福島第二原子力発電所における緊急安全対策に関する経済産業省原子力安全・保安院への報告について
平成23年5月20日
東京電力株式会社
平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴う津波の影響で、当社・福島第一
原子力発電所で発生した事故および放射性物質の漏えいでは、発電所の周辺にお住
まいの皆さまをはじめ、福島県民の皆さま、さらに広く社会の皆さまに大変なご心
配とご迷惑をおかけいたしまして、心より深くお詫び申しあげます。
当社は、4月21日に経済産業大臣から受領した福島第二原子力発電所の緊急安全
対策に関する指示文書*に基づき、津波により3つの機能(交流電源を供給する全
ての設備の機能、海水を使用して原子炉施設を冷却する全ての設備の機能、及び使
用済燃料プールを冷却する全ての設備の機能)を喪失したとしても、炉心損傷及び
使用済燃料の損傷を防止し、放射性物質の放出を抑制しつつ原子炉施設の冷却機能
を回復するとともに、現在の原子炉の冷温停止状態を維持することを目的とした福
島第二原子力発電所における緊急安全対策の実施状況等についてとりまとめ、本日、
経済産業大臣へ報告いたしました。
【1.緊急安全対策の実施】
I.福島第一原子力発電所の事故を踏まえて、上記の3つの機能を喪失した場合に
おける対応手順を策定しました。
(1)全交流電源喪失時の電源の確保
(2)原子炉の注水・冷却機能強化
(3)淡水水源の確保
(4)原子炉格納容器の減圧機能の確保
(5)使用済燃料プールの注水・冷却機能強化
(6)原子炉・使用済燃料プールの除熱機能強化
II.津波の影響で3つの機能が喪失した場合でも、炉心損傷及び使用済燃料の損傷
を防止し、放射性物質の放出を抑制しつつ原子炉施設の冷却機能を回復すること
を目的とした以下の緊急安全対策について、平成23年5月19日までに実施しまし
た。
(1)緊急点検の実施
・緊急時対応のために必要な機器及び設備の外観・機能確認を実施
(2)緊急時対応計画の点検及び訓練の実施
・緊急時の対応計画(マニュアル)の整備
・緊急時を想定した対応訓練の実施
(3)緊急時の電源確保
・全交流電源喪失時に原子炉へ注水するポンプ等に電力を供給するための手
順の策定、ならびに必要な電源車等や機器類の配備
(4)緊急時の最終的な除熱機能の確保
・原子炉への注水を維持するための代替注水手順の策定、ならびに必要な資
機材の配備
・代替注水の水源(復水貯蔵タンク)の枯渇防止のための水源確保手順、な
らびに消防車等による水源確保手順の策定
・全交流電源喪失時においても、原子炉格納容器の減圧機能を確保するため
の手順の策定
(5)緊急時の使用済燃料プールの冷却確保
・使用済燃料プールへの注水を維持するための代替注水手順の策定、ならび
に必要な資機材の配備
(6)発電所の構造等を踏まえた当面必要となる対応策の実施
・安全上重要な設備が設置されている建屋の浸水防止策(築堤、土嚢積み)
の実施
・構内道路等のアクセス性を確保するための重機類の配備(瓦礫撤去)
【2.今後の対策】
原子炉の冷温停止状態を確実に維持することを目的とした以下の対策を進めてま
いります。
I.安全上重要な設備が設置されている建屋の水密化等
安全上重要な設備の水没を防止するため、機器搬出入口や人員出入用扉等を閉
止もしくは水密化する。
II.大型電源設備の設置
原子炉および使用済燃料プールの冷却機能の確保に必要な設備への電源供給の
信頼性向上を考慮した大型電源設備を配置する。
III.その他
緊急時の情報収集や連絡に万全を期すため、環境モニタリング設備、通信設備
の増強を行う。
上記に示す対策に加え、さらなるリスク低減の観点から、築堤の拡大、淡水水源
の追加設置、代替冷却源の設置、ならびに大型発電設備に対する緊急用電源盤の追
加などについて、実施要否の検討を行います。
また、今後、事故の原因の分析や評価を行う過程で、福島第二原子力発電所に反
映すべき事項が確認された場合には、速やかに必要な対策を講じてまいります。
福島第二原子力発電所では、平成23年3月15日までに全号機において冷温停止と
なっておりますが、引き続き、プラントの冷温停止状態の信頼性向上を目指してま
いります。
以 上
添付資料:福島第二原子力発電所における緊急安全対策の概要(PDF 323KB)
参考:福島第二原子力発電所における緊急安全対策について(実施状況報告)
その1(PDF 5.36MB)
福島第二原子力発電所における緊急安全対策について(実施状況報告)
その2(PDF 4.33MB)
福島第二原子力発電所における緊急安全対策について(実施状況報告)
その3(PDF 3.25MB)
福島第二原子力発電所における緊急安全対策について(実施状況報告)
その4(PDF 4.01MB)
福島第二原子力発電所における緊急安全対策について(実施状況報告)
その5(PDF 2.65MB)
* 指示文書
「福島第二原子力発電所の緊急安全対策の実施について(指示)」
(平成23・04・20原第20号)
原子力発電所の緊急安全対策については、平成23年福島第一・第二原子力発電所
事故を踏まえた他の発電所の緊急安全対策の実施について(指示)(平成23年3月
30日付け平成23・03・28原第7号)に基づき、福島第一原子力発電所及び福島第二
原子力発電所以外の原子力発電所に対して、その実施を指示したところです。今般、
福島第二原子力発電所が冷温停止となり、安定した状態に至っていることを踏まえ、
同発電所に対しても緊急安全対策の実施を指示します。
緊急安全対策は、津波による電源機能等喪失時においても放射性物質の放出を抑
制しつつ原子炉施設の冷却機能を回復することを可能とするための対策であり、貴
社が緊急安全対策に適切に取り組み、原子力安全・保安院がこれを検査等により確
認することにより、津波による電源機能等喪失時における炉心損傷等を防止し、原
子力災害の発生を防止することとします。
つきましては、津波が発生した場合における原子炉施設の保全のための活動を行
う体制の整備及びこれに伴う保安規定の整備を要求事項とする平成23年3月30日付
け改正後の実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則に従い、下記の緊急安全
対策に直ちに取り組むとともに、当面の間、津波が発生した場合においても現在の
原子炉の冷温停止状態を維持するために必要な緊急安全対策の実施状況を平成23年
5月20日までに報告することを求めます。
記
津波により3つの機能(交流電源を供給する全ての設備の機能、海水を使用して
原子炉施設を冷却する全ての設備の機能及び使用済燃料貯蔵槽を冷却する全ての設
備の機能)を喪失したとしても、炉心損傷及び使用済燃料の損傷を防止し、放射性
物質の放出を抑制しつつ原子炉施設の冷却機能の回復を図るために、緊急安全対策
として、以下の対策を講じること。
(1)緊急点検の実施
津波に起因する緊急時対応のための機器及び設備の緊急点検の実施
(2)緊急時対応計画の点検及び訓練の実施
交流電源を供給する全ての設備の機能、海水により原子炉施設を冷却する全
ての設備の機能及び使用済燃料貯蔵槽を冷却する全ての設備の機能の喪失を
想定した緊急時対応計画の点検及び訓練の実施
(3)緊急時の電源確保
福島第二原子力発電所内の電源が喪失し、緊急時の電源が確保できない場合
に、必要な電力を機動的に供給する代替電源の確保
(4)緊急時の最終的な除熱機能の確保
海水系施設又はその機能が喪失した場合を想定した機動的な除熱機能の復旧
対策の準備
(5)緊急時の使用済燃料貯蔵槽の冷却確保
使用済燃料貯蔵槽の冷却及び使用済燃料貯蔵槽への通常の福島第二原子力発
電所内の水供給が停止した際に、機動的に冷却水を供給する対策の実施
(6)福島第二原子力発電所における構造等を踏まえた当面必要となる対応策の実
施
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