プレスリリース 2010年

福島第一原子力発電所6号機の点検に伴う停止に関する調査結果について

                             平成22年3月12日
                             東京電力株式会社

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<概要>
(事象の発生状況)
 ・運転中の福島第一原子力発電所6号機において、平成22年2月24日、タービン
  建屋内の配管より放射性物質を含む水の滴下ともや状の蒸気が発生しているこ
  とを当社社員が発見いたしました。
 ・プラントの運転に支障はありませんでしたが、安全に万全を期すため、計画的
  にプラントを一旦停止し、点検、補修を実施するとともに、原因を調査するこ
  とといたしました。
                (平成22年2月25日3月3日お知らせ済み)
(調査結果)
 ・漏えいした配管に設置しているオリフィス下流の直管部に、長さ約34mm、幅約
  2mmの貫通孔(1箇所)を確認しました。
 ・オリフィス下流の直管部の内側表面には、侵食の特徴的な模様である階段状の
  模様を確認しました。
(推定原因)
 ・オリフィス下流の直管部に蒸気と蒸気が凝縮した水滴が流れたことで、オリフ
  ィス下流の直管部が侵食されて貫通孔が生じ、漏えいしたものと推定いたしま
  した。
(対策)
 ・オリフィス直管部の肉厚を厚いものに取り替えるとともに、配管の侵食が進み
  にくい構造にいたしました。
 ・次回定期検査において、オリフィスの取り付け位置を変更することといたします。

詳細は以下のとおりです。
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1.事象の発生状況
  当社福島第一原子力発電所6号機(沸騰水型、定格出力110万キロワット)は、
 定格熱出力一定運転中のところ、気体廃棄物処理系*1の流量が増加傾向を示し
 ていたことから、当社社員が現場を調査したところ、平成22年2月24日午後3時
 47分頃、タービン建屋(管理区域*2)1階の主復水器付近の高圧タービンの常
 用系ラインの抽気ドレン配管*3から放射性物質を含む水の滴下ともや状の蒸気
 が発生していることを発見いたしました。
  漏えいした水は、タービン建屋地下1階の堰内の床面に溜まっており、漏えい
 量は約32リットル、放射能量は約1.2×10ベクレルでした。
  その後、気体廃棄物処理系の系統流量の増加に対する調査のために閉めていた
 非常用系ラインの抽気ドレン配管の弁を元の「開」状態に戻したことにより、常
 用系ラインの抽気ドレン配管からの水と蒸気の漏れは停止いたしました。
  この際、非常用系ラインの抽気ドレン配管の弁を閉めていたことにより、一時
 的に低下していた気体廃棄物処理系の系統流量が元の流量に戻ったことから、常
 用系ラインの抽気ドレン配管の漏えい箇所から主復水器内へ建屋内の空気が流入
 し、気体廃棄物処理系の系統流量が増加したものと推定いたしました。
  なお、空気の流入が増加した場合には、主復水器の真空度が低下する可能性が
 あることから、主復水器真空度および気体廃棄物処理系の系統流量について監視
 強化*4を図るとともに漏えい箇所の調査を行い、当該箇所の補修方法およびプ
 ラントの運転停止の必要性について検討することとしておりました。
  その後、主復水器真空度および気体廃棄物処理系の系統流量は安定していたこ
 とから、プラントの運転に支障はありませんでしたが、当該漏えい箇所は主復水
 器に接続されている配管であり、主復水器の真空度への影響が懸念されたこと、
 また当該漏えい箇所は放射線量が高い場所で運転中の点検が困難であったことか
 ら、安全に万全を期すため、計画的にプラントを一旦停止し、点検、補修を実施
 するとともに、原因を調査することといたしました。あわせて漏れた水の拭き取
 り清掃を実施することといたしました。
          (平成22年2月25日・公表区分III、3月3日お知らせ済み)

2.調査結果
  調査の結果、以下のことがわかりました。
  ・高圧タービンの常用系の抽気ドレン配管(以下、「当該ドレン配管」)を点
   検したところ、当該ドレン配管に設置されたオリフィス*5下流の直管部上
   面の周方向に長さ約34mm、幅約2mmの貫通孔(1箇所)を確認したこと。
  ・当該ドレン配管のオリフィス下流の直管部を切断して内側の表面観察を行っ
   たところ、貫通孔周囲に顕著な減肉が認められ、流体による侵食の特徴的な
   模様である階段状(ステップ状)の模様を確認したこと。
  ・一方、当該ドレン配管のオリフィス下流の直管部下面には、有意な減肉は認
   められなかったこと。
   また、当該ドレン配管のオリフィス上流の直管部とオリフィス上流側の配管
   およびオリフィス下流側の配管についても、有意な減肉は認められなかった
   こと。
  ・6号機は、第21回定期検査での点検作業を終えて平成21年6月8日より起動
   し定格出力に到達したのち、6月17日に手順書に準じて非常用系ラインの抽
   気ドレン配管の弁の閉操作を行ったところ、当該ドレン配管の上流に設置さ
   れたドレンポット*6の水位が高いことを示す警報が頻発するようになった
   ことから、6月18日より非常用系ラインの抽気ドレン配管の弁を開ける運用
   としていたこと。
  ・当該ドレン配管は、第21回定期検査において配管肉厚測定を行っており、特
   段異常は認められなかったこと。

3.推定原因
  調査結果から、以下のとおり原因を推定いたしました。
  ・非常用系ラインの抽気ドレン配管の弁を開けた状態では、当該ドレン配管に
   設置されているオリフィスの絞り穴の口径(直径8.5mm)より非常用系ライ
   ンの抽気ドレン配管に設置されているオリフィスの絞り穴の口径(直径16.2mm)
   が大きいため、非常用系ラインにより多くの凝縮水が流入し、当該ドレン配
   管に流れる凝縮水の量が減少した。
  ・このため、本来は凝縮水で満たされている当該ドレン配管内部に、蒸気の通
   過する空間が発生したことで、蒸気と凝縮水が混在した流体がオリフィスを
   通過する状態となった。
  ・オリフィス下流の直管部上面は、蒸気が吹き付けられて水の膜が形成されず、
   侵食しやすい状態となった。一方、オリフィス下流の直管部下面は、凝縮水
   による水の膜が配管表面を保護し、侵食しにくい状態だった。
  ・その結果、オリフィス下流の直管部上面には凝縮水が直接吹き付けられ、そ
   れが繰り返されたために侵食が進展し、最終的に貫通したことから、水と蒸
   気が漏えいしたものと推定いたしました。

4.対策
  今回貫通孔が確認された当該ドレン配管のオリフィス直管部については、従来
 のものよりもオリフィス直管部の肉厚が厚いものに取り替えるとともに、当該ド
 レン配管に凝縮水が流れやすくするため当該ドレン配管のオリフィスの絞り穴の
 口径を大きいもの(直径11.2mm)に変更いたしました。
  また、次回定期検査において、当該ドレン配管のオリフィスの取り付け位置を
 主復水器内部に変更し、漏えいが発生しないようにすることといたします。

5.今後の対応
  今後、準備が整い次第、原子炉を起動することといたします。

                                  以 上

*1 気体廃棄物処理系
    主復水器内の真空維持のため、主復水器内で凝縮できなかった放射性ガス
   を抽出して減衰処理し、排気筒から放出するための系統。

*2 管理区域
    放射線による無用な被ばくを防止するため、また、放射性物質による放射
   能汚染の拡大防止をはかるために管理を必要とする区域。

*3 抽気ドレン配管
    高圧タービンから蒸気ドレンを抽出して主復水器等へ導く配管。

*4 監視強化
    通常は主復水器真空度のデータの採取を行っているが、これに加え、気体
   廃棄物処理系の系統流量のデータ採取を行うこととした。

*5 オリフィス
    流量を制御するために、配管の途中に設けた絞り穴。

*6 ドレンポット
    高圧タービンの抽気配管で発生した蒸気の凝縮水が溜まる場所。

添付資料
・6号機高圧タービン抽気ドレン配管の系統概略図(PDF 12.8KB)オリフィス下流の直管部の貫通孔からの漏えいおよび空気の吸い込み状況図
                            (PDF 90.6KB)常用系ライン オリフィス近傍の侵食進捗 イメージ図(PDF 111KB)



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