柏崎刈羽原子力発電所6号機タービン建屋における火災に関する報告書の提出について
平成21年1月8日 東京電力株式会社 当社は、平成20年12月8日に柏崎刈羽原子力発電所6号機タービン建屋におい て発生した火災について、12月9日、経済産業省原子力安全・保安院より、火災 の発生および通報に時間を要した原因ならびに再発防止対策について、当社にお ける調達管理のあり方も含めて徹底した検討を行い、速やかな報告を求める旨の 指示文書*1を受領いたしました。 (平成20年12月9日お知らせ済み) 本日、この結果につきまして、同院へ報告いたしましたのでお知らせいたしま す。 1.被災の状況 被災の状況について現場を確認した結果、配管サポート耐震強化工事の溶 接作業で使用していた電気溶接機のワイヤ送給装置*2が全体にわたって黒 くすすけており、ケーブル等の可燃性部品が焼損していたが、特に焼損して いたのは中継端子台でした。 2.火災および通報遅れの原因 調査の結果、火災が発生した原因および火災発生の連絡が遅れた原因は、 以下の通りと推定いたしました。 (1)火災が発生した原因 ・火災が発生した電気溶接機については、工場での出荷前点検や現場での 使用前点検が行われていたが、溶接機の付属品であるワイヤ送給装置の 点検項目の中に中継端子台の目視点検が含まれていなかった。 ・このため、中継端子台の端子の腐食や埃の付着等を使用前点検等で発見 することができず、溶接作業中に端子の一部が接触不良やトラッキング 現象*3により発熱し、着火・発煙した。 (2)通報遅れの原因 ・実際に炎を目撃し初期消火活動を実施した者は、近くにいた工事関係者 が内線電話にて通話していたので、中央制御室へ連絡していると思い込 み、中央制御室へ火災発生の連絡*4をしなかった。 ・現場の状況を中央制御室へ連絡した協力企業(元請)工事担当者は火災 発生の認識を持っておらず、中央制御室(当直長)へ火災の情報が正し く伝わらなかった。 ・火災発生の認識を持っていない協力企業(元請)工事責任者より体調不 良の作業員発生の連絡を受けた当社主管グループは、中央制御室や協力 企業(元請)工事担当者に現場の状況を問い合わせたが、火災発生に関 する情報は得られなかったため、当社は現場確認を実施せず火災発生の 確認に時間を要した。 3.火災発生防止および迅速な通報のための対策 今後、火災発生を防止するための対策および、万が一火災が発生した場合 の通報を迅速に行うための対策は、以下の通りといたします。 (1)火災発生防止の対策 ・当社は、「工事共通仕様書」について、工事用機器については付属品も 含めて管理することを明記するとともに、「電気溶接機点検表」を改訂 し、電気溶接機の使用前に中継端子台の接続部に緩みがないこと、中継 端子台と圧着端子の接続に異常がないこと、端子間に埃等がたまってい ないことを確認する。なお、当社は、「工事共通仕様書」に例示された 他の機器の点検表についても、点検項目に不足が無いか確認する。また、 当社は、協力企業に対し、「工事共通仕様書」に例示された機器の点検 表に基づき現場で使用中の点検表について、点検項目に不足が無いか確 認するよう指示することとする。 ・協力企業は、現場へ持ち込む電気溶接機に関する管理規定にワイヤ送給 装置を追記し、点検管理対象品であることを明確にする。 ・協力企業は、電気溶接機およびワイヤ送給装置について、工場での出荷 前点検の点検要領を明確化し、合格した点検記録を添付して出荷するル ールとする。また、現場での使用前点検の実施についても明確化し、点 検記録をつけることとする。 ・協力企業は、本事象および前項の運用変更について周知徹底を行い再発 防止に取り組むものとする。 (2)火災発生時に迅速に通報するための対策 (火災発生時の連絡体制・責任者の明確化) ・当社は、火災発生時の通報連絡体制における責任分担を工事共通仕様書 で明確にする。 ・当社および協力企業は、火気作業に携わる者に配布するために作成した 火気作業実施時の遵守事項等をまとめた「作業安全ハンドブック」およ び作業現場に掲示する通報連絡体制表に、火災発生時の通報連絡体制に おける責任分担を明示する。 ・当社は、現在の工事共通仕様書が、緊急時の連絡について、受注者(協 力企業作業員)が当社工事監理員へ報告することとなっているため、第 一報は中央制御室(当直長)へ連絡するよう改訂する。 (火災発生時の連絡体制にかかる教育の実施) ・当社は、協力企業に対し、火気作業に携わる作業員全員を対象に、火災 発生時の通報連絡体制における責任分担にかかる教育を実施し、認識の 再徹底を図るよう周知する。 ・当社および協力企業は、「火気専任監視員研修テキスト」について、原 子力発電所における火災対応の重要性を強調した内容に見直し、再認識 させる。 ・当社は、火気作業を実施する場合には、TBM−KY(作業前に行う危 険予知活動)で火災発生時の連絡方法および声出しを周知徹底するよう 「工事共通仕様書」に追記し、再徹底を図る。 ・当社は、何らかの事象発生時に「煙」というキーワードを含む連絡を受 けた場合には、火災の可能性を考えて関係箇所に問いかけをし、火災の 可能性が否定できない場合は、直ちに現場確認を行うなど、感度を高め て対応できるよう、当直員、当社工事監理員に本事象を踏まえた教育を 行い、徹底を図る。 当社・柏崎刈羽原子力発電所における火災の発生および通報遅れについて、地 域の皆さまに大変ご心配をおかけしており、心よりお詫び申しあげます。 当社は、安全意識をより一層高めるとともに、協力企業各社も含め一丸となっ て災害発生の未然防止に努めてまいります。 以 上 ○添付資料 柏崎刈羽原子力発電所 6号機 タービン建屋地下1階(非管理区域)での火災 にかかる原因並びに再発防止対策について(PDF 1.79MB) *1 指示文書 「柏崎刈羽原子力発電所6号機タービン建屋における火災について(指示)」 (平成20・12・08原第24号) 平成20年12月8日、原子力安全・保安院(以下「当院」という。)は、 貴社柏崎刈羽原子力発電所6号機タービン建屋において火災が発生し、 負傷者を生じた旨の連絡を受けた。11月22日の同発電所7号機のタービ ン建屋火災に引き続き本件火災が発生したこと、さらには本件火災の発 生から消防機関への通報までおよそ1時間を要したことは、誠に遺憾で ある。 このため、当院は、貴社に対し、本件火災の発生及び通報に時間を要 した原因並びに再発防止対策について、貴社における調達管理のあり方 も含めて徹底した検討を行い、速やかに報告することを求める。 *2 ワイヤ送給装置 半自動溶接で使用するワイヤ(溶材)を送り出す装置 *3 トラッキング現象 電極間にたまった埃が湿気を吸うことによって、電極間で火花放電が繰 り返されて部品の絶縁部分が炭化・発熱・発火すること。 *4 火災発生の連絡 発電所構内(発電関連設備)において、119番通報の手段が限られてい る場合は、中央制御室(当直長)に連絡し、当直長より119番通報する。
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