理想のスマートライフがここにある
学生と一緒に向き合った“やさしい未来の家”

2016/09/15

お客さまが“便利に、快適に暮らす”ためのスマートライフ事業に携わる東京電力エナジーパートナーの四方田さんと河合さん。彼らは、産官学が連携した実証事業「エネマネ(=エネルギーマネジメント)ハウス2015」で、芝浦工業大学大学院で建築工学を学ぶ学生たちと出会い、“学生が考える、将来の家”づくりに協力した。将来を担う学生とエネルギーのプロフェッショナルが描く“豊かな暮らし”を実現する未来の住宅とは、いったいどんなものなのか。プロジェクトで重要な役割を担った学生の千葉さん、五寶さん、林さんも交え、5人で語り合ってもらった。

ガマンや負担が増えてしまっては意味がない。目指すは “快適性”を損なわず、電気を上手に使う省エネ

東京電力エナジーパートナーが考える“小さなエネルギーで、豊かに暮らす”──スマートライフとは、手間をかけずに快適な住環境で暮らし、健康で豊かな生活を送ること。そんな“豊かな暮らし”を実現する住宅とは。

河合「省エネはとても大事なこと。とはいえ、それで手間が増えたり、生活が窮屈になってしまっては意味がありません。住宅は快適であることが最優先です。必要なエネルギーは使いつつも、使用量を少なく…今回のエネマネハウスでも見られるように、断熱や風通しなど構造自体に工夫をし、さらにエコキュートなど省エネ機器を導入することで、使うエネルギーを上手に配分できればいいと思っています」

省エネを実現しつつ、生活の質も高める。それが、今後の住まいづくりの基本というわけだ。建築工学を学ぶ学生たちは、どう考えているのだろう。

千葉「省エネを意識するあまり、熱中症など健康被害が出ては元も子もありません。健康と快適さ、省エネ性を両立させることが大切だと考えています。そして、1軒の家だけで考えても省エネには限界があるので、地区、地域にエリアを拡大し、例えば、電気を多く使用する時間帯を住宅と商業施設で分散させるなど、調整の工夫も必要だとわかってきました」

「エネマネハウス2015」で最優秀賞を受賞した芝浦工業大学の主力メンバーたち。今回、プレゼンボードや設計した“継ぎの住処”の模型を見ながらコンペを振り返る。手前から、建築設計研究室で建築意匠を学ぶ五寶さん、建築生産マネジメント研究室の林さん、建築環境デザインや次世代型建築設備を研究する千葉さん。全員、芝浦工業大学 大学院 理工学研究科で建設工学を専攻する修士2年生だ。

家庭でエネルギーがどのように使われているか。座学では学べないことを知り、家づくりに反映できた!

「エネマネハウス2015」には、5大学が参加し、学生と企業が協力して“エネルギー”“ライフ”“アジア”をテーマに、先進的な技術や新たな住まい方を競い合った。

最優秀賞を受賞した芝浦工業大学設計の“継ぎの住処(つぎのすみか)”は、自然エネルギーを最大限に生かした設計、集合住宅としての発展性、デザイン性などで高い評価を獲得。また、健康的に暮らすための快適性という面においても、さまざまな工夫やこだわりが見て取れる。

「快適性を高めるだけなら、機器に頼れば可能ですが、それだと消費エネルギーやコストは増える一方です。そうではなく、窓の配置を工夫し、開口部を設けて風通しをよくし、夏場は熱気を逃がす、冬場は熱を蓄えるなどさまざまな工夫を施すことで、快適性と省エネ・省コストの両立を実現しています」

「採光や発電、蓄熱、断熱などの面においても、デザイン担当の五寶とシミュレーションを繰り返し、家の構造自体で自然エネルギーを最大限に活用し、快適さを実現できる、なおかつ美観を損なわないことを目指しました」

“継ぎの住処”1/20の模型。高床式住居のような二層構造にし、壁面に木材をあしらいアジアンテイストに仕上げた。床下の通気口から熱を外に逃がしたり、窓の配置の工夫で室内の風通しをよくしたり、直射日光を遮るルーバー(細長い板に隙き間を開け、平行に並べたもの)を用い、自然光を取り入れる工夫が施されている。また、外壁には蓄熱・調湿・断熱など環境性能に優れた大判木質パネルを採用。屋上の太陽光集熱パネルで熱を集め、階下の太陽光発電パネルとエコキュートで発電・蓄電してお湯を沸かす、床下に全熱交換器を設置するなど省エネ設計の工夫も多数。

“継ぎの住処”は戸建てではなく集合住宅だ。そこには、さまざまな家族構成の住人が住み、多様なライフスタイルがある。そんな異なる属性の人々が暮らす集合住宅でエネルギー・エフィシエンシー(効率化)効果を高めるには、どういう工夫が必要なのだろう。

四方田「ひとつの住戸ではなく、集合住宅全体で電気をムラなくならして使うことができれば、効率的に電力供給設備を利用することになります。そのためには、従来の電気と、自然エネルギーによる電気などを上手く組み合わせることが大切です。それを実現させるための具体的方法を、勉強会を通じて学生の皆さんと議論してきました」

千葉「家庭で実際にエネルギーがどのように使われているか、電気の使用量の計測方法、電気料金の算定方法などは、授業で学べません。例えば集合住宅の場合、お湯を沸かす時間帯も戸別に違います。その場合、太陽光発電による電気をうまく使って、使用量を平準化すればいいのですが、そういう電気の使い方のコツを学べたので、とても役に立ちました」

二層構造の住戸を組み合わせた集合住宅の模型。「自宅で使うエネルギーを限りなく少なく」というコンセプトのもと、集合住宅で、しかも設計的に難しい鉄骨造+木造の大型建築に挑んだ意欲作だ。前年大会参加時に取り入れた蓄熱・調湿・断熱性能などの最新の設備システムや優れた構法、素材や、「自然エネルギーを活用したゼロ・エネルギー・ハウス」「人と人とのつながりがある住居」というコンセプトも継承している。さらにその名には「世代を超えて家を受け継ぎ、終の住処になってもらいたい」という思いも込められている。(写真提供:芝浦工業大学)

エネマネハウスが都市的なスケールに拡大すれば、将来的な可能性も広がる!

学生と企業がコラボして理想的な住まいづくりを追究したことで、これまでと異なる視点や新たな気づきはあったのだろうか。

五寶「私は建築意匠専攻ですが、これまでは理想ばかりを追求してデザインしてしまうことが多く、設備や電気の使われ方を意識することはありませんでした。今回、“より自然に快適な空間を作る”ということを追究し、美観を考えながら環境的なシステムを住宅に組み込む貴重な経験ができました」

五寶「将来的に建売や集合住宅、商業施設でもこういった自然エネルギーを活用してエネマネをしたゼロエネハウスの建築物が増え、都市的なスケールに広がっていけば、住まいづくり、街づくりにおいて、大きな未来への可能性を感じます」

普段から仕事として暮らしとエネルギーに深く関わっている四方田さんと河合さんはどうだろう。

河合「まず何よりも“健康に暮らすこと”を最優先に考え、そのうえで使用するエネルギーから最大の効果を得る。結果的に“使う人にも、社会にもメリットがあるはず”という、彼らの視点、アプローチは新鮮でした」

四方田「これまで、設備のシステムやエコキュートのような機器をお客さまに提案してきましたが、それを使うのは人であり、その先には暮らしがある。学生たちを見て、改めて“暮らし”に重点を置くことの大切さを再認識させられましたね」

いまある設備や機器でも実現できるスマートライフ。リフォームや家づくりの参考にしてほしい!

ここまで未来の家の話をしてきたが、実は今回ご紹介したエネマネハウスは現在すでに存在する技術のみの組み合わせでできている。エネマネハウスは手の届かない“夢”ではなく、十分に実現が可能なものなのだ。しかし、いくら快適で便利で省エネに貢献できるとわかっていても、「コストをかけて、そこまでやる必要があるのか」とためらう消費者もいるだろう。

河合「省エネ設備や機器を用いることで、お客さまの手間も省力化されますし、家自体の価値も上がります。だから、かけたコスト以上の満足できる暮らしを手に入れることができると私たちは考えています。メリットを上手にお伝えし、お客さまの“スマートライフ”の実現に努めていきたいですね」

四方田「現在ある機器やシステムを使うだけでも、こんなにもスマートライフが実現できると今回のエネマネでわかりましたので、今後もハウスメーカーさんなどを通じてシステムや機器、電気の効率的な使い方などを提案していければと思います。その結果、お客さまのリフォームや家づくりの参考になり、快適な生活を広めていくことができたら嬉しいです」

いまあるもの、便利な設備や機器をちょっと取り入れて、快適な暮らしを手に入れる──スマートライフの第一歩は、まずは私たち消費者が意識をちょっと変えること、そして、正しい知識を学んでいくところから始まっていくのだろう。

横浜のみなとみらいに実際に建築された“継ぎの住処”。耐久性、耐震性など強度も考慮され、鉄骨造に木のパネルを張り付けて空間を構成している。二層構造で床下に空間を設け、必要に応じて居室を増改築できるよう拡張性、長寿命化が考えられている点もユニーク! プロジェクトは2015年4月に開始され、6カ月の製作期間と2,500万円の建築費用をかけて、10月に完成。来場者による一般投票部門で1位になるなど、高い評価を受けた。しかし学生たちは、床面からの冷気やむき出しの太陽光パネルなど、まだまだ環境性能的にも美観的にも課題は残ったと語る。(写真提供:芝浦工業大学)

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