平成19年4月23日
東京電力株式会社
当社・福島第一原子力発電所5号機(沸騰水型、定格出力78万4千キロワット)
は定格熱出力運転中のところ、平成19年2月18日、炉心スプレイ系*1A系の定
例試験において、系統に必要な流量は確保できましたが、本来自動で閉止する1
弁(以下、「当該弁」)が全閉状態にならないことが確認されたため、保安規定
に定める「運転上の制限*2」を満足していないと判断いたしました。このため、
運転上の制限を満足しない場合に要求される措置として、残りのB系統および低
圧注水系*3の機能が健全であることを確認いたしました。
その後、当該弁の駆動装置などの調査を行い、2月19日、再度当該系統の確認
運転を実施したところ、系統に必要な流量は確保できましたが、当該弁は全閉状
態に至らなかったことから、プラントを手動停止して、当該弁の分解点検および
原因調査を実施することといたしました。
(平成19年2月18日、19日お知らせ済み)
当該系統は、プラントの停止にともない原子炉が冷温停止*4状態となったこ
とから、2月21日、「運転上の制限」が要求される範囲外へ移行しました。
当該弁の調査の結果、弁体(弁棒に上下2枚を重ねて取り付け)のうち下側
(水が入ってくる側)の1枚が弁棒から外れていることが確認されました。
当該弁は、弁体の外側に設けられた突起部(以下「弁体ガイド」)が弁箱内の
溝(以下「弁箱ガイド」)に沿って動作しますが、弁体ガイドと弁箱ガイドにこ
すれによる摩耗が確認されたことから、両ガイド間の隙間を測定し、設計寸法か
ら評価したところ、両ガイド間の隙間がある値以上に拡大すると、弁棒から弁体
が外れる可能性*5があることがわかりました。
このことから、外れた弁体と弁棒が接触して、当該弁が全閉状態にならなかっ
たものと推定いたしました。
当該弁の両ガイド間の隙間が拡大した原因は、過去の定期検査における分解点
検の際に、両ガイドの調整や手入れに関わる管理が十分に行われていなかったた
め、両ガイドのこすれにより摩耗が進展したことによるものと考えております。
対策として、当該弁については弁箱の手入れを行った後、弁体の交換を行いま
す。また、類似弁のうち重要な弁については、分解点検時における管理基準*6
を設け、適切に対応してまいります。
なお、プラントの起動操作は、当該弁の健全性を確認した後、準備が整い次第、
開始する予定です。
以 上
別添
・添付資料1:5号機 炉心スプレイ系および当該弁概略図(PDF 260KB)
・添付資料2:5号機 弁体が外れた推定メカニズム(PDF 103KB)
*1 炉心スプレイ系
非常用炉心冷却系の一つで、冷却材喪失事故時、炉心の過熱による燃料
および被覆管の破損を防止するため、炉心上部より冷却水をスプレイし冷
却するための系統(A系、B系の2系統ある)。
*2 運転上の制限
保安規定では原子炉の運転に関し、「運転上の制限」や「運転上の制限
を満足しない場合に要求される措置」等が定められており、運転上の制限
を満足しない場合には、要求される措置にもとづき対応することになる。
*3 低圧注水系
非常時に原子炉水位を維持する系統(A系、B系の2系統ある)。
*4 冷温停止
原子炉モードスイッチが「燃料取替」または「停止」位置で、かつ原子
炉水の温度が100℃未満の状態。
*5 弁棒から弁体が外れる可能性
寸法測定の結果では弁開度約30〜40%位置で両ガイドの隙間が最大6.9mm
あり、設計寸法で評価した結果、6.5mm以上で弁体が外れることが確認され
た。
*6 管理基準
弁体ガイドと弁箱ガイドの隙間を管理する値。
(参考)INES評価
本事象は、原子力安全・保安院による国際原子力事象評価尺度(INES)
暫定評価では、0−(安全上重要でなく、安全に影響を与えない事象)とされて
おります。
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