DXプロジェクト推進室発足!
カイゼン×デジタルテクノロジーによる「TEPCO DX」が始動!

2021/05/17

DXプロジェクト推進室発足! カイゼン×デジタルテクノロジーによる「TEPCO DX」が始動!

電力システム改革による自由化、脱炭素化、再生可能エネルギーなどの普及による電源の分散化、デジタル化、人口減少──さまざまな事業環境変化に伴い、エネルギー産業は今、大きな変革期を迎えています。これからもお客さまにご満足いだける価値を提供し続けるため、東京電力ホールディングスは2020年4月、「DXプロジェクト推進室」を立ち上げました。そのミッションは、人財や組織・業務プロセスまでを変革させ、データとデジタル技術を活用して「お客さま目線」と「カイゼン」を主軸に東京電力グループの新たなバリューチェーン構築により価値を創造していくこと。担当メンバーに、これまでの歩みと手応え、今後の展望を聞きました。

所属は取材当時

東京電力ホールディングス株式会社
DXプロジェクト推進室

丸橋 隆志

1996年、東京電力入社。埼玉支店志木営業所で配電設備の保守や管理業務に携わった後、本店営業部にて省エネルギー推進業務に従事。群馬支店での技術サービス、営業支援などを経て、東京電力パワーグリッドへ。2020年より現職。

丸橋 隆志

東京電力ホールディングス株式会社
DXプロジェクト推進室

松永 美由紀

2000年、東京電力入社。多摩支店配属となり、10年以上にわたってカスタマーセンターやお客さまの声分析を中心とした業務に従事する。東京電力エナジーパートナー、東京電力パワーグリッドを経て、2020年より現職。

松永 美由紀

東京電力ホールディングス株式会社
DXプロジェクト推進室

伊藤 仁

2005年、東京電力入社。沼津支店富士支社での配電保守業務を約10年間にわたり担当した後、同支社設備総括グループを経て、東京電力パワーグリッド本社配電部にて配電計画業務や保守・保全業務に携わる。2020年より現職。

伊藤 仁

デジタル革新の大渦の中で

伊藤「『DX』というワードを最近世間でよく耳にする機会が多くなりました。経産省が攻めのIT経営企業という評価フレームを刷新しDX銘柄というフレームに変え、DX認定(事業者)制度※が開始されるなど、社会からのDXへの注目度も高まっています。私自身、もともとこの分野に明るかったわけではなく、配属前はDXについて『業務をデジタル化して効率化すること』とイメージしていましたが、当室に配属されDXとは単なるデジタル化ではないということを理解したとともに、当社の置かれている状況から電力事業への危機感をより強く再認識し、企業として変革していくことの重要性に気づきました」

松永「経済産業省の定義では、DXとは『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、お客さまや社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』。すなわち、単なるデジタル推進ではなく、それを利活用したビジネス変革までを含むことになります」

丸橋「『ビジネス環境の激しい変化』については、我々電力会社も電力小売り自由化や脱炭素化、電源の分散化、人口減少などに直面しています。さらに、デジタル技術の進化そのものによって大きな影響を受ける可能性もあります。
その変化を渦に例えた『デジタル・ボルテックス』という概念によれば『電力およびユーティリティ』の分野はまだ渦の中心から距離があるものの、いずれ巻き込まれていく可能性が示唆されています。今インフラを担わせていただいていることが普遍の強みではないことを意識し、しっかりと備えておかなくてはならない。そんな思いから2020年4月に立ち上げられたのが、我々DXプロジェクト推進室です」

※取材当時、東京電力ホールディングス(株)としてDX認定制度へ申請しておりましたが、経済産業省によるDX認定事業者としての認定を2021年5月1日に取得しました。

始動、2つのパイロットプロジェクト
防災(災害)対応をお客さま視点から見つめなおす

丸橋「現在私たちが取り組んでいるのが、パイロット(試験的)プロジェクトの設定と遂行です。まずは試験的に限られた地域や業務に対してDXを推し進め、そこで得られる成果や課題の洗い出しを行っています」

伊藤「現在、複数のパイロットプロジェクトが進行中ですが、そのうちの一つが室の発足の背景にもある『防災DXプロジェクト』です。
2019年に関東圏を襲い、非常に大きな被害をもたらした台風対応の反省を踏まえ、東京電力パワーグリッドを中心に災害時のオペレーションを磨き込むとともに、設備被害状況や復旧工程情報を可視化するなどデジタル技術を活用したレジリエンス強化に取り組んできました。私たち東京電力ホールディングスとしては、その取り組みをさらにお客さま視点から業務プロセス、オペレーションを変えていくことで、『UX(ユーザーエクスペリエンス)』の向上を目指していきたい。お客さまが災害時に何を感じ、どのようなことを求めているのか。それを正しく把握するためにはどのようなデータをどうやって集めるべきか、検討を進めています。
過去に当社が行ってきた災害対応の記録は重要な情報になりますが、データとしては蓄積されておらず、残っていても当時の状況によりデータの内容や粒度が異なっているため活用がなかなか難しい。今後起こり得る災害対応に向けて、まずはデータを適切に蓄積・分析し、データに基づいた意思・行動変容を起こせるようデジタル基盤などのインフラ整備を進めていきます」

社内の常識をお客さま視点で再定義、お客さまも気づかない潜在ニーズを発見

松永「もう一つのパイロットプロジェクトとして進んでいるのが、『UX(ユーザーエクスペリエンス)向上プロジェクト』。これまで当社が『こうしたら喜んでいただけるのでは』と考えて取り組んできたことが一方的ではなかったか、本当の意味でお客さまの満足度につながっていたか。業務プロセスをカスタマージャーニーなどの手法を使いながらお客さま視点で洗い出し、お客さまの体験をデータで分析。組織や部門を横断し、東京電力グループとしてのバリューチェーン構築ができているかを検証します。それにより、業務オペレーションを変革し、『お客さま体験価値の向上』や『新たな価値創出』につなげていくことが狙いです。
取り組みの一つとして、あるエリアにお住まいのお客さまに『停電』に関するアンケートを実施し、寄せられた声の集計データと当社のオペレーションを比較し、ギャップを可視化しました。そこで見えてきたのは、当社が想定してきた評価ポイントが、必ずしもお客さま満足の評価ポイントと一致しないということ。関わる部門は様々ですが、お客さまの視点ではすべて同じ東京電力。改めて一気通貫で業務を捉え、価値を生み出すことの重要性を認識しました」

丸橋「今回対象となった地域も業務範囲も限定的なものでしたが、それでもカスタマーセンターや出向司令センター、技術サービス部門といった複数の組織がお客さま対応をするために関わっています。直接お客さま対応しない組織でも、組織を通貫した我々の振る舞いが常に評価されているというマインドが大切だと思っています。
いずれのプロジェクトにおいても、課題はかなり明確になってきたと感じます。試行錯誤を繰り返し、小さな成功体験を重ねながら『パイロット』の先―――多くの部署を巻き込んだ重点プロジェクトにつなげていきたいですね」

アイディア出しの様子

アイディア出しの様子

変革に挑む「人」をいかに育てるか

松永「こうしたDX推進の道を拓いていく取り組みに加え、変革の主体となる人財の育成も非常に大切です。社会や価値観が大きく変わり、未来が予測不能な状況に対応しながらも競争を勝ち抜いていくためには、現状を正しく捉え、『変わりたい、変えたい』という個人のマインドが重要になります。そのため、人事部門と連携し、社会の変化に気付く力や自ら変わろうとする姿勢につながる3つのプログラムを用意しました。
1つめは『マインドセット』研修。社会の変容や現実の課題を捉え、多様な考えに接することで、気づく力や考える力を養います。『変わらなくては』という危機感の醸成や、仕事のやり方やサービスの変革にチャレンジする意識付けを行っています。2つめは『分析的問題解決手法』研修。『なぜ(Why)』のアプローチにより現状を可視化し、業務の繋がりを体系的に整理。目指す姿とのギャップを小さくしていく思考や手法を習得し、変革のためのスタート地点を認識します。そして3つめが『対話で導く統合的問題解決』研修。対話を通じて社会やお客さまのニーズを的確に捉える力を養い、多様性を認知し視野を広げていくことで、変革にむけた自分の役割を認識します。いずれも手応えは上々。2020年度下期から希望者を募って順次実施していますが、参加者からは『仕事への目的意識を見直すきっかけになった』『視座を変える必要性を感じた』など前向きな声が寄せられています」

丸橋「2021年度からは社外講師や他社からの参加者を招いた『異業種交流ワークショップ』や対話会などプログラムをさらに拡げ、より幅広い視野の獲得や信頼関係構築のためのマインド醸成を図っていく予定です。将来的にはDX推進の中核を担うデータ分析人財も必要になりますから、専門的なITスキルの研修も設けていく必要があるでしょう。しかし、まずはできるだけ多くの従業員と『変革を実現したい』という思いを共有し、DXの下地をつくっていくことが重要だと考えています」

オンラインでのDX研修の様子

オンラインでのDX研修の様子

はるかなるDXの山頂を目指して

伊藤「ここまで述べてきたように、私たちがDXを通じて実現すべきは新たなお客さま価値の創造と社会課題の解決を通じて、当社の信頼を高めることです。それは電力サービスを通じてお客さまに快適で安心な暮らしをお届けし、さらに期待値を超える新たな価値を生み出し提供していくことに他なりません。ただ、その実現のためには『EX(エンプロイーエクスペリエンス:従業員体験)』の向上が前提として非常に重要になります。私が長らく配電保守業務に携わってきたこともあって、やはり第一線現場で活躍する社員一人ひとりがTEPCO DXを実感できるようにしていきたい。当社には、これまで培ってきたカイゼン活動の文化があります。そこにデジタルテクノロジーを融合させ業務プロセスに変革を図ることで新たなバリューが生まれ、現場は大きく変わっていくはずです。まずはそこから変革していきたいと考えています」

松永「かつて、お客さま対応をしていた時に、当社の情報の出し方や分かりにくさについて、何度もお叱りやご意見をいただきました。適切なタイミングで情報をお伝えできない歯がゆい気持ちは、今も忘れられません。DXによって、そんな状況も変えていくことができるかもしれない。お客さまの不安や不満を取り除き、安心や快適といった価値に変えていくファーストステップに携われることは、非常に光栄ですね」

丸橋「そう、あくまで私たちは第一歩を踏み出したに過ぎません。DXという言葉の注目度は日々高まっていますが、それをしっかりと実践できている企業は決して多くない。非常に高い山であり、登頂には多くの困難が待ち受けていると思っています。そんな中で重要になるのは、『なぜ取り組んでいくのか』──すなわち、お客さまへの価値提供という目的地を見失わないこと。全社員が共通の青写真を描きながら、一歩ずつ取り組みを進めていきたいと考えています」

関連情報

  • 2021/5/14 プレス

    経済産業省が定める「DX認定事業者」に選定

    当社は、経済産業省が定めるDX制度に基づき、「DX認定事業者」の認定を取得しました。電力会社では初めてとなるDX認定の取得となります。

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