お話を伺ったのは・・・
創業1804年(文化元年)、日本では11代徳川家斉の時代、ヨーロッパではナポレオンが皇帝に即位したころから続く「株式会社斎藤商店」の代表取締役 齋藤孝弘さん。地域に根ざしたお米専門店「斎藤商店」を営み、地元"白河産"を中心としたお米販売を続ける傍ら、現代の多様性・地域性を踏まえ「次代のお米専門店」の形態を模索。オリジナルブランド「たさぶろう米」販売のほか、おにぎり屋「たさぶろうおむすび」の運営などを行っている。
知っトク情報が満載!おいしいふくしま
お米と牛肉
~お米編~
第3話産地のプロに聞く!ふくしまのお米のおいしい話
【掲載年月日:2019年12月9日】
品質、おいしさともにピカイチの福島県産米。そんな「ふくしまのお米」の魅力をもっともっとくわしく知りたい!…ならば、産地で聞くのが一番! そこで今回は、福島県白河市でお米の販売業を営む「斎藤商店」の店主、齋藤孝弘さんにインタビュー。「ふくしまのお米」をとことん知り尽くした"お米のプロ"に、福島県産米のおいしさの理由や、今注目の品種など、その魅力をたっぷり教えていただきました。
お話を伺ったのは・・・
創業1804年(文化元年)、日本では11代徳川家斉の時代、ヨーロッパではナポレオンが皇帝に即位したころから続く「株式会社斎藤商店」の代表取締役 齋藤孝弘さん。地域に根ざしたお米専門店「斎藤商店」を営み、地元"白河産"を中心としたお米販売を続ける傍ら、現代の多様性・地域性を踏まえ「次代のお米専門店」の形態を模索。オリジナルブランド「たさぶろう米」販売のほか、おにぎり屋「たさぶろうおむすび」の運営などを行っている。
食味ランキングにおいて2年連続で特A獲得数日本一となり、このところとても注目されている「ふくしまのお米」。ところが、近年は全国的に気候の変化もある中で、今年は大きな台風による水害もあり、米作りにも厳しい環境が続いています。現地で販売業を営み、農家の方々の声も身近に聞いている齋藤さんに近年の作柄について伺うと……。
「とくに3年前から米づくりには厳しい気象が続きました。一昨年は夏場の低温、昨年は逆に高温、そして今年は7月が低温で8月は高温になったりと異常気象続きです。その中で、令和元年産の福島米は等級検査(※)による1等米の比率が9割以上と好成績でした。農家の方々が地域の条件に合わせた米づくりを続けてきたからでしょうね」。
※農産物検査官によって行われる、目視による品質検査のこと。一定量の玄米に対し、整った形をしている米つぶの割合(整粒歩合)や虫食いの有無、透明感などの項目を検査し、1等・2等・3等・規格外に分類します。1等は検査結果が最も優秀な等級で、整った形をしている米つぶの割合が70%以上のものを指します。
「ふくしまのお米」の品質の高さは、福島の地の風土・気候とともに地道に努力を続けてきた農家の方々の苦労の賜物。さらに、福島県のお米は高温障害が少ないことも、ツヤツヤとして見た目がよい米粒が生まれるポイントなのだとか。「米粒は成長期に高温にあたると白濁してしまい、食味も悪くなるんですよ。白濁した米粒は精米の過程ではじかれてしまいます。品質の良さも福島県産米の特徴です」と齋藤さん。
「浜通り」「中通り」「会津」と3つのエリアに分けられる福島県。それぞれ気候に特徴があり、異なるおいしさのお米がとれることは第1話でも述べたとおり。では、斎藤商店がある「白河市」産のお米のおいしさも地域の風土が何か関係しているはず!
齋藤さんによると「斎藤商店がある白河市は中通り、その南部に位置しますが、夏でも朝晩は涼しい。熱帯夜とはほぼ無縁の地域です。昼夜の寒暖差が大きいので、お米が甘く育つ。これが最大の特徴ですね。阿武隈川の源流にあたるので、ミネラルが豊富な水にも恵まれています」とのこと。白河のお米の甘さを引き出しているキーワードは、まさに「寒暖差」だそうです。
実際に、斎藤商店で扱っているお米を見ていくと……。
特筆すべきは下記の4品種。
「白河産コシヒカリ」
粒は小さめですが、弾力があって、噛むほどに甘味を感じます。見た目もツヤツヤとして、美しいお米です。粘りと甘味のバランスがよく、香りが強くて芳醇。濃い味付けの料理にも負けないお米です。
「白河産ひとめぼれ」
コシヒカリより粒が大きく、独特のやわらかさがあります。冷めたときにも、しっかりと粘りが感じられることが魅力です。お米そのものの味があっさりとした印象なので、おかずの味を引き立ててくれます。
「天のつぶ」
福島県が15年かけて品種改良したオリジナル米です。粒が大きくて、食感はややかため。冷めても風味が落ちず、粘りが少なめなので、おにぎりやお弁当用にぴったり。そのほか、天丼やかつ丼などの丼物にしてもベチャっとせず、米粒の食感が楽しめます。
「ミルキークイーン」
コシヒカリから生まれた低アミロース米なので、冷めてもかたくなりにくく、モチモチした食感が楽しめます。
斎藤商店では白河産のコシヒカリをはじめ、福島県のオリジナル品種のお米などを幅広く扱っています。品種ごとに食味や見た目が異なり、それぞれに魅力があります。
福島県にはオリジナル品種として「天のつぶ」や「里山のつぶ」があり斎藤商店でももちろん取り扱っていますが、齋藤さん自身が最近注目している品種は「ゆうだい21」。
「宇都宮大学で開発された『ゆうだい21』は、福島県天栄村の生産者グループががんばって栽培している品種で、まだ生産量は多くはありません。ですが、今年から福島県の産地品種銘柄(農産物検査法に基づいて農林水産省が都道府県毎に指定する銘柄。米穀検査に合格すると、産地・品種と産年の証明を取得できる。)となったので栽培農家も増えてくると思います。冷めても粘りや味が落ちないのが特徴で、柔らかめの食感が好きな方におすすめのお米です」と齋藤さん。一言でお米といっても、まだまだ知らない品種や味わいがありそうです。
また、齋藤さんのイチ押しは7年前から「斎藤商店」で販売している、やわらかく炊ける玄米(コシヒカリ)。「玄米の表面を独自の技術で研磨加工しているのが特徴です。通常、玄米は“おむすび”になりにくいといわれますが、うちの玄米は表面を磨くことで水が浸透しやすく、やわらかく炊きあがるので簡単におむすびにできます。手軽に炊けるうえ、玄米にはミネラルや食物繊維が豊富に含まれているので、特に女性に人気があります」。
11月30日・12月1日に「第21回 米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」が開催されました。この国内外最大のお米のコンクールで、福島県・天栄村の「ゆうだい21」が審査員から甘みや粘りを評価され、国際総合部門の最高賞である金賞に見事輝きました。金賞に輝く前からその品質を評価していた齋藤さんの鑑識眼は流石です。
新たな品種への目配りを欠かさず、チャレンジ精神旺盛な齋藤さん。2011年の東日本大震災以降、お米づくりや販売の環境に変化があった中で、持ち前の芯の強さで本当に困難な時期を乗りきり、現在に至ったとのこと。
斎藤商店の創業は文化元年(1804年)、さまざまな商売を営んできましたが、戦後は米穀集荷・卸に専念してきた歴史があります。齋藤さんは、「弊社では主に県南地域の220軒の農家から直にお米を仕入れています。卸し販売が中心で、10年前からネット販売を始めて個人の顧客層も広げてきました。震災以降、離れていったお客さんもいますが、代々お付き合いのある人たちは変わらず取り引きをしてくださって勇気づけられました。」と、周囲の方々への感謝の気持ちを大切にしています。
そんな地域に根付いた商いをしてきたからこそ、白河高原の土壌や水、気候とともに暮らし、米作りを心より愛する農家の方々と直接契約。「白河産コシヒカリ」や「白河産ひとめぼれ」、「天のつぶ」をはじめ生産者が大切に育てたお米を、齋藤さんの目で厳選したプライベートブランド「たさぶろう米」の名で製品化し、「ふくしまのお米」の魅力を全国に発信しています。「『たさぶろう(太三郎)』は縁起のいい先々代の名前からとったんですよ」と齋藤さん。
さらに、「『スマート農業』(ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して、農作業の省力化や精密化、作物の高品質化などを図る新しい農業のこと)に取り組んでいるIT企業と業務提携していく計画もあります。農地にドローンを飛ばして害虫が発生している場所などのデータをとって、AI(人工知能)に蓄積している。このデータを活用すれば、ピンポイントで病害虫の駆除などができるので、結果として農薬の使用量を減らすことができます。農薬は農家自身もできれば使いたくない。減農薬米という付加価値をつけて販売もできますから」と、今求められていることに対するアグレッシブな姿勢を崩しません。
そんな齋藤さん、そして斎藤商店は、人にも環境にも優しい「ふくしまのお米」を日夜努力を欠かさず、消費者のみなさんに届け続けています!
「おにぎりがお米の味を一番実感できる」と以前から考えていたことから、斎藤商店では12年前からおにぎり屋「おむすび たさぶろう」を開いています。冷めても風味が落ちないのは「ふくしまのお米」ならでは!
店で出すおにぎりは、一つひとつ心を込めて手でむすんだもの。また、米だけでなく、塩や海苔など素材にもこだわっています。塩は淡路島でつくられている、にぎると塩味が甘味に変わる自然塩の藻塩。海苔は時間が経ってもとろけない有明産。「私にはこのおにぎりとハクサイの漬物だけでご馳走ですね」と齋藤さんも太鼓判!「ふくしまのお米」を、そのもののおいしさが味わえるおにぎりで、ぜひ、食べてみてください。
知れば知るほど、魅力が尽きない「ふくしまのお米」。産地の努力と愛情がギュっと詰まったおいしさを、家庭でぜひ味わってみてくださいね! 次回(第4話)は、そんな「ふくしまのお米」を味わえる都内の飲食店をご紹介。料理のプロを魅了する、その実力に迫ります!