再生可能エネルギー活用の要になる大容量定置型蓄電池「NAS電池」が再起動

2021/04/20

再生可能エネルギー活用の要になる大容量定置型蓄電池「NAS電池」が再起動

NAS電池は大容量、高エネルギー密度、長寿命を特長とし、長時間にわたる高出力供給が可能です。再生可能エネルギーの普及やスマートグリッドの構築、さらにはデマンドレスポンスへの対応など、今後ますます広がりを見せる新たなエネルギーソリューションに貢献します。当社は日本ガイシと共同研究からスタートしており、価格面・設置運用実績などで圧倒的な強みがあります。

1980年代、経済成長とともに電力需要が増加する中、昼夜間の負荷平準化が喫緊の課題となっていました。当時、その解決方法は揚水発電しかありませんでしたが、TEPCOは1984年に日本ガイシと共同で大容量定置型蓄電池「NAS電池」の開発に着手。世界初のMW(メガワット)級大容量蓄電池を実用化し、2002年に販売とリースをスタートし、負荷平準化に貢献してきました。しかしその道のりは、決して順風満帆ではありませんでした。その歩みを本事業に関わる社員に聞きました。

  • ※負荷平準化:昼夜、季節間等での電力需要格差を小さくすることで、電力供給にかかるコストを抑える。
  • ※揚水発電:需要の少ない夜間の余剰電力でダムに水を汲み上げ、需要が多い昼間の時間帯に水を流して発電する。

東京電力エナジーパートナー株式会社
販売本部 法人営業部
電力ソリューション技術グループ
グループマネージャー

千葉 浩明

1995年入社。東京・神奈川で変電所の保守・運用を担当。2017年からは福島にて再エネ用送電網建設プロジェクト(福島送電株式会社)に携わり、2020年10月から現職。

千葉浩明

東京電力エナジーパートナー株式会社
販売本部 法人営業部
電力ソリューション技術グループ
副部長

中畑 浩一

1992年入社。東京都内で変電所の保守、運転業務を担当。蓄電池の運用業務やお客さまへのソリューション提案活動、VPP実証に従事。2019年7月から現職。

中畑 浩一

東京電力エナジーパートナー株式会社
販売本部 法人営業部
電力ソリューション技術グループ 兼 スマートコミュニティ開発グループ
課長

濱本 陽介

1997年入社。変電部門を経て、震災前は法人営業、法人契約およびエネルギー事業管理を担務。2013年からは産業部門のソリューション提案を経て、蓄電池ならびにVPP・DR関係業務を担務。

濱本 陽介

東京電力エナジーパートナー株式会社
販売本部 法人営業部
電力ソリューション技術グループ
課長代理

市村 拓也

1991年入社。山梨で発変電所の保守・制御を担当。営業部門へ異動後は、主に蓄熱・空調システムや電化厨房などのソリューション提案業務に従事。2015年7月から現職。

市村 拓也

世界初の大容量蓄電池実用化に成功

千葉「電力会社にとって、電気を貯めることは長年の悲願でした。夜間に使われない電気を貯めておくことができれば、効率的に電気を供給することができます。さまざまな方法が試されましたが、1980年代の時点では揚水発電しか実用化されていませんでした。そこで、電力貯蔵用の蓄電池の開発が進められ、当時の私たちの先輩たちが目をつけたのが、NAS電池です。NAS電池は、高いエネルギー密度、高速応答性、自己放電がないという特長を持ちます。そして、1984年に日本ガイシと共同研究をスタートし、2002年に世界で初めてNAS電池の実用化にこぎつけました。
NAS電池は、コンパクトかつ大容量・長時間・長寿命を実現し、負荷平準化だけでなく、落雷等により一瞬電圧が低下する瞬時電圧低下(瞬低)への対策、非常用電源等としても活用ができ、BCP対策の一環としても注目されています。当時私は、NAS電池のPRを担当していましたが、すごいものができたぞ!と密かに感動していました」

中畑「私は1998年からNAS電池の実用評価研究に携わっていました。大容量蓄電池の実用化は世界初の挑戦。大容量にすることで、高レベルの制御等の技術が新たに必要となるため、安定的に運転を継続することが難しく、また、関係法令の許認可を取得することが大変だったことを覚えています。国内でも複数社が挑戦していましたが、早期に実用化にこぎつけたのがNAS電池でした」

蓄電池システムのマルチユース・メリット

❶ 負荷平準化
夜間電力の活用でデマンドを抑制し、負荷平準化により電気料金を低減

❷ 瞬低対策
落雷時等の重要負荷に対する瞬時電圧低下(瞬低)を補償

❸ 非常用電源
停電時の消防用負荷、重要負荷等への非常用電源供給

❹ DR(デマンドレスポンス)/VPP(バーチャルパワープラント)
系統運用者などからの電力増減要請に応じて充放電を実施

手応えと落胆を味わった2011年

濱本「当社が販売、または賃貸借を行ったNAS電池システムは、2011年には累計約100カ所・18万kWとなり、携わる大容量定置型蓄電池システムとして、世界最大となりました。調整力は20万kW・130万kWhを超え、その規模は、関東のど真ん中に発電所が一つあるほどの影響力がありました。今でいうところのVPP(バーチャルパワープラント)やDR(デマンドレスポンス)を先取りした取り組みをしていました。

東日本大震災による停電時には、非常用電源として大活躍しました。あのとき、全需要の約2割・400万軒超のお客さまが停電しましたが、NAS電池を設置していたお客さまではNAS電池からの電力供給のおかげで停電とならなかったため、『系統が停電したこと自体、夜の帳が下りるまで気づきませんでした』『3時間の計画停電に対しても、NAS電池のおかげで停電せずに済みました』という声が届きました。災害時に強いというNAS電池の活躍に期待が高まっていた矢先、同年9月に起きてはならない事故が起こりました。火災事故が発生し、全てのNAS電池システムが停止を余儀なくされたのです」

中畑「火災の連絡を受けたときには、とても大変なことになったとの気持ちになりました。原因究明にも時間がかかり、なかなか対策も立てられませんでした。積み上げてきた信頼が一気に失墜する中、関係する社員と一緒に全てのお客さまと誠心誠意向き合い、協議を重ねました。最終的には半数を超えるお客さまがNAS電池を撤去されました」

濱本「しかしそんな状況でも、引き続きNAS電池を使いたいというお客さまがいらっしゃったのです。その気持ちに応えたいという思いで、NAS電池の安全性を検証する日々が続きました。このときの教訓により、蓄電池エネルギーサービスの安全・防災に対する意識と対策のパラダイムシフトが起こりました。『絶対燃えない』という安全神話(思い込み)から『絶対燃えないはずのものが燃えてしまったとき』の対策への転換です。そのためには不可侵領域なく、性能や定格値にまで切り込み、対応を進めました。厳格な安全性能試験を経て、既存システムの運転は順次再開されましたが、新たにNAS電池をご契約、導入いただけたのは実に9年ぶりの2020年。ようやく新たなスタートを切ることができました。2021年度も既に複数のお客さまから導入のご契約をいただいております。」

市村「電気を貯めるという夢を実現するために、熱い想いでNAS電池を開発した先輩方とお客さまへご提案し導入されてきた先輩方の想いを受け継ぎ、新しいNAS電池を提案しています。開発当時は、大容量蓄電池といえばNAS電池しかありませんでしたが、現在はリチウムイオン電池も選択肢に加わり、コジェネレーションシステム等の発電機と蓄電池の組み合わせもあります。総合エネルギー企業として、お客さまのニーズに寄り添い、最適なシステムをご提案していきたいですね」

再生可能エネルギー導入拡大に貢献する大容量蓄電池

千葉「日本政府が2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすると表明しましたが、以前から多くの企業が独自の目標を掲げて、削減に取り組まれています。その一つの方法として再生可能エネルギー(再エネ)の活用がありますが、再エネによる発電とお客さまの構内負荷との需給バランスを取る必要があり、エネルギーマネジメントシステムと大容量蓄電池の活躍の場はますます広がっていくと期待しています」

中畑「私たちにできることは、東京電力グループが培ってきた幅広いノウハウに基づくコンサルティングサービス。大容量蓄電池と再エネやエネルギーマネジメントシステム、さらには導入拡大に向けた各種支援制度を組み合わせることで、経済的にもサステナブルなトータルエネルギーソリューションサービスをご提案したいですね。同時にさらに新たな技術も開発し、お客さまに選ばれ続ける存在でありたいと思います」

更新した日立Astemo株式会社様佐和工場NAS電池システム(3,600kW)

更新した日立Astemo株式会社様佐和工場NAS電池システム(3,600kW)

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