定期検査中の福島第一原子力発電所3号機における制御棒の過挿入に関する原因と対策について
平成21年5月15日 東京電力株式会社 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− <概要> (事象の発生状況) 福島第一原子力発電所3号機において、3月26日に制御棒が過挿入する事象 が発生し、その原因と対策を4月3日にお知らせしておりましたが、4月6日 に同じ制御棒が過挿入する事象が発生いたしました。 (調査結果・推定原因) ・3月26日に発生した制御棒過挿入事象の原因となり再度組み立てを行った当該 制御棒を動かす系統の弁(当該弁)のテフロン製弁シートに損傷があり、弁シ ート部からの漏えいが認められました。 ・当該弁の組み立てに仕様の違う新型と旧型のボルト等を使用していたことから テフロン製弁シートをはさみ込む力が部分的に異なり、テフロン製弁シートの 穴が楕円形に変形し、弁シート部の密着不良が発生いたしました。 ・このため、弁の開閉試験および復旧操作等によりテフロン製弁シートが損傷し、 漏えいしたものと推定いたしました。 (対策) ・弁を組み立てるためのボルト等が2種類混在していた弁については、同一仕様 の新型のものに取り替えました。 詳細は以下のとおりです。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1.事象の発生状況 定期検査で停止中の福島第一原子力発電所3号機(沸騰水型、定格出力78万4 千キロワット)において、平成21年3月26日に制御棒(46-19)が全挿入位置か らさらに挿入側に動作(過挿入)する事象が発生し、その原因と対策を4月3日 にお知らせ*1しております。 その後、4月6日午後3時14分頃、当該制御棒の制御棒駆動水圧系水圧制御装 置*2の駆動水の元弁を開いたところ、水の流れるような音がしたため、ただち に当該弁を閉めましたが、同時刻頃、中央制御室で「制御棒ドリフト」の警報*3 が発生いたしました。 当該警報発生に伴い、中央制御室の制御盤で制御棒の位置を確認した際には、 当該制御棒の位置表示の変化を確認することはできませんでしたが、現場操作の 内容および警報発生のタイミング等から、全挿入されている当該制御棒が過挿入 したものと判断いたしました。 なお、制御棒は全挿入位置にあり、また、制御棒が動作しないよう、当該制御 棒駆動水圧系水圧制御装置の駆動水の元弁を閉めております。 (平成21年4月6日お知らせ済み・公表区分I) 2.調査結果 調査の結果、以下のことがわかりました。 ・制御棒が動作した制御棒駆動水圧系水圧制御装置の当該制御棒を動かす系統 の弁*4(126弁)(以下、「当該弁(126弁)」)の組み立て後の漏えい試 験では、弁シート部*5からの漏えいは確認されなかったこと。また、漏え い試験後に動作確認試験のため開閉操作を行っていたこと。 ・当該弁(126弁)を分解調査したところ、テフロン製弁シートが欠損してい たこと。なお、欠損した部分については後日回収した。 ・当該弁(126弁)の組み立て記録等を確認したところ、前回(4月3日お知 らせ済み)の過挿入事象の対策が反映された工事施行要領書通りに組み立て られていたものの、当該弁(126弁)の各部の寸法測定の結果、弁シート部 に密着不足が発生した可能性があったこと。 ・制御棒を動かす系統の弁の組み立て時にボルトを締め付けることによりテフ ロン製弁シートが内側にせり出すこと。 ・弁シート部は4本のボルト、ナット、座金で組み立てられているが、ボルト 等については、第14回定期検査(平成6年9月〜平成7年2月)時の交換以 降、新型と旧型が混在して使用していたこと。前回の過挿入事象の調査にお いて、新型と旧型のボルト等が混在していたことに気づかなかったこと。 ・弁シート部を組み立てるための座金は新型と旧型で形状が異なること。 ・当該弁(126弁)以外の制御棒駆動水圧系水圧制御装置の同じ構造の弁にお いても、同様に新型と旧型のボルト等が混在して使用されていた弁が2箇所 確認されたこと。 3.推定原因 調査および模擬試験の結果から、以下の原因を推定いたしました。 ・制御棒駆動水圧系水圧制御装置の点検後の復旧作業時に駆動水元弁(101弁) を開けた際、当該弁(126弁)の弁シート部からの漏えいが発生したため、 制御棒(46-19)の挿入方向に水圧がかかり、過挿入位置に動作した。 ・当該弁(126弁)の弁体下部の取り付けに新型と旧型の2種類のボルト等を 混在して使用していたため、同じ強さでボルトを締め付けているものの、新 旧のボルト等によってテフロン製弁シートをはさみ込む力が部分的に異なる ことから、テフロン製弁シートの内側へのせり出し量が不均一になり、テフ ロン製弁シートの穴が楕円形に変形した。 ・当該弁(126弁)の弁棒の長さ調整を行う際に、弁体とテフロン製弁シート の穴が楕円形に変形し、内径の狭くなった部分が干渉して、長さ調整時の弁 体の着座位置が通常よりも高い位置にずれてしまったため、手順通りに調整 作業を行ったものの弁棒の長さが不足し、弁体と弁座の密着性が低下した。 ・当該弁(126弁)の開閉試験時等に、テフロン製弁シートにひびが発生し、 その後の動作試験、制御棒駆動水圧系水圧制御装置の水張り時もしくは復旧 作業時に水圧がかかったことにより、テフロン製弁シートのひびが進展して 欠損に至り、弁シート部に隙間が生じて漏えいが発生した。 4.対策 仕様の違う新型と旧型のボルト等が混在していた弁については、同一仕様の新 型のものに交換いたしました。 また、弁棒の長さ調整作業を見直し、テフロン製弁シートの不均一な変形の影 響を受けないように弁体の押し下げ量に裕度を持たせた状態で駆動部側と弁体側 との接続を行う方法に変更し、制御棒駆動水圧系水圧制御装置の工事施行要領書 に反映いたしました。 なお、この方法により当該弁、仕様の違う新型と旧型のボルト等が混在してい た弁および調査のために分解した弁の合計8台について再度、組み立てを行いま した。 以 上 *1 4月3日にお知らせした原因と対策 (推定原因) ・3月26日に発生した制御棒の過挿入事象の原因は、駆動水の元弁を開けた 際、当該制御棒を動かす系統の弁のシート部に密着不良による漏えいが発 生したため、当該制御棒の挿入方向に水圧がかかったものと推定いたしま した。 ・密着不良が発生した原因は、組み立ての際、弁棒の長さ調整が不十分で弁 棒長さに不足があったためと推定いたしました。 (対策) ・組み立て作業において弁シート部の密着性を確実に確保できるよう、弁棒 の長さ調整に係る作業手順の見直しを行いました。 *2 制御棒駆動水圧系水圧制御装置 制御棒を炉心内に緊急に挿入したり引き抜きしたりするため、制御棒駆動 機構に駆動水等を送る装置。 *3 「制御棒ドリフト」の警報 制御棒が所定の位置にない状態となったことを示す警報。 *4 制御棒を動かす系統の弁 緊急で制御棒を挿入する際に使用する駆動水を供給するための弁。 *5 弁シート部 弁の閉時に流体を止めるために密着する部位で、制御棒を動かす系統の弁 では弁体と弁座およびテフロン製弁シートとが組み合わされる。 添付資料 ・制御棒駆動水圧系および制御棒を動かす系統の弁の概略図(PDF 152KB) ・制御棒を動かす系統の弁(126弁)が漏えいに至った推定原因(PDF 198KB)
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