平成19年10月11日
東京電力株式会社
当社・柏崎刈羽原子力発電所は、平成19年7月16日に発生した新潟県中越沖地
震以降、現場調査を実施しておりますが、本日、以下の件名について「実用発電
用原子炉の設置、運転等に関する規則第19条の17」にもとづき、経済産業大臣に
報告いたしましたのでお知らせいたします。
本日報告した各事案の原因と現時点における暫定対策は以下のとおりです。
1.6号機原子炉建屋内非管理区域への放射性物質を含む水の漏えい
【事象の概要】
平成19年7月16日、原子炉建屋4階オペレーティングフロア(管理区域)に
て、地震によるスロッシング(地震動による水面の揺動)によって放射性物質
を含む水が使用済燃料プールから溢れ、燃料交換機給電ボックスの電線管を通
じて原子炉建屋中3階(非管理区域)および3階(非管理区域)を経て地下1
階(非管理区域)の非放射性排水収集タンクに入り、放水口を経由して海へ放
出されていることを確認いたしました。放出された水の量は約1.2m3、放射能
量は約9×104ベクレルと推定いたしました。
【原因】
調査の結果、放射性物質を含む水が非管理区域に漏えいした原因は以下のと
おりと推定いたしました。
・本来密閉性が保たれているべきである当該給電ボックス内電線貫通部のシ
ール部(密封部)に、設計上の考慮不足あるいは施工不良により生じたと
考えられる隙間ができていたため、当該給電ボックスへ流入した水がその
隙間を通り電線管の中へ流入。
・流入した水が埋設した電線管を通じて非管理区域である原子炉建屋中3階
の上部空調ダクト付近から滴下するとともに、中3階床面の開口部を通じ
て3階床面にも滴下。
この結果、3階床面に滴下した水が、排水口を通じて地下1階に設置されてい
る非放射性の排水収集タンクに流入し、排水ポンプにより最終的に放水口を経由
して海に放出したものと推定いたしました。
【暫定対策】
応急的な対策として、原子炉建屋4階オペレーティングフロアの燃料交換機
給電ボックス内電線貫通部にシール材を補充し、シール性の向上を図りました。
漏えい水については、全て拭き取るとともに、原子炉建屋地下1階の非放射性
排水収集タンク内に溜まった水は仮設ポンプを用いて、管理区域内のタービン
建屋高電導度廃液系の収集タンクへ移送した後、液体廃棄物処理系で処理いた
しました。また、原子炉建屋地下1階の非放射性排水収集タンクから放水口を
経由して放射能を含む水が海へ放出された件は、更なる発電所外の環境への放
出を防止するために、当該タンクの排水ポンプが自動起動せず、手動起動する
ように安全処置を施しました。今後、漏えい経路の除染作業を計画的に実施し
てまいります。
恒久的な対策として、水が浸入しないような構造に変更するため、当該貫通
部について設計上、構造上の改善検討を行います。また、各プラントの管理区
域と非管理区域の貫通部についても調査を行い、必要に応じてシール性を向上
させることといたします。(別紙1)
2.1〜7号機原子炉建屋オペレーティングフロアにおける溢水
【事象の概要】
平成19年7月16日に発生した新潟県中越沖地震を受け、同日午前11時頃より
実施した地震後の現場パトロールにおいて、1〜7号機の原子炉建屋オペレー
ティングフロア(管理区域)の全域にわたり、使用済燃料プールの水が溢水し
ていることを確認いたしました。その後、溢れた水を分析した結果、各号機と
も放射性物質が含まれていることを確認いたしました。
・1号機(約4.1×100ベクレル/cm3)
・2号機(約6.7×101ベクレル/cm3)
・3号機(約7.8×101ベクレル/cm3)
・4号機(約2.6×101ベクレル/cm3)
・5号機(約1.9×101ベクレル/cm3)
・6号機(約1.4×101ベクレル/cm3)
・7号機(約2.7×101ベクレル/cm3)
【原因】
調査の結果、1〜7号機原子炉建屋オペレーティングフロアにおける溢水の
原因は、地震によるスロッシングにより使用済燃料プール水が溢れたものであ
ると推定いたしました。
【暫定対策】
溢れた水については7月27日までに、1〜7号機すべてについて一通り拭き
取りおよび除染を完了いたしました。
今後の調査および地震対策検討結果を踏まえ、必要に応じ別途対策を講じる
ことといたします。(別紙2)
3.6号機原子炉建屋天井クレーン走行伝動用継手部の破損
【事象の概要】
平成19年7月16日に発生した新潟県中越沖地震後、7月24日に実施した各種
機器の地震後の設備点検において、原子炉建屋天井クレーンを駆動させる軸の
継手の車輪側クロスピン(4本)のうち、南側走行装置および北側走行装置の
両側(1本づつ計2本)が破損していることを確認いたしました。また、その
後の調査・点検作業において、8月3日、南側走行装置の走行伝動用継手部の
電動機側クロスピン(1本)にも破損を確認いたしました(結果、4本中合計
3本に破損)。
破損した3箇所の継手を取り外し、破面観察を行った結果、いずれの破面に
おいても金属疲労の様相は確認されませんでした。また、腐食の痕跡を示すサ
ビ等の付着も確認されませんでした。
【原因】
調査の結果、原子炉建屋天井クレーン走行伝動用継手部が破損した原因は以
下のとおりと推定いたしました。
・地震発生時、原子炉建屋天井クレーンは停止している状態であり、走行車
輪はブレーキが掛かっている状態。
・地震動により、原子炉建屋天井クレーンの走行車輪にブレーキが掛かった
状態で、強制的にクレーンの走行方向の力が発生。
・クレーンの走行方向の力により走行車輪に回転しようとする力が作用した
が、車輪にブレーキがかかっていたため、走行車輪と電動機の間に位置す
る走行伝動用継手部に過大な回転力が発生し破損。
【暫定対策】
破損したクロスピンを含む走行伝動用継手部一式について新品(同型)に交
換いたしました。
なお、地震荷重に係わる詳細な評価については、今後、適宜実施する予定で
す。(別紙3)
以 上
添付資料
・別紙1:非管理区域への放射性物質を含む水の漏えい状況(PDF 55.0KB)
・別紙2:柏崎刈羽原子力発電所1~7号機原子炉建屋
オペレーティングフロア(PDF 119KB)
・別紙3:原子炉建屋天井クレーン破損箇所・天井クレーンを駆動させる継手の
クロスピン破損状況(PDF 98.9KB)
・参考1:柏崎刈羽原子力発電所6号機原子炉建屋内非管理区域への放射性物質
を含む水の漏えいについて(PDF 300KB)
・参考2:柏崎刈羽原子力発電所1~7号機原子炉建屋オペレーティングフロア
における溢水について(PDF 637KB)
・参考3:柏崎刈羽原子力発電所6号機原子炉建屋天井クレーン走行伝動用継手部
の破損について(PDF 2.82MB) |