終了後の環境調査を継続して行ってきました。平成20年6月の完成後、2年間にわたり続けてきたこれまでの経過観察の結果を環境省の自然保護官に現地でお伝えし、周辺植生が順調に回復し、移植した植物も根付いていることを確認していただきました。

(7月23日 東電尾瀬橋)

【木道工事の安全】
前回の尾瀬だよりで掲載できなかった木道工事の写真です。木道工事で現場作業にあたっていただいている工事スタッフの方々と、作業安全についてお話をしました。皆様のおかげでいつも整備された木道の上を安全に歩くことができます。今日も一日、安全作業でお願いします!

(7月7日 富士見峠~竜宮間)

【ミヤマワレモコウ】
草地に生える多年草で、日当たりの良い場所を好みます。7月中旬から9月にかけて咲き、枝先に赤褐色のかわいらしい花をつけます。

(7月22日 大江湿原)

【尾瀬沼のギンブナ】
大江川に架かる橋の下には、ギンブナが多く見られます。また、尾瀬沼に生息している魚は、サケ科のイワナやヤマメ、ニジマス。コイ科のアブラハヤ、コイ、ワカサギなどが生息しているそうです。

(7月22日 大江湿原)

【ヒツジグサ】
尾瀬の池塘で見られる代表的な花で、7月から9月上旬にかけて、ハスに似た白い花を咲かせます。花が開く時間が、未(ひつじ)の刻、今でいう午後2時頃ということから、その名前がつけられました。

(7月23日 ヨッピ吊橋~牛首間)

【キンコウカ】
背丈は小さく、10~20cmくらいの高さです。小さく色鮮やかな黄色い花をつけます。秋には、赤く紅葉し、湿原にいろどりを添える植物です。特にアヤメ平に多く生育しており、キンコウカの葉をアヤメと間違えたことから「アヤメ平」という名前がついたという説もあります。

(7月31日 山ノ鼻~牛首間)

【アキアカネ】
尾瀬の湿原にて多くみられるトンボ、アキアカネです。梅雨の時期に平地で羽化(うか)し、暑い夏は高地で過ごし、秋にはまた平地へと帰ります。秋になるにつれ、身体は赤く成熟します。

(7月31日 山ノ鼻)

【オゼヌマアザミ】
尾瀬固有の植物で、タチアザミの変種とされる植物です。枝先に数個の紅紫色の花をつけます。葉には刺(とげ)があり、触ると痛いので要注意です。尾瀬にはこの他に、ノアザミも生育しています。

(7月31日 鳩待峠~山ノ鼻間)

【ドクゼリ】
花は白く、一つの花は10個ほどの小さな花がボール状に20個ほど集まって咲いています。名前の通り有毒で、葉や根を食べると死ぬことがあるほどの猛毒の成分を含んでいます。

(7月31日 鳩待峠~山ノ鼻間)

【ソバナ】
漢字では「蕎麦菜」もしくは「岨菜」と書く、紫色の花です。蕎麦菜は、蕎麦の葉に似ていることから、岨菜の「岨」は、山の険しい崖や斜面のことで、そのような厳しい自然環境下でも生育することからつけられた名前です。

(7月31日 鳩待峠~山ノ鼻間)

【尾瀬だよりの舞台裏】
こっそり、尾瀬だよりの舞台裏の撮影に成功しました。尾瀬の貴重な植物や動物の知識が豊富で、尾瀬が大好きな東京電力自然学校スタッフの神崎です。お客様と同行した自然解説の途中でも、珍しい動植物を見つけるとパチリ。どのくらいズームにしようか、どの角度がいいか、試行錯誤しながら、尾瀬から最新の尾瀬の魅力を届けてくれています。

(7月23日 尾瀬ヶ原)

次回は8月下旬、最近の講演会などのイベントのご紹介、尾瀬戸倉山林のFSC森林認証の審査の様子を中心に、桑原よりお届けします。

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