資料館
それぞれのフィールドにおいて、自然との共生や環境保護活動などに精力的に取り組んでいらっしゃるオピニオンリーダーの方々との対談内容をご紹介いたします。
今回のゲストは、気象予報士の木原実さん。テレビの天気予報などでお馴染みですが、最近は子どもエコ教室のキャスターとして、子どもたちに環境問題を伝える活動もされています。
また、学生時代からたしなんできたという落語は玄人はだし。エコを題材にした落語を披露していただきながら、身近な環境問題についてお話をおうかがいしました。
<気象予報士>木原 実(きはら みのる)
1960年、東京都出身。気象予報士。幼少期のころから落語をたしなみ、高校時代に演劇を始める。
日本大学芸術学部演劇学科卒業後、レポーターや声優を務めながら小劇場活動を続行。86年より日本テレビの天気コーナーを担当し、95年に気象予報士の資格を取得。現在は気象予報士としての活動のほか、俳優業やナレーター業もこなす。
- 堂に入った“二酸化亭炭素”さんのエコ落語
- 木原
- 私は以前から落語が好きで、素人芸ですが「二酸化亭炭素」という高座名も持っているんですよ。
- 竹内
- 待ってました!エコ落語!
- 八五郎
- いきなり長屋のエコ委員なるものになっちまったんですが、ご隠居、エコってのはとどのつまり何なんでしょうかね?
- ご隠居
- まぁいろいろ問題があるが、今一番懸念されているのは地球温暖化だな。
- 八五郎
- なんですか、地球温暖化ってのは?
- ご隠居
- 簡単に言やぁ、地球が暖かくなっちまっていろいろ問題が起こるってことだ。
- 八五郎
- 暖かくなるなら御の字じゃないですか。うちのかみさんのリウマチも出なくならぁ。
- ご隠居
- いやいや。今、地球温暖化によって北極海の氷がどんどん融けていて、シロクマが大変困っておるんじゃ。シロクマを助けようと、世界中の人ががんばっておるんじゃ。
- 八五郎
- あれ?先だって長屋のばあさんが山菜採りに行ったら、クマに襲われてエラい目に遭ったじゃないですか。そのあと猟友会の連中が鉄砲を持って山に行き、真っ黒いクマを撃ち殺してきましたよ。
- ご隠居
- まあまあ、そういうクマもいる。でもシロクマは保護しなければいけないんだよ。
- 八五郎
- おかしいじゃないですか。なんで黒いクマは殺してよくて、白いクマは守らなきゃいけないんです?白いのは守って、黒いのは殺す?じゃあパンダはどうするんですか?ありゃあ半殺しですかい?
- ご隠居
- よしなさいよ。ややこしい人だねぇ。
- 究極のエコ社会“江戸”を熱く語る木原さん
- 竹内
- (大笑)エコ落語。楽しくてそして深いですね!
- 木原
- お粗末さまでございます。
- 竹内
- とんでもない。八五郎さんの言葉が胸に痛かったです。「環境をまもる」と言う言葉がありますが、結局私たちは「あるべき環境」を、人間に都合がいいかどうかで判断しているんでしょうね。
- 木原
- 生き物にいいも悪いもないけど、人間の都合でいいものと悪いものに分けたりね。環境についてもそう。ずいぶん傲慢だな、と思います。でも、それが人間なんです。人間が幸せに生きていくという大前提があって、そのために地球環境とどこで折り合っていくかを探るのが非常に難しい。人間の「業」を認めるところから、環境問題への対策はスタートすると思います。落語という形をとって伝えているのは、立川談志さんがおっしゃったように、業を考えるのに一番良い方法だと思うからなんです。それに、落語の舞台となる江戸時代はものを本当に大切にする循環社会で、ある意味、究極のエコ社会だったんです。
- 竹内
- 私も江戸時代の社会にとても興味を持っているのですが、学べることはとても多いですよね。
- 木原
- 着物一つとっても感心しますよ。洗い張りをするときに、袖口だったところをつなぎ目にして折り込めば、擦り切れていてもわからなくなるから、新品のように 着られる。これ以上洗い張りもできないところまで着古したらおむつにして、それでもボロボロになったら焚きつけにする。その灰だって肥料になるわけですか らね。
- 竹内
- 確かに!「去年の服は着られない」なんて言っている今の私たちを見たら、ご隠居さんも八五郎さんも目を剥くでしょうね。
- 木原
- ほんとですよ。食べ過ぎちゃったからスポーツジムに行ってダイエットなんて、変な話です。昔から「腹八分目、医者いらず」って言うじゃないですか。なのになぜ、バイキング料理なんていうものがあるんですか?僕はバイキング大好きなんですけどね(笑)
- 竹内
- バイキングが悪いのではないんでしょうね。自分に適した一人前を選べるものとしてバイキングをとらえられると良いのでしょうが、とりあえずたくさん食べなきゃ損というような気持ちになるのは人間の性なのか業なのか。それをやめなければいけませんね。
- 木原
- 最近は、パーティで余った料理を持ち帰り用のドギーバッグに詰めてくれるレストランも出てきているようです。残さなくて済むというのは、ありがたいですよね。
- 竹内
- 格好よくそういうことができる世の中にしていきたいですね。
- 都会のオアシス、芝離宮で青空対談
- 竹内
- ところで木原さんとお会いするのは2回目ですね。東京電力が、世界環境デーを機に、銀座でミニチュア版の尾瀬を再現したのを取材に来ていただいたんですよね。
- 木原
- ええ、本物の水芭蕉があって感動しました!
- 竹内
- 尾瀬のふもと、群馬県片品村農協から直接送ってもらったんです。かわいい水芭蕉とのちょっとしたふれあいが、生活を見直すきっかけになったらいいなと思って。木原さんは、お子さんともできるだけ自然の中で遊ぶようにしたそうですね。
- 木原
- 子どもが小さいころは、できる限りキャンプに連れていったりしました。初めて釣りをさせたら、最初は怖がりました。でも、泳いでいる魚を自分で釣って、それをさばいて、炭火で焼いて食べるところまで体験させたら、「また釣りたい」と言い出しました。一連の体験で、命をもらうことを学んだんですよね。ただ、僕自身のことを言えば、ミニチュアの尾瀬は見ましたが、ほんとうの尾瀬にはまだ行ったことがないんです。
- 竹内
- あら、いやだ!(笑)ぜひ今年はいらしてください。今日はどうもありがとうございました。