資源獲得に向けた挑戦
2016/08/19
LNG上流プロジェクトの一員として存在感を発揮し、
日本のエネルギーに貢献する
「バユ・ウンダン・ガス田開発プロジェクト」「ダーウィンLNGプロジェクト」
2003年より東京電力フュエル&パワーが取り組んできたガス田開発プロジェクト(2016年7月よりJERAに事業統合)。単に燃料を購入するだけでなく、燃料を生み出すという事業にも挑戦し、エネルギーバリューチェーン全体に関わっていこうという狙いはどこにあるのか──現地オーストラリアに駐在する原田社員がお伝えします。
東京電力フュエル&パワー株式会社
JERA Darwin Investment (旧TEPCO Australia 7/1よりJERA統合により社名変更)
原田勇翔
「上流事業」に挑戦する理由
バリューチェーン全体を見渡せる知見が資源獲得競争の優位性を生む
日本は、天然資源に乏しい国です。その日本で人々の豊かな暮らしを実現するためには資源の輸入が必要であり、それは低廉かつ安定的であることが求められます。
現在、私が携わっている「バユ・ウンダン・ガス田開発プロジェクト」および「ダーウィンLNGプロジェクト」は、JPDA(東ティモールとオーストラリアの共同開発エリア)で産出した天然ガスをオーストラリアでLNG化して日本に送り届けるものです。その量は年間370万t。発電量に換算すると約280億kWhで、日本全体の電力をおよそ11日間まかなえる量に相当します。
いまや国内火力発電の主力燃料であるLNG。当社が初めてLNGを輸入したのは1969年、当時はアラスカから運んでもらったものを日本の発電所で買い受けるというスタイルでした。その後、産地で受け取り、自社運航のLNG船で輸送する方式に転換するなど、徐々に事業領域の拡大と調達形態を多様化。そして、当プロジェクトにおいてガス田開発、パイプライン輸送、ガス液化という上流事業への参画を果たしました。
こうして日本のエネルギー企業がLNGバリューチェーン全体に関わり、資源の産出から利用まですべてを見渡せる知見を持つことは、世界の資源獲得競争の中でとても重要な意味を持ちます。必要な量の資源を、できるだけ安く、安定的に得ていくためには、ただ口を開けて待つわけにはいきません。当プロジェクトでは、LNG総生産量のほぼ全量を日本向けに確保していますが、燃料調達を優位に進められることは、上流事業に参画する大切なメリットの一つです。
プロジェクトを推進する力
マーケットの深い理解をもち、判断力の高さ、現地パートナー企業との利害調整能力の高さが現場での価値を高める
ガスの生産から液化、販売、自社船によるLNG輸送、さらに電気事業による消費までのLNGバリューチェーンに一貫して携わることで、経済性・弾力性・安定性に優れた燃料調達を実現する──当社が上流事業に挑戦する狙いはそこにあります。また、得られる情報やノウハウ、経験値によって、当社の業務全体にプラスの影響をもたらすことが期待されています。
当社では世界各地から燃料を調達していますが、幅広く、そして多様なプロジェクトに関わることで集まってくる情報は、企業活動の貴重な裏付けとなります。マーケットへの深い理解は、事業投資においても優良案件なのか、適正条件なのかの判断基準につながり、収益にも直結します。そうして当社の財務基盤が強化されることは、資源価格の変動に対する耐性を高め、電力価格の安定化に寄与することになります。
日本のエネルギーのために、日本の豊かで安定した暮らしのために──。
私自身はプロジェクトに関わってまだ2年ですが、いつもそうした想いを胸に仕事に臨んでいます。
もっとも、プロジェクトは複数の企業での協働ですから、出資者である当社の目的を追い求めるだけでは、パートナーとして認められません。当社は、操業自体には関わらないノンオペレーターとしてプロジェクトに参画していますが、現場において発生する様々な課題に他社にない視点を提案しながらパートナー企業等とより強固な関係を築いていくことは、自分の仕事の重要な側面だと捉えています。そして、得られる信頼関係は、当社の今後の活動にかけがえのない価値をもたらすものと信じています。
プロジェクト参画で得るもの
一人の発言が大きな影響を及ぼす環境で、複雑な株主間契約、上流事業特有の税制やロイヤリティ、技術的情報など深く学ぶ毎日
パースでの私は、主にコマーシャル業務を担当しています。ですが、JERA Darwin Investmentは社長以下12名の小所帯。一人がいくつもの役割をこなさなければならず、私も関連企業トップとの交渉から社内の事務処理まで、幅広い業務に携わっています。一方、一人の考えや発言が会社としての判断に大きく影響しますので自分の判断にはこれまで以上に強い責任を持つよう心がけています。
赴任当初は(今でも大変ですが)技術的な専門用語などが分からず、専門家同士の会話になかなかついていけずに苦労しました。しかし、刻々と変化するプロジェクト情報をタイムリーに得て、オペレーターや各社の代表と直接コミュニケーションを取っていく中で、上流事業のダイナミズムを肌で感じられるのは、とても貴重な経験です。また、複雑な株主間契約、上流事業特有の税制やロイヤリティ、技術的な課題と背景など、ひとつのプロジェクトを多角的かつ深く学べることにも大きな魅力を感じています。最近は、プロジェクトを通して多くの専門家の刺激を受け、自分もより知識・専門性を高めて、さらに大きな価値を生み出せるようになりたいとの気持ちがますます強くなっています。
そんな中、プロジェクトをスムーズに進めていくためには、パートナー同士の理解と協力が非常に大切であることを肌で感じています。プロジェクトに参画している各社の置かれた状況、企業カルチャー、考え方などには違いがあり、ときには意見が対立することもあります。そうした状況でいかに自分たちが重要だと思っていることを各社に理解してもらい解決策にきちんと反映させていくか──。全社が納得して進める方法を見つけられるよう、自分たちの考え方や意見を常に発信し、自分たちが当たり前と考えることも、なぜそう考えるのかの背景から筋道を立てて説明することを大切にしています。
さらなるステップへ
目では確かめることのできないガス資源開発にゼロから挑戦して得てきた経験と知見が、次なる可能性を切り開く
当社がプロジェクトに正式参画したのは2003年6月ですが、それ以前の検討段階からプロジェクトに関わってきた現JERA Darwin Investment社長の西澤は、すべてがゼロからの挑戦だったと言います。
ガス田上流事業は、地下に埋蔵する、目では確かめることのできない状態のガス資源を開発する事業です。技術的な複雑さに加え、海外法制・税制の下での事業運営でもあり、各方面での専門家のアドバイスを受けながら、対外的な交渉はおろか社内検討や説明においても、また自身が理解するにも、日々勉強を重ねながら手探りで進めてきたそうです。実は当初、パースのオフィスを契約したのも、西澤本人だったというから驚きです。
そうやってプロジェクトを育ててきた西澤は、パートナー各社のトップレベルとダイレクトに何でも議論・相談ができる関係を構築しており、特に重要な意思決定の際にはこうした信頼関係が大きな意味を発揮しています。
2012年当社は、ガス田規模で当プロジェクトの2倍超という「ウィートストーンLNGプロジェクト」への新たな参画を実現しました。この成果には、これまで当プロジェクトで培ってきたLNG上流事業への経験と知見が大きな役割を果たしています。2016年7月からは、TEPCO AustraliaとCEPCO AustraliaがともにJERA傘下となり、統合オペレーションに向けたさまざまな検討も途上です。当プロジェクトもある意味、第二の立ち上げ期となることから、私も新たな仕組みを構築していく際の心構えなどを学びながら、より低廉で安定した燃料供給を実現できるよう、プロジェクトのさらなる発展に貢献していきたいと思います。
LNGプラントがあるのはパースからおよそ2600km離れたオーストラリア北部の街・ダーウィン。バユ・ウンダンガス田は、その先の洋上約500kmにあり、ダーウィンまでパイプラインでガスを輸送しています。ダーウィンは3度ほど訪れていますが、洋上の採掘施設にはまだ行ったことがないので、ぜひあの大きさを目の当たりに興奮したいと楽しみにしています。
私は2011年の入社後2年間、「多摩カスタマーセンター」でお客さまからの電話お問い合わせに対応していました。その後、燃料部に異動し、LNGの新規調達に携わる中で上流事業やLNG市場全体に興味を持ちはじめたころ、現部署への異動を告げられ、とても興奮したことを覚えています。
現在、オフィスは「世界一美しい都市」と称されることもあるオーストラリア西部のパースにあります。この街は都市圏人口150万人、オーストラリアで4番目の都市です。近年、周辺海域におけるガス田開発のために世界中から多くの企業が集まり、液化天然ガス(LNG)プロジェクトのメッカとも言われています。