【後編】東京2020オリンピック・パラリンピックを支え、
そして皆さまの生活を支えるために
2021/07/29
2021年7月23日、1年間の延期を経てついに開催された東京2020オリンピック・パラリンピック。会場等へ電力を供給する設備の安定的な運営で大会を支える東京電力の中でも、とりわけ多くの会場や関連施設を担当するのが東京電力パワーグリッド上野支社です。各担当者が心境を語る2回シリーズ、今回はその後編として、現場での保守業務に携わる3人の声をお届けします。
※今回の取材は大会開催前に実施しました。
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東京電力パワーグリッド
上野支社 地中送電保守グループ
鶴田 翔太
2015年入社。川崎支社で超高電圧(27万5,000ボルト)の地中送電保守業務に携わる。2019年から江東支社に異動し、従来の超高電圧送電に加え、6万ボルトの配電保守業務やグループ運営業務にも携わる。2020年より現職。
好きなスポーツは、小学校から今も続けている野球。また高校時代はアームレスリングにも熱を上げていた。
超高電圧の「送電線」を守る
「送電線」と「配電線」の違いについて、ご存知ない方もいらっしゃいますよね。私が主に担当しているのは前者の送電線で、これは発電所から変電所へ電気を送る線のことを指します。これに対して、配電線はその先。変電所からご家庭や企業、今回であれば競技場や関連施設へと送る線のことで、前回登場した齋藤や、この後登場する柳田が担当しているのはこちらになります。
送電線には6万6,000ボルト~27万5,000ボルトという非常に高い電圧の電気が通っており、その多くは地中深くに敷設されています。ただ、今大会に向けて新たに敷設した線の中には、比較的浅い場所を走っているものもあります。私たちの役割は、それらの保守を行うこと。送電線に沿って巡視を行い、近隣で工事が行われるようなら情報を共有して注意を促します。万が一漏電や地絡(電気回路が地面に接触し、大地に電流が流れる事)が発生した場合は速やかに復旧作業を行い、送電を回復するというミッションを課せられています。
未知の領域に挑戦できる喜び
私自身がこの業務にアサインされたのは2020年末。以来、通常の送電保守業務と並行して、大会に向けた特別態勢づくりに取り組んできました。どこにどれだけ人員を割くか。復旧作業に使用する資材をどう確保し、どこに保管しておくか。万全の準備のために、考えることは尽きませんでした。前例がない取り組みのため手探りの部分も少なくありませんでしたが、未知の領域に挑戦できることは楽しいですね。本番に向けて一歩ずつ前進している感覚、次第に態勢の全体像が形作られていく感覚があって、ワクワクしながら取り組みを続けています。ここで得た学びはそのまま、大会後の自分にとって、そして送電保守の部門にとって大きな財産となり、お客さまの生活を支える日々の業務にフィードバックできると確信しています。
とはいえ、それは目の前の大会を無事に支えてこそ。最後まで何事もなく、そして「万が一」何かがあっても選手や関係者の方々が気付きもしないようすばやく対応して閉会の日を迎えられるよう、力を尽くしていきたいですね。
東京電力パワーグリッド
上野支社 変電保守グループ 保守リーダー
新里 真弘
1992年入社。上野支社の墨東制御所(当時は墨東総合制御所)へ配属され、変電保守担当となる。以降、江東変電所や江戸川制御所、上野制御所などでも経験を積み、2018年より現職。
学生時代は水泳部に所属し、現在は年に一度地元のマラソン大会に出場。今回の大会では野球やサッカーの観戦を楽しみにしている。
いくつもの「予想外」を乗り越えて
私の担当は変電保守。すなわち、管轄エリア内の変電所の監視や制御といった運営業務と、それらが正常に機能する点検・修理などの保守業務を行っています。オリンピック・パラリンピック対応としてはこれらに加え、さまざまな工事を実施しました。複数の競技場への電力供給を行う台場変電所の新設工事をはじめ、監視カメラの設置や、選手村など関連施設に電力供給する送電線の保護リレー(電気事故発生を感知する装置)の更新工事なども実施。何度となく予想外のイレギュラーが発生しましたが、その都度仲間と相談し、協力会社の方々と力を合わせて乗り越えてきました。
中でも印象的なのは、台場エリアにある変電所の変圧器搬入計画を立てていたときのこと。変圧器はかなり重量があることから、想定していた搬入方法では問題があり信号機移設・街路樹撤去・路面の補強工事を急遽決定。そのぶんスケジュールはタイトになりましたが、最終的には無事、搬入と据え付けを行うことができました。
開催延期の間に飛躍的に向上した対応レベル
大会期間中、私たちのグループは各拠点に待機して事故などのトラブルに備えます。大会開催の延期中にも、これまでの運用ルールや人員・機材配置などを更に改善し、しっかりと準備を整えてきました。
また、東京電力ではコロナ禍のリモートワーク推奨にあたり、様々なコミュニケーションツールが全社的に導入され、これが現場対応にも大きなメリットを生みました。情報共有にはチャットやテレビ会議のアプリを導入して効率化を図り、今やメンバー全員が使い方をマスター。これは大会本番でも、そして今後の私たちの業務遂行のためにも大いに有益な変化だったと思っています。
今はただただ、無事に終わってほしい。オリンピック・パラリンピックはたしかに注目度も高く、その支え手としてしっかり取り組んでいかなくてはならないのは間違いありませんが、言うまでもなく他の業務もおろそかにしてはならない。2020年当初において大会期間中に計画をされていた点検・工事は大会前後にスライド。2021年に変更となったことから更にスライドを実施しました。大会終了後にまたこの大きな山が待っています。しっかり向き合い、責務を果たしていきたいと考えています。
東京電力パワーグリッド
上野支社 墨東制御所配電保守グループ 保守チームリーダー
柳田 孝介
1997年入社。上野支社の上野制御所配属となり、以降、銀座支社、土浦支社、東京総支社などで一貫して配電保守のキャリアを築く。2020年10月より現職。
体を動かすのが好きで、休日にはロードバイクを楽しむ。オリンピックの自転車競技にも注目するほか、子どもとともにテレビでサッカーを応援することも楽しみにしている。
手探りの中でのルールづくり
家庭や企業など、実際にご利用になるお客さまに電気を届ける配電線や引き込み線。その保守業務や、寄せられる要請への現場対応などが私たち配電保守グループの役割です。私はその取りまとめ役として、メンバーへの指揮を主に担当。オリンピック・パラリンピックの期間中は担当エリア内にある競技場や関連施設への配電保守業務も我々が担うことになるので、そのための準備を進めてきました。
やるべきことの軸は通常業務と共通しているものの、さまざまな機関が特別態勢で臨む中では、それに応じた業務フローが必要になります。もちろんマニュアルなどなかったので、メンバーとともに必要となる動きを想定しながらルールを作りあげていきました。事前に現場に赴いて確認しなくてはならないことも多かったのですが、入域そのものを厳しく制限している施設も少なくありませんでした。許諾を得るための手続きや指定された日程に合わせるための調整なども、地味ながら予想以上に高いハードルでした。
イレギュラーが促す成長とサービス品質の向上
大会主催者からの要請により、会場への配電業務は一定以上の技術・技能を持った者が務めることになっています。この基準を満たすために担当者は一年以上かけて訓練を重ね、技術と技能の向上を目指してきました。大きな目標に向かってレベルアップに努めるメンバーの姿勢は他のメンバーにも刺激を与え、組織全体としての技術の底上げにもつながったように感じます。過去の地震や台風への対応を振り返っても、イレギュラーに向き合うことで成長のきっかけをつかみ、お客さまへのよりよいサービス提供につなげてきました。今回のことも一過性の取り組みではなく、しっかりと仕組み化して残していきたいですね。
電力の安定供給という使命はどんなときも変わりはありませんが、大会が近づくにつれて、世界が注目するイベントを支える責任の重みが実感できるようになってきました。準備は整い、後は実行するだけ。振り返ったときに誇れる夏にできるよう、ミッション完遂に力を尽くしたいと思っています。
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