【後編】20年、30年先を見据えた住宅づくりで脱炭素化を推進
2023/06/14
東京電力エナジーパートナー株式会社とTEPCOホームテックは、2021年9月、住友不動産株式会社との協働による「脱炭素リードプロジェクト」をスタート。脱炭素社会の未来を見据えた取り組みの第1弾として、お客さま視点の新しいサブスクリプション型サービス「すみふ×エネカリ」を開発しました。前編に引き続き、住友不動産企画部ESG推進室の池大樹さんと「すみふ×エネカリ」以降のさらなるプロジェクト展開を語り合いました。
住友不動産株式会社
企画部ESG推進室
池 大樹
入社後、ビル事業本部に所属し、各ビルにおけるエネルギー契約業務ほかを担当。その後は企画本部で経営管理等を担当したのち、ESG推進室に異動、すみふ×エネカリの開発ほかに携わる。
東京電力エナジーパートナー株式会社
販売本部 法人営業部 都市事業ユニット 課長
亀田 健一
2008年入社。入社時は東京支店で法人のお客さまの電気契約対応を行う傍ら、当時シンボリックスポーツだった長距離・駅伝チームで活動、ニューイヤー駅伝にも出場した。2011年の震災以降は、銀座支社で主に千代田区内の法人のお客さま、2015年からは本社法人営業部で不動産・総合商社・金融業界へのエネルギーソリューションやエネルギー供給事業等の企画提案、アライアンス推進に携わる。
東京電力エナジーパートナー株式会社
販売本部 カーボンニュートラル推進部
再エネ事業開発第一グループ マネージャー
安保 陽平
2006年入社。入社時は神奈川支店にてハウスメーカーを中心に住宅事業者さまへオール電化住宅提案を実施。その後一貫して家庭分野のエネルギーソリューションに携わる。2020年よりCN推進部に配属。主に法人のお客さま向けに再生可能エネルギーを活用した電力メニューの開発を実施。
TEPCOホームテック株式会社
経営戦略本部
サービス企画担当 部長
杉原 広央
1999年東京電力株式会社に入社。福島第一原子力発電所の耐震設計など、発電所の建築設計業務に関わった後、事業開発部で新事業会社の立上げに携わる。
2011年の震災以降は、原子炉建屋カバーの設計や汚染水対策など廃炉の推進に取り組んだ後、2017年より現職。TEPCOホームテック株式会社の設立時から商品開発・営業推進を担う。
一生涯の住まいに必要な“安全と安心”の追求
池「『すみふ×エネカリ』の提供から1年以上が経ちましたが、お客さまからの好評をいただけており、胸をなで下ろしています。ご契約いただいたお客さまの太陽光発電システム設置率は、『すみふ×エネカリ』導入前は30%弱でしたが、導入後は60~70%ほどに倍増しました。実数ですと1年強で1,700~1,800戸ほどのお客さまにご契約いただいています。コストパフォーマンスはもちろんですが、やはりお住まいの間はサポートが続くという安心感が契約の決め手になっていると思います」
安保「脱炭素を推進する施策を企業へ提案する側の私たちにも、サービス発表後はさまざまな企業から“そんな手があったのか”と問い合わせがありました。お話しを伺うと、まだまだ多くの企業が“脱炭素施策といっても何をすればいいのか”と、本当に頭を悩ませている印象でした」
杉原「サービスの主体会社としても想定を上回るペースで契約数が伸びており、設備設置の体制強化を急ピッチで進めており、サービスの展開後もサービス設計時とは違う意味で気の抜けない状況が続いています」
安保「TEPCOホームテックの設置契約件数・作業増大の背景には、従来の新築住宅向けのエネカリは太陽光発電システムの設置を基本サービスとし、蓄電池の設置はお客さまの選択に委ねられていたのですが、『すみふ×エネカリ』は太陽光発電システムと蓄電池を必ずセットで提供するサービスとして設計されたこともあるでしょう。この点も、住友不動産さんのデベロッパー視点を活かした安心へのこだわりが反映されました」
池「蓄電池で電気を自家消費できる点と、災害時に電力会社からの給電が止まった場合でも電気の自給自足ができる点をお客さまにアピールしています。ハウスメーカーの責務として、これまでも地震が起きても壊れない“ハード面の安全”は意識してきました。ですが、さまざまな災害が起こり得る状況でその際に水や電気は使えるのか?(災害でも)壊れない家に居続けられるか?という“お客さまの心理的な安心”にも寄り添っていくことが、これからは求められます。そういった部分にアプローチできたことが、好評につながったと思います」
“電力の地産地消”推進の意味
亀田「池さんが言うお客さまの安心・安全に寄り添うアプローチは、これからの電力消費を見直し、それを脱炭素社会視点で広めていく上でも非常に重要だと考えます」
杉原「その通りですね。頻発する災害や、急激な気象変化による電力の需要過多により停電が起きたとしても、お住まいの蓄電池にためた電気を使うことができるわけですからね。こうした備えはもちろんですが、電気料金が上昇している中で、お住まいの太陽光パネルで発電した電気を使用し電気料金の節約もできる、これを私たちは“電力の地産地消”と呼んでいますが、『すみふ×エネカリ』のような電気の運用をライフスタイルへ浸透させていくことが、電力の安定供給、そして脱炭素化の観点で当社グループに課せられた使命でもあります」
亀田「2022年12月には、東京都が2025年4月から新築戸建住宅などへ太陽光パネルの設置を義務化する条例案を成立させましたが、『脱炭素リードプロジェクト』は行政が目指すものとの親和性が高く、これからも世の中の動きをまさにリードするように、“電力の地産地消”の推進に貢献する取り組みなどを進めていかなければなりません」
池「今、太陽光発電を大規模に行おうと考えても、適した立地が見つからず難航する時代です。そのため、屋根の上が空いている住居に太陽光パネルを設置して自家消費、つまり地産地消をおすすめすることは、再エネ推進の上で重要なキーワードになってきています。また、日本で脱炭素社会の推進を考える上では、約5,000万戸の既存住宅へのアプローチも必須でしょう。弊社は『新築そっくりさん』という改修事業でのアクションも始めました。日本の脱炭素化に大きな貢献をもたらし、お客さま、東京電力グループさん、弊社それぞれにとってプラスになる構想を見いだせたことは、とても価値ある取り組みだったと思います」
歩みを止めることなく、脱炭素施策をリードする
安保「この他にも、『脱炭素リードプロジェクト』で進めている取り組みに環境先進企業向けの電力プラン『サンライトプレミアム』があります。これは、新設の太陽光発電所由来の“生グリーン電力”(※1)を、オフィスビルのテナント専有部に導入する、というスキームです。2021年10月には、セガサミーホールディングス株式会社さんが大崎ガーデンタワー(運営・管理:住友不動産)において、“追加性”(※2)を有する生グリーン電力を初めて導入されましたが、『すみふ×エネカリ』をプロジェクト第1弾とすると、『サンライトプレミアム』が第2弾、『新築そっくりさん』との連携は第3弾という位置付けです。いずれも業界初の試みとなっています」
- ※1 再生可能エネルギーから得られたグリーン電力のうち、発電時と消費時を30分単位で一致させ、発電所から一般送電網経由でダイレクトに送電されたとみなされる電力
- ※2 太陽光発電所など新たな再エネ電源開発により、再エネ発電総量増加に直接寄与すること
亀田「第1~3弾のように、これからの『脱炭素リードプロジェクト』は、従来のオフィスビル向けのソリューションにはない取り組みや、企業のカーボンニュートラルニーズに対応するテナント向け電源に着目した取り組みも進めています。それが、安保も話していた『何をすればいいかわからない』という企業へのひとつの回答にもなるはずです。今回の『すみふ×エネカリ』では、従来は法人向け商材ではないエネカリを活用することで、新たな法人向けソリューションとすることができました。引き続き新たな発想で、脱炭素社会に貢献できるよう挑戦していきたいと思います。また、オフィスビルでの省エネを着実に進めるために、ビル単位、テナント単位で“エネルギーの使い方”を相談・提案させていただきながら、節電や再エネ利用に一緒に取り組むことができればと考えています」
池「『サンライトプレミアム』は、テナントさんにも非常に好評な施策でした。当初は“追加性”という概念が浸透していなかったのですが、最近は多くの企業が興味を示され、実現が早かった分、弊社や東京電力エナジーパートナーさんへの相談が相次いでいます。これからも住宅、ビルなどアセットを問わず、一緒に脱炭素社会への転換をリードしていきたいですね」
亀田「電力をいかに運用し、家庭の“安心・安全”を守り、環境にも寄与していくか――。住友不動産さんとの協業で、これからも脱炭素化を推進していきたいと思います」
https://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2021/1638075_8666.html
すみふ×エネカリ
https://www.tepco-ht.co.jp/release/1116.html
エネカリ
https://www.tepco-ht.co.jp/enekari/index.html