平成19年4月23日
東京電力株式会社
当社・福島第一原子力発電所4号機(沸騰水型、定格出力78万4千キロワット)
につきましては、平成19年2月11日、第21回定期検査のため原子炉の停止操作を
行っていたところ、発電機の停止にともない発電機からプラントの機器に供給す
る電源の隔離作業を行った際、操作を誤ったため原子炉給水ポンプが停止し原子
炉水位が低下しました。
このため、原子炉水位の回復操作を実施したところ、原子炉水位が上昇して
「原子炉水位高」の警報が発生し、主タービンが自動停止しました。
また、本事象にともない事象発生前には約10パーセントであった原子炉出力が、
一時的に約6パーセントから約23パーセントまで変動しました。
その後、原子炉水位が安定したため、引き続き原子炉の停止操作を継続し、原
子炉は安全に停止しました。
これによる外部への放射能の影響はありません。
(平成19年2月11日お知らせ済み)
調査の結果、電源の隔離作業のために、運転員がしゃ断器の電源盤内に設置さ
れている2種類の制御電源スイッチ*1の内の1つを「切」操作した際、本来操
作すべきであったスイッチに識別できる表示がなかったこと、および当該電源盤
内に2種類の制御電源スイッチが設置されていることが運転員に明確に示されて
いなかったことから、本来操作すべきスイッチではなく、もう一方の「制御電源」
と表示されたスイッチを誤って操作していたことが判明いたしました。
今回の誤操作により、主タービンの自動停止および原子炉出力の変動が発生し
たメカニズムは、以下のように推定いたしました。
(1)スイッチの誤操作により中央操作室に電源の異常を示す警報が発生した
ため、中央操作室の運転員の指示により、現場の運転員は誤操作した当
該スイッチを復旧した。
(2)当該スイッチを復旧した際、運転中の電動駆動原子炉給水ポンプ*2(A)
の制御回路が、当該ポンプ(A)を停止させる信号を発信したため、当
該ポンプ(A)が停止した。
(3)当該ポンプ(A)が停止したことにより原子炉水位が低下し、原子炉へ
の給水を増やすために、電動駆動原子炉給水ポンプの流量調節弁が全開
状態となった。
(4)原子炉水位を回復させるために当該ポンプ(A)を再起動したが、流量
調節弁が全開であったことから、モータに過電流が流れ当該ポンプ(A)
が停止した。これにともない予備機の当該ポンプ(B)が自動起動した
が、同様に流量調節弁が全開であったことから、モータに過電流が流れ
たため当該ポンプ(B)も停止した。
(5)流量調節弁の開度を調整した後、再度、当該ポンプ(A)を手動で起動
し原子炉水位を回復させたが、水位の上昇が早かったため、水位が「原
子炉水位高」のレベルに到達したことにより、運転中の主タービンが自
動停止した。
(6)当該ポンプの起動・停止にともない給水量が変動したこと、および原子
炉冷却材温度が変動したことから、原子炉出力が変動した。
対策として、当該電源盤内の2種類の制御電源スイッチについては、明確に識
別できるようスイッチ名称を表示するとともに、電源盤の扉には制御電源スイッ
チの配置図を掲示いたします。
また、当該電源の隔離作業に使用する手順書に「制御電源スイッチが2つある
ため注意する」旨を明記いたします。
なお、当該ポンプの制御回路については、制御電源スイッチの誤操作の影響に
より、当該ポンプを停止させることがないような回路に変更いたします。
以 上
*1:2種類の制御電源スイッチ
・今回誤って操作したスイッチ
当該しゃ断器の「入」「切」を制御する回路だけでなく、電源から受
電するその他の機器のしゃ断器を制御する回路にも通電するための大本
のスイッチ。
・本来操作すべきであったスイッチ
当該しゃ断器の「入」「切」を制御する回路に通電するためのスイッ
チ。
*2:電動駆動原子炉給水ポンプ
プラントの低出力(起動および停止時)状態において、原子炉へ給水す
るためにモータによって駆動するポンプで、2台設置されている。
(参考)INES評価
本事象は、原子力安全・保安院による国際原子力事象評価尺度(INES)暫
定評価では、0+(安全上重要でないが、安全に影響を与え得る事象)とされて
おります。
添付資料
・福島第一原子力発電所4号機 系統概略図、電源および制御回路概略図(PDF 202KB) |