日本の水産業の未来のために、私たちができること。
「BonQuish」に込めた思い
2021/12/24
東京電力ホールディングスは、2022年1月より朝食向けおさかな総菜お届けサービス「BonQuish(ボンキッシュ)」*をスタートします。電力事業とは一線を画す、国産水産物にこだわった魚食ビジネスという新しい試み。その背景と立ち上げまでの歩み、今後への意気込みについて、プロジェクトチームのメンバーに取材しました。
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定期購入方式で「朝食と魚」に特化したコンセプト商品(8品/月のおさかな総菜(冷凍))を宅配するサービス。詳細は末尾「関連情報」 を参照ください。
東京電力ホールディングス株式会社
原子力・立地本部 立地地域部
魚食ビジネス担当 部長
春山 絵里
1998年入社。事業開発部での新事業検討、関係会社支援、株式会社JERA出向などを経て、2020年10月より現職。
好きな魚料理は、あえて1つ挙げるなら母親の作るイカの塩辛。
そもそもなぜ魚食ビジネスなのか
電力会社が魚食ビジネスに取り組むことについて、不思議に思われる方もいると思います。当社は既存の枠にとらわれない様々な新規事業に注力していますが、それにしても本件はエネルギー事業との関連が見えにくい。しかし、実は私たちが事業を営むための前提とも言える部分で、水産業と電力事業は深く結びついているのです。
発電所は多くの場合、たくさんの水を必要とします。水力として直接発電に使用する場合だけでなく、火力や原子力においても冷却水は必須。発電所の多くが海沿いに立地しているのはそのためです。それぞれの土地にはそこで水産業を営んでいる方々がいて、私たちは後からそこにお邪魔する立場。ご理解とご協力があって初めて、事業をスタートすることができるのです。重要なステークホルダーである水産業関係者の皆さまに、私たちがもっと貢献できることはないだろうか──そんな発想をきっかけに、電気と同じく暮らしに近い、食卓における「魚食」に着目したプロジェクトが発足しました。
私は2020年10月にプロジェクトマネージャーを拝命し、市場調査やヒアリングを重ねながらサービスのあり方を検討してきました。家庭でどのように魚が食べられているかを調べていくうちに、調理のハードルが高いこと、ボリューム感を出しにくいことなどから食卓に上りづらくなりつつあることが見えてきました。統計を見ても、かつては肉類と比べて優勢だった国内の魚介類消費量(供給純食料)が少しずつ低下し、2010年度には逆転されています。
一方で、魚食そのものの魅力が色あせたわけではありません。日本人の約6割は魚を食べる量や頻度を増やしたいという潜在ニーズがあると言われていますし(令和3年版水産白書より)、ヒアリングでも「できればもっと魚を食べたい」という声は多く聞かれました。ならばもっと気軽に、おいしく魚料理を楽しめる生活を提供できれば、この状況に一石を投じられるのではないか。そう考えてたどりついたのが、「サブスクリプション型で調理済みのお魚総菜をお届けする」サービスでした。日本の魚食振興の一助となるための取り組みですから、素材は当然、国産水産物にこだわります。「朝食」というコンセプトも加わり、ヘルシーで上質なお魚料理から1日をスタートしていただくことができます。
心強いパートナーを得て
メンバーで議論を繰り返しながら上記のようなサービス内容を固めていったのが2020年末ごろ。同時に、私たちが描いたプランを一緒に実現してくださる協業パートナー選定も進めていきました。重視したのは、企画の趣旨に共感いただけて、本当においしい魚料理を提供できる企業であること。サブスクリプション型の宅配食サービスで実績のある企業にお声がけしていく中で、これらの条件に最もフィットしたのが株式会社ファミリーネットワークシステムズ(以下FNS)様でした。生産者に寄り添う企業理念も、品質に対して決して妥協しない姿勢も、まさに私たちが思い描いていた理想のパートナー。堀田社長と意気投合し、力を合わせてプロジェクトを進めていく協業体制を構築することができました。
試食とブラッシュアップを重ね、FNS様の技術で冷凍総菜として提供できる形にアレンジいただき、非常に高いレベルのラインアップを取りそろえることができ、自信を持ってご提供できる体制が整ったと思っています。2021年12月3日に本サービスを発表後、すでにご注文や取材のご依頼をいただいており、たしかな手応えを感じています。
立ち上げてからが本番
多くの方にご協力をいただき、検討と試行錯誤を繰り返しながら、なんとかサービスの立ち上げにまでたどり着くことができて、まずはホッとしています。ただ、「本番」はむしろこれから。しっかりとお客さまのもとに商品をお届けし、そしてご満足いただかなくてはなりません。
同時に、より多くの方に「BonQuish」を知っていただき、ご利用の輪を広げていくためのアプローチも続けていきます。「BonQuish」を通じて、水産業関係者の皆さまのお役に立ちたい。そこまでできて、初めてこのプロジェクトの使命を一歩先へ進めることができるのだと考えています。
私自身も魚は大好物ですし、四方を海に囲まれたこの日本で獲れる豊かな魚介類の魅力は、改めて知っていただくべきだと感じています。たくさんの家庭で、当たり前のようにおいしい魚を食べるライフスタイル。その再構築に、本サービスを通じて貢献していきたいですね。
協業で感じた、かつてない刺激とよろこび
東京電力ホールディングス株式会社
原子力・立地本部 立地地域部
魚食ビジネス推進プロジェクト 主任
児玉 英二
2005年入社。検針業務に長らく従事した後、2018年より本社およびグループ企業にて新規事業検討に取り組む。2021年より現職。
好きな魚料理は、白身魚のフライ。
私が本プロジェクトに着任したのは2021年6月から。以前の職場でもエネルギー関連の新規事業立ち上げに関わる仕事をしていたのですが、魚食サービスというまったく畑違いのプロジェクトが動いていることを知って非常に驚きました。すでにFNS様がパートナーとして定まっており、私は各種契約書の手配や協業をスムーズに進めていくためのスキーム構築などを担当しました。堀田社長を先頭にスピード感を持ってサービスを形づくっていくFNSの皆さまとの協業は、これまでにない体験で本当に刺激的でしたし、何より楽しい。新しい領域にチャレンジすることの醍醐味を感じながら、日々業務にあたっています。
私は八丈島の出身で、子どもの頃から海産物や水産業は身近な存在でした。たくさんの人が魚食に親しむ習慣を広げていくことが、巡り巡って地元の振興につながれば素晴らしい。そんなことにも思いを馳せつつ、よりよいサービスづくりに努めていこうと考えています。
一人でも多くの方に、このおいしさを届けたい
東京電力ホールディングス株式会社
原子力・立地本部 立地地域部
魚食ビジネス推進プロジェクト 副部長
田村 公一
1984年入社。株式会社Jヴィレッジへの出向や福島復興本社での勤務などを経て、2021年より現職。
好きな魚料理は、鮭のおにぎり。
私は児玉よりさらに後、かなりプロジェクトの全体像が見えてきた段階で着任し、主にプレスリリースの作成や報道向けのQ&Aの作成など、対外発表関連を担当しました。とはいっても少人数のチームですので、サービス立ち上げにあたって生じる多種多様な業務を手分けして進めている状況。まだまだ、やるべきことは山積しています。ただ、当社メンバーもFNS様も非常に前向きに取り組んでいるのが本プロジェクトの特徴的なところ。今までにないものを世に送り出す喜び、それを水産業に従事されている方々への貢献につなげたいという情熱が関係者全員から伝わってきます。私は水産業が盛んな福島県での勤務も長く、着任当初から大いに感化されているように思います。
FNS様のテストキッチンで試食したサンプルは素晴らしいクオリティで、自分の中の「宅配食」の概念を覆されました。あのメニューたちがご家庭に届き、召し上がっていただけるのは本当に楽しみですね。たくさんの方にご検討いただけるよう、発信にもいっそう力を入れていきたいです。
本サービスの立ち上げにあたり、協業パートナーとして尽力いただいている株式会社ファミリーネットワークシステムズの皆さまにコメントをいただきました。
水産業関係者への熱い思いに共感
当社は、大阪を拠点に国産食材を100%使用した冷凍ミールキット・惣菜の開発および夕食おかずセットのネット通販・カタログ宅配サービスを展開しています。今回、東京電力さんからお声がけをいただき、「朝食と魚」というコンセプトのもと新サービスを共同で立ち上げさせていただきました。まさか電力会社からこのようなお誘いを受けるとは思いもよりませんでしたが、伺ってみると水産業関係者への熱い思いがプロジェクトの原動力になっているとすぐにわかりました。「日本の農業・漁業の振興に貢献する」という一節を含む当社経営理念との親和性も高く、ぜひとも協力させていただきたいとお応えしました。
当社は大阪中央卸売市場を通じて、全国の漁協から国産の高品質な魚介類を安価に調達することができます。また、私たちが展開する「わんまいる」という夕食のおかずセット宅配サービスにも魚を使ったメニューは当然ありますが、ラインアップは和食が中心。一方で東京電力さんには「魚食」という枠組みの中で可能な限りバリエーション豊かに提供したいという想いがありました。
幸い、「わんまいる」を監修頂いている和食の匠・近藤一樹先生から、洋食と中華の一流シェフをご紹介いただき、試行錯誤を繰り返しながらも洋食や中華のメニューを追加できたことで、最終的に魚介類に特化した非常に高いレベルのラインアップを揃えることができました。
従来なかったジャンルのラインアップ追加、ソース別添えによるワンランク上のメニュー開発など、当社としてもこれまでにないチャレンジを通じて、新たな領域を切り拓くことができたと思っております。
春山さんをはじめとする東京電力の皆さんと密にやりとりし、たくさんの意見をいただきながらつくりあげた「BonQuish」のメニューたち。国内はもちろん、ゆくゆくは海外の皆さんのお宅にもお届けして召し上がっていただき、日本の魚介類の魅力を全世界に広げていきたいですね。