2016年4月8日
東京電力ホールディングス株式会社

 2016年3月8日午後2時8分頃、定期検査中の5号機において、制御棒駆動水圧系水圧制御ユニット*1の弁を操作していたところ、制御棒を操作していないにも関わらず、制御棒ドリフト警報*2が発生しました。
 制御棒の状態を確認した結果、制御棒(30-55)1本が全挿入位置から更に挿入側に一時的に動作(過挿入)していたものと判断しました。
 本件は実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則第134条に基づく報告事象に該当するものと判断し、当該規則に基づき報告しております。
 なお、5号機は、原子炉内に燃料が装荷されており、制御棒が全挿入状態にありました。制御棒は一時的に挿入方向に動作し、その後、通常の全挿入位置を維持していることから、原子炉の安全上の問題はありません。また、本事象による外部への放射能の影響はありません。

2016年3月8日お知らせ済み・公表区分I)

 本事象の原因について、その後、詳細な調査を行い、対策を検討中であることを、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則第134条に基づく報告書を原子力規制委員会へ提出しました。

2016年3月18日お知らせ済み

 当社は、本件について原因調査および再発防止対策を取りまとめ、本日、原子力規制委員会に報告いたしましたので、お知らせいたします。
 報告概要は以下の通りです。

1.発生メカニズム(添付資料-1(19.9KB)2(50.0KB)参照)
 調査の結果、当該制御棒が過挿入した推定メカニズムは以下の通りです。
(1)スクラム*3入口弁[126弁]のボンネットフランジ部の片締め*4に加え、弁の動作試験を2013年2月5日に実施したことにより、その後シート状態が変化した。
(2)2014年3月10日、方向制御弁*5[120弁、121弁、122弁、123弁]点検に伴う制御棒駆動水圧系水圧制御ユニット配管内の水張りを実施した。その際、駆動水挿入配管隔離弁[101弁]手前の垂直配管内にエアが残留した。
(3)2016年2月22日、制御棒駆動水圧系水圧制御ユニットの点検が完了したため、アキュムレータ*6に充填水の水張りを実施した。スクラム入口弁[126弁]のシート状態が変化していたため、シートからの漏えいが発生し、垂直配管内のエアが蓄圧された。
(4)2016年2月22日、蓄圧箇所の圧抜きを実施した。しかしながら、駆動水挿入配管隔離弁[101弁]手前の垂直配管内のエアは、配管配置上、残留したままとなった。
(5)蓄圧箇所の圧抜きを実施した2016年2月22日以降、スクラム入口弁[126弁]シートからの漏えいにより充填水配管内の残留エアが加圧された。(シートからの漏えいが止まる2016年3月7日まで加圧状態は継続。)
(6)2016年3月7日、残留エアの加圧後に片締め対策として規定トルクでの締め付け確認のためスクラム入口弁[126弁]ボンネットフランジ部の増し締めを実施したことにより、シート状態が変化しシートからの漏えいが止まった。
(7)2016年3月8日、制御棒駆動水圧系水圧制御ユニット復旧作業で駆動水挿入配管隔離弁[101弁]を開操作した。その際、垂直配管内に蓄圧された残留エアが開放され、体積が膨張した。
(8)体積膨張した残留エアが制御棒駆動機構ピストン下部に流入し、制御棒駆動機構ピストン下部に圧力が加わり制御棒駆動機構を挿入側に一時的に動作させた。その結果、「制御棒ドリフト」警報が発生した。
(9)制御棒駆動機構を一時的に動作させた残留エアは、その後、原子炉へ流れて減圧したため、過挿入した制御棒は自重により全挿入位置まで戻った。

 なお、本事象発生時は、制御棒駆動水圧系リターン運転*7を実施し引き抜き配管への過剰な圧力上昇を防止していることと、駆動水差圧調整弁を全開状態にしていたことから、制御棒が予期せずに引き抜ける可能性はありませんでした。

※:制御棒が引き抜けるためには、制御棒の位置を保持するラッチを開放するため、制御棒駆動水圧系の引き抜き側に駆動水圧力(0.59MPa)をかける必要がある。

2.推定原因
 制御棒駆動機構挿入配管ラインに蓄圧されたエアを起因とした、予期せぬ制御棒動作を防止するために蓄圧箇所の圧抜きを実施していたものの、スクラム入口弁[126弁]のシートからの漏えいにより駆動水挿入配管隔離弁[101弁]手前の垂直配管内に残留していたエアが再蓄圧された。この状態を認識できずに、制御棒駆動水圧系水圧制御ユニット復旧作業として、駆動水挿入配管隔離弁[101弁]を開操作したことにより、制御棒駆動機構ピストン下部に一時的に圧力がかかる状態となり、制御棒駆動機構を挿入側に動作させた。

3.再発防止対策
(1)スクラム入口弁[126弁]のシートからの漏えい防止対策スクラム入口弁[126弁]点検後、面間管理*8を実施することで、スクラム入口弁のシートからの漏えいを防止する。また、制御棒駆動水圧系水圧制御ユニットを長期間隔離している場合は、アキュムレータ加圧前にスクラム入口弁のシートからの漏えいがないことを確認する。

(2)駆動水挿入配管隔離弁[101弁]手前の垂直配管内への残留エア防止対策

添付資料-3(66.7KB)参照)

 駆動水挿入配管隔離弁[101弁]手前の垂直配管内に残留するエアをなくすことを目的に、制御棒駆動水圧系水圧制御ユニット復旧作業で実施する駆動水挿入配管隔離弁[101弁]の開操作を実施する。
 具体的には、制御棒駆動水圧力系水圧制御ユニット復旧時、スクラム入口弁[126弁]に充填水ライン側から加圧する前に、制御棒駆動水ライン側において従来と同じ蓄圧開放操作を実施する。その際、制御棒を動作させる原因を除去するため、駆動水挿入配管隔離弁[101弁]の開操作をし、駆動水挿入配管隔離弁[101弁]手前の垂直配管内に残留していたエアを原子炉へ排出する。垂直配管内にエアが存在しない状態となるが、その状態を維持したまま、確実にエアを排出するために制御棒駆動水ライン側の[104弁]を開操作する。その後、充填水ラインを水張りし、制御棒駆動水ライン側の制御棒駆動水圧系水圧制御ユニット復旧のための弁操作[102弁、101弁、103弁、104弁、105弁を開操作]を実施する。

以 上

*1 制御棒駆動水圧系水圧制御ユニット
 制御棒を炉心内に挿入したり引き抜きしたりするため、制御棒駆動機構に駆動水等を送る装置。

*2 制御棒ドリフト警報
 制御棒が所定の位置にない状態となったことを示す警報。

*3 スクラム入口弁
 緊急で制御棒を挿入する際に使用する駆動水を供給するための弁。

*4 フランジ部の片締め
 フランジ面の隙間が不均一で一方向に傾いたまま締め付けられている状態。

*5 方向制御弁
 制御棒駆動機構のピストン部の上下に水圧を掛け水の流れを入れ替えるための弁。

*6 アキュムレータ
 制御棒を水圧により急速挿入(スクラム)するための高圧窒素ガスを供給する装置。なお、通常の制御棒の駆動操作(挿入・引き抜き)は、制御棒駆動水圧系のポンプによる水圧で駆動させている。

*7 リターン運転
 原子炉停止時の全制御棒駆動水圧系水圧制御ユニットを隔離する前の手順として、制御棒駆動水圧力系の冷却水の一部について、制御棒駆動水圧系水圧制御ユニットを通さずに原子炉へ流す運転。これにより、制御棒駆動水圧系水圧制御ユニットの挿入および引抜き配管への過剰な圧力上昇を防止する。

*8 面間管理
 フランジの面間が均一になるよう隙間を確認しながら対角に締め込み、締め付け後の面間測定において許容値以内に管理することで片締めを防止する。

<添付資料>
(添付資料-1)柏崎刈羽原子力発電所5号機 制御棒駆動水圧系 概略図(19.9KB)
(添付資料-2)柏崎刈羽原子力発電所5号機 制御棒の動作 推定メカニズム(50.0KB)
(添付資料-3)柏崎刈羽原子力発電所5号機 制御棒の動作 再発防止策(66.7KB)
(添付資料-4)柏崎刈羽原子力発電所5号機 燃料・制御棒配置図(45.3KB)
(添付資料-5)柏崎刈羽原子力発電所5号機 定期検査中における制御棒1本の予期せぬ動作について(報告)(23.5MB)

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