東京2020オリンピック・パラリンピックを
会場で支える彼らが背負うもの、胸に秘めるもの
2021/08/06
いよいよ幕を開けた東京2020オリンピック・パラリンピック。当社は、会場等への電力供給設備の安定的な運営を通じて、東京2020オリンピック・パラリンピックに貢献しています。前回・前々回お送りした会場外での取り組み(上野支社)に続き、今回はまさに競技が行われる会場で運営を支える3人のスペシャリストが登場します。
※今回の取材は大会開催前に実施しました。
東京電力ホールディングス株式会社
東京オリンピック・パラリンピックプロジェクト統括室
(公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会駐在)
課長
田村 崇樹
1988年入社。栃木支店の配電課(当時)に配属されて以来、配電業務に半生を捧げてきた。2020年3月より現職。
小学校から社会人実業団まで剣道を続けていた他、バレーボールや野球、ソフトボールなど社内のさまざまな同好会に参加。現在はもっぱら週末にゴルフの練習に精を出す。
東京電力ホールディングス株式会社
東京オリンピック・パラリンピックプロジェクト統括室
(公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会駐在)
主任
高木 崇
1996年入社。埼玉支店の川口営業所(当時)に配属となり、配電保守業務を担当。その後、配電線地中化の設計・工事監理を中心に、田村同様、一貫して配電業務に携わってきたプロフェッショナル。2021年6月より現職。
小中学校では野球に熱中し、高校生になってからはサーフィンに没頭。社会人になってからも休日のたびに海に通い詰めていた。
東京電力ホールディングス株式会社
東京オリンピック・パラリンピックプロジェクト統括室
(公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会駐在)
主任
小泉 喬弘
2001年入社。千葉支店(当時)内の変電部門でキャリアをスタートする。その後、福島第一原子力発電所で品質安全関連業務等の経験も積み、直近では千葉建設センターで変電設備の設計・工事監理を担当するなど、変電業務のエキスパート。2021年4月より現職。
学生時代は部活動で硬式テニスやバスケットボールに打ち込み、スノーボードも嗜んでいた。就職してからも趣味としてバスケットボールは続けてきたが、コロナ禍で活動自粛中。
本来業務領域の「先」で
高木「私たち東京電力の仕事は、ご家庭や企業さまなどに電気を届けること…というのは皆さんご存知かもしれませんが、厳密に言うと電気を引き込む建物の『手前まで』を担っています。そこから先は建設業者さまや設備業者さま、そしてお客さまご自身の領域。しかし、今回は大会組織委員会からの要請により、例外的にその『先』の領域、すなわちお客さまの設備である各競技場や関連施設内でのお仕事を受託しています」
小泉「当社が担当しているのは26会場で、これまでは主に大会開催にあたって新設する配線工事の支援を行ってきました。私と高木はウエイトリフティングおよびパワーリフティング競技が行われる東京国際フォーラムを担当しています。私たちのように実際に会場に詰めて業務にあたっているメンバーは、べニュー・エネルギー・プロジェクト・マネージャー(以下VEPM)と呼ばれています」
田村「私は複数の会場を統括し、統括する会場の業務支援を行っています。私のような役割の者は、エネルギー・ゾーン・マネージャー(以下EZM)と呼ばれ、私自身は東京国際フォーラムの他、大井ホッケー競技場、バレーボールや車いすバスケットボールの競技会場となる有明アリーナ、そして選手村の4施設を担当しています。他のEZMと密に連携し、全体として着実に準備が進められるよう調整を図りながら、各会場のVEPMとともに業務に取り組んでいます」
多岐にわたる関係者とともに
田村「私がこの職場に着任したのは2020年の3月のこと。配電一筋の会社人生で横文字のポジションを拝命したのは初めてで、辞令をもらったときは驚きましたね。7月開催に向けた大詰めの段階のはずだったのですが、ご存知の通りその直後に開催延期が決まり、各会場に配置が進んでいた設備を撤去することが当初の主な業務となりました。その後、さまざまな変更を踏まえて再設計を行い、工事の手配を支援してきたのがこの1年間になります」
高木「世界規模のイベントですから、とにかく関係者が多岐にわたります。大会組織委員会が設定した大会運営に必要な担当分野ごとの機能のうち、私たちはエネルギー関連を担います。しかし、各機能の業務は密接に絡み合っていて、何かにつけて調整が発生する。私が経験してきた配電線の地中化業務でも、行政や他社など多くの関係者との協業が必要な点は同じで、思った以上にその経験が活かせているように思います」
小泉「同感です。私は現場業務のほか、行政対応でそれを感じました。各種の許認可を得るための書類を作成し提出する際は、変電設備の申請で培った経験が役に立ったと思います。しかしながら、これまで取り扱ったことがない機器が多く、しかも英語表記の書類がほとんどであり、辞書や翻訳アプリなどを駆使して読み解くことが必要でした。窓口の方に受理していただけたときには本当にホッとしましたね」
異文化でも共通する技術者としての想い
田村「会場ではさまざまな外国の技術者と一緒に働いていますが、言語も文化も大きく異なるメンバーの間でコミュニケーションを深めていく必要がありました。通訳者や翻訳ツールを介してやりとりを繰り返し、関係が深まるにつれて、技術者としての共通点も見えてきました。やっぱりお互い、培ってきた技術にプライドがあるんですよね。それを理解し、尊重し合いながら、一つの目標に向かう仲間として何を優先すべきかを模索できるチームになってきたように思います。仕事の話だけしていても、なかなかそこまでたどりつけないんですよ。雑談を交わしながら、気兼ねなく本音を語り合える関係が育まれていくんだと思います」
高木「本来なら食事の席などで距離を縮められたりもするのでしょうが、コロナ禍ではそれもままならない。そうした中でも関係が築けてきているのは喜ばしいことですね」
小泉「会場で準備を進めているさまざまな企業や大会関係者との関係性が深まってきているのを感じています。誰もが大会の成功を目指して一丸となっている実感があり、自分もその一員としてミッションを完遂しなくてはという思いが日増しに強くなってきています」
刻まれる東京電力スピリットで
田村「“万が一”を起こさないためにすることと、その“万が一”が起きてしまったときのために備えること。明かりの絶えない大会を実現するため、できることはすべてやって本番を迎えたい。私たちは大会期間中に各会場や大会組織委員会のエネルギー・オペレーション・センターに詰めることになりますが、何事も起きず大会の進行を見届けられることを目指して、今は準備に全力を注ぎたいと考えています」
小泉「アサインされたときは驚きましたが、やはりオリンピック・パラリンピックの運営に携われるのは本当に貴重な体験ですからね。競技中は会場に詰めているのであまり家族と一緒に観戦することはできませんが、その一端を担っていたことを家族に胸を張れるような仕事をしたいですね」
高木「今回東京電力グループから集まったEZMとVEPMはそれぞれに本職があり、培ってきた技術・文化もさまざまです。しかし、全員に共通していることはその道のプロであること。従事する誰もが、ここで課せられる責任の重みを知っているし、それを完遂することへの強い使命感を抱いている。こうした仲間とともに大きなチャレンジに臨めることは、とても幸せなことだと感じています」
田村「冒頭で高木も申し上げましたが、今回は確かに本来業務から一歩踏み込んだ、これまで経験したことの無い領域でのミッションです。しかし、私たちはこれまでも、必要とされるところに電気を届けることに全ての力を注いできました。私たちには創業から70年の歴史の中で、先輩方から脈々と受け継がれた膨大な知識・ノウハウや磨き続けた技術、そして何より、スピリットが刻み込まれています。大会組織委員会から支給頂いたユニフォームを着てはいますが、TEPCOのスピリットを胸に、このミッションを成し遂げたいと考えています」