プレスリリース 2009年

定期検査中の福島第一原子力発電所3号機における制御棒の過挿入に関する原因と対策について

                            平成21年4月3日
                            東京電力株式会社

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<概要>
(事象の発生状況)
 ・平成21年3月26日、定期検査中の福島第一原子力発電所3号機において、制
  御棒駆動水圧系水圧制御装置点検後の復旧作業にて駆動水の元弁を開いたと
  ころ、制御棒137本のうち1本が所定の位置にない状態となったことを示す
  警報が発生し、全挿入されている制御棒のうち当該制御棒1本がさらに挿入
  側に動作(過挿入)したと判断いたしました。
              (平成21年3月26日お知らせ済み・公表区分I)
(調査結果)
 ・当該制御棒を動かす系統の弁(当該弁)の弁体とテフロン製弁シートに密着
  不良が認められました。
 ・当該弁は、今回分解点検を行っておりますが、組み立て時に弁棒の長さの調
  整が、不十分となり得る手順があることが確認されました。
(推定原因)
 ・当該制御棒が過挿入した原因は、駆動水の元弁を開けた際、当該弁の弁シー
  ト部に密着不良による漏えいが発生したため、当該制御棒の挿入方向に水圧
  がかかったものと推定いたしました。
 ・密着不良が発生した原因は、組み立ての際、弁棒の長さ調整が不十分であっ
  たためと推定いたしました。
(対策)
 ・今後、同型弁の組み立て作業において、弁シート部の密着性を確実に確保で
  きるよう、弁棒の長さ調整に係る作業手順の見直しを行います。
 ・当該弁を含め、今回の定期検査で分解点検を行った同型弁16個について、再
  度改善した作業手順で組み立てを行います。
詳細は以下のとおりです。
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1.事象の発生状況
  定期検査で停止中の福島第一原子力発電所3号機(沸騰水型、定格出力78万
 4千キロワット)において、制御棒駆動水圧系水圧制御装置*1の点検後の復
 旧作業として駆動水の元弁を開いたところ、平成21年3月26日午後2時23分頃、
 制御棒(46−19)の「制御棒ドリフト」の警報*2が発生し、全挿入されてい
 る制御棒のうち当該制御棒1本が全挿入位置からさらに挿入側に動作(過挿入)
 したと判断いたしました。
  その後、操作した駆動水の元弁を閉じたところ、午後2時30分頃、当該制御
 棒が元の全挿入の位置に戻ったことを確認いたしました。
              (平成21年3月26日お知らせ済み・公表区分I)

2.調査結果
  調査の結果、以下のことがわかりました。
  ・制御棒(46-19)が動作した制御棒駆動水圧系水圧制御装置のスクラム入
   口弁*3(以下、「当該弁(126弁)」)に対して、漏えい試験を行った
   結果、弁シート部*4からの漏えいが確認されたこと。
  ・当該弁(126弁)の調査を行ったところ、テフロン製弁シート全周に水の
   流れた跡が確認され、弁体とテフロン製弁シートの密着不良が認められた
   こと。
  ・当該弁(126弁)は、今回の定期検査で分解点検を実施していること。
  ・分解点検後の組み立て時に、弁体をテフロン製弁シートに密着させた状態
   で組み込み、弁棒の長さを伸ばす方向に調整することでさらに密着性を増
   しているが、作業手順上、調整が不十分となり得る手順が確認されたこと。
  ・分解点検したスクラム入口弁(126弁)の組み立て後の漏えい試験では、
   弁シート部からの漏えいは確認されなかったこと。また、漏えい試験後に
   動作確認試験のため開閉操作を行っていたこと。
  ・模擬試験により、弁棒の長さが不足し、弁体とテフロン製弁シートとの接
   触が少ない場合には、密着の状態が変化しやすいことが確認されたこと。

3.推定原因
  調査の結果から、以下の原因を推定いたしました。
  ・制御棒(46−19)が過挿入した原因は、制御棒駆動水圧系水圧制御装置の
   点検後の復旧作業時に駆動水元弁(101弁)を開けた際、当該弁(126弁)
   の弁シート部に密着不良が発生していたため、制御棒(46-19)の挿入方
   向に水圧がかかり、過挿入位置に動作した。
  ・当該弁(126弁)の弁シート部に密着不良が発生した原因は、今回の定期
   検査で行った当該弁(126弁)の分解点検後の組み立ての際、弁棒の長さ
   調整が不十分であったこと。
   また、組み立て後の漏えい試験では、弁シート部からの漏えいは確認され
   なかったものの、その後の動作確認試験で当該弁(126弁)を開閉操作し
   たことで、弁体とテフロン製弁シートの密着状態が変化し、密着不良が生
   じたため、当該制御棒の挿入方向に水圧がかかった。

4.対策
  このたびの調査結果を踏まえ、今後、制御棒駆動水圧系水圧制御装置の同型
 弁(スクラム入口弁126弁、スクラム出口弁127弁)の組み立て作業において、
 弁シート部の密着性を確実に確保するため、弁棒の長さ調整の作業時に、基準
 点となる印を付け、これを確認する作業手順に見直し、制御棒駆動水圧系水圧
 制御装置の工事施行要領書に反映いたします。
  また、念のため当該弁(126弁)を含めて今回の定期検査で分解点検を行っ
 た8台の制御棒駆動水圧系水圧制御装置の同型弁(126弁、127弁)16個につい
 ては、改善した工事施行要領書を用いて、再度組み立てを行った上で、漏えい
 試験を実施し、漏えいのないことを確認いたします。

                                 以 上

*1 制御棒駆動水圧系水圧制御装置
   制御棒を炉心内に挿入したり引き抜きしたりするため、制御棒駆動機構に
  駆動水等を送る装置。
*2 「制御棒ドリフト」の警報
   制御棒が所定の位置にない状態となったことを示す警報。
*3 スクラム入口弁
   緊急で制御棒を挿入する際に使用する駆動水を供給するための弁。
*4 弁シート部
   弁の閉時に流体を止めるために密着する部位で、スクラム入口弁では弁体
  と弁座及びテフロン製弁シートとが組み合わされる。

添付資料
・制御棒駆動水圧系およびスクラム入口弁の概略図(PDF 28.1KB)

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