地球環境に思いを馳せ、
再生可能エネルギーを活用した新規事業に取り組む
2017/10/20
再生可能エネルギーは環境にやさしいエネルギー源ですが、我が国の発電電力量に占める割合は、2014年時点で12.2%(そのうち水力発電は9%)に過ぎません。東京電力では、水力発電のみの電気料金プランを開発するなど、新たな視点で知恵を絞り、このように未だ発展途上にある再生可能エネルギーの普及と促進に挑んでいます。今回は、担当社員が、地球環境への思いとともに、その取り組みをご紹介します。
東京電力ホールディングス株式会社
リニューアブルパワー・カンパニー
戦略室 事業開発チームリーダー
伊藤 弘和
1999年入社。電気料金の管理や電気工事の工程管理に携わったのち、環境部や茨城支店環境グループなどで地球環境に関わる業務に携わり、企画室ではエネルギー政策対応を担当。その間には外部のシンクタンクへも出向し、2003〜2006年までは日本エネルギー経済研究所で、2010〜2012年までは経団連21世紀政策研究所で、地球温暖化やエネルギー問題の調査・研究に従事。2016年7月から現職。
水力発電は、再生可能エネルギーの優等生
東京電力ホールディングスのリニューアブルパワー・カンパニーは、再生可能エネルギーの発電事業を担う社内カンパニーです。その中で、私の所属する戦略室では、再生可能エネルギーを活用した新規事業の開発に取り組んでいます。
再生可能エネルギーは二酸化炭素を排出しないため環境にやさしいのですが、再生可能エネルギーとしてイメージされやすい太陽光や風力などは、コストが高く、天候などの自然状況に左右され、需要に合わせて発電できないなど多くの課題もあります。そんな中で、コストや安定性にすぐれた水力発電は、再生可能エネルギーの優等生です。
そこで私たちは、再生可能エネルギーの普及に向けた取り組みの一環として、水力発電の実力を最大限に活用する新しい電気料金プランを開発しました。それが、水力のみで発電された電気をお届けする『アクアエナジー100』です。
『アクアエナジー100』の電気には、水力発電の中でも、他の電源を利用する揚水発電や環境価値が切り離された固定価格買取制度を適用した水力発電による電気は含まれません。ですから、環境問題に関心のあるお客さまにも自信を持っておすすめできる、環境にとてもやさしい料金プランです。
さらに、ご契約いただいたお客さまには、ダムや水力発電所の見学、群馬県片品村などの電源地域での自然体験など、『電気のふるさと』を直接体験することができる魅力的な特典もご用意しています。
『電気のふるさと』の自然を実感する体験会を開催
今から2年ほど前、リニューアブルパワー・カンパニーのプレジデントが、水力発電の立地地域であり、当社が自然保護に力を入れている尾瀬もある群馬県片品村の副村長さんに、「『電気のふるさと』としての片品村の良さを付加価値にした電気を消費地の方々にお届けしたいですね」とご提案したところ、「ぜひやりましょう」とご賛同いただいたことが、『アクアエナジー100』が開発されるきっかけになりました。その後、担当者となった私は、片品村のみなさんとともに、発電所立地地域の魅力を知っていただくためのさまざまな企画を練ってきました。
東京での暮らしが長い私は、片品村への出張が毎回とても楽しみでした。寒暖の差が高い糖度を生み出しているとうもろこしやトマトをはじめ、村の野菜や特産品はどれも本当においしいですし、道で出会えば知らない方でも気軽に挨拶してくださり、村のみなさんのやさしさに触れる度にとても温かい気持ちになりました。そんな地域の魅力を知っていただくには、実際に足を運んでいただくのが一番です。そこで、『アクアエナジー100』の特典として、ダム見学や片品村の自然に触れる体験会を開催することにしたのです。
9月30日には、片品村のみなさんをはじめ関係者の方々のご協力をいただき、『アクアエナジー100』のご契約者を対象とした、第1回目の体験会を無事開催することができました。重要文化財にも指定されている丸沼ダムや丸沼発電所の見学では、普段は立ち入ることのできない場所までご案内し、設備に詳しい社員が細かく解説をしました。その後はりんご狩りを楽しみ、参加者のみなさんには、電気と地域の自然の両方に触れあう貴重な体験をしていただくことができました。
また、こうした体験会のほかにも電源地域との触れ合いのために、『アクアエナジー100』のご契約者限定のダムカードも発行することにしています。ダムカードとは、ダムの訪問者に配られるダムの写真やデータを掲載したカードで、昨今はマスコミでもたびたび取り上げられるほど人気があります。
主に山間部にある水力発電所やダムの立地地域は、人口減少や高齢化が課題となっていますが、ダムカードをきっかけにこうした地域を訪問していただき、すばらしい自然やおいしい食べ物、祭りや古民家などの伝統文化、地域資産、観光資源を知っていただければ、地域活性化にも繋がっていくと思います。
日々の暮らしの中で何気なく電気を使っているとき、その電気がどこから来たのか、何から作られているのかなどと考えることはほとんどありません。だからこそ、こうした取り組みをとおして、電気にもふるさとがあることや水力など再生可能エネルギー電源について、一人でも多くの方々にお伝えし、興味を持っていただくためのイベントや企画を積極的にご提案していきたいと思います。
地球環境問題の解決には、一人一人の意識や価値観が重要
私は、学生時代からずっと環境問題に関心がありました。東京電力に入社したのも、地球温暖化への影響が大きい電力会社でこそ、それに取り組む意義が大きいと思ったからです。その願いが叶えられ、入社後は長く環境畑を歩み、今も再生可能エネルギーに携わっていることは幸運ですし、たいへん感謝しています。その一方で、地球温暖化問題の難しさも感じています。
環境保全の切り口で考えるときは、多くの方々が、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーを使いたいと思われます。しかし、暮らしに欠かせない電気は、安定して届くことが必要ですし、経済的な負担が大きくなってしまうような価格では、選んでいただくことができません。ですから、安定供給と経済性を両立したうえで、再生可能エネルギーを活用した新規事業を開発していくのは簡単ではないと痛感する日々ですが、テレビの経済番組を録画視聴したり、ビジネス誌を購読したりしながら、社会のトレンド・流行といった鮮度が重要な情報の収集に努め、根気強く新しいビジネスモデルを模索しています。
地球環境問題の解決には、一人一人の意識や価値観が重要です。その鍵となるのは環境教育だと思っていますので、将来は、子供たちの環境教育に携わることで環境問題の解決に貢献したいという夢もあります。そんな思いを抱きながら、これからも日々アイディアを練りながら、再生可能エネルギーを活用した事業への挑戦に邁進していきたいと思います。