プレスリリース 2009年

起動操作中の福島第一原子力発電所1号機における原子炉の手動停止に関する原因と対策について

                             平成21年4月14日
                             東京電力株式会社

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<概要>
(事象の発生状況)
 ・平成21年2月25日、起動操作中の当社福島第一原子力発電所1号機において、
  原子炉の圧力が高いことを示す警報が発生し、タービンバイパス弁が閉まって
  いたことを確認しました。その後現場を確認したところ、当該弁駆動部の連結
  部が外れていることがわかりました。
 ・原因調査を行うために、原子炉を手動で停止いたしました。
(調査結果)
 ・当該連結部のねじ込み部のねじ山が摩耗によりつぶれていたことがわかりまし
  た。
 ・模擬試験により、当該連結部を固定するゆるみ防止用ナットの締めつけが十分
  でない場合、ねじ込み部のねじ山が摩耗することがわかりました。
 ・当該連結部については、定期的な分解点検の対象ではなかったことがわかりま
  した。
(推定原因)
 ・ゆるみ防止用ナットの締めつけが十分でなかったことから、当該連結部のねじ
  山が摩耗して抜けたものと推定いたしました。
(対策)
 ・当該連結部を新品に交換し、ゆるみ防止用ナットで確実に締めつけました。
 ・今後、当該連結部を含むタービンバイパス弁駆動部の連結部について、定期的
  に分解点検を行い、その際ゆるみ防止用ナットの締めつけ状態も管理すること
  といたします。
詳細は以下のとおりです。
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1.事象の発生状況
  当社福島第一原子力発電所1号機(沸騰水型、定格出力46万キロワット)は、
 平成20年10月18日より第25回定期検査を実施し、平成21年2月21日より起動操作
 を行っていたところ、2月25日午前4時3分、原子炉圧力高などの警報が発生し、
 それまで開いていたタービンバイパス弁*1が閉まっていたことを確認いたしま
 した。このため、原子炉の状態を確認したところ、原子炉圧力が約7.1MPaまで上
 昇していたため、午前4時7分、保安規定第38条で定める「運転上の制限*2」
 を満足していないと判断いたしました。
  その後、制御棒の挿入操作ならびにタービンバイパス弁を開く操作を行うとと
 もに、主蒸気逃がし安全弁が自動で開いたことから、原子炉圧力が保安規定に定
 める6.91 MPa 以下になったため、午前4時25分、「運転上の制限」の逸脱から
 の復帰を宣言いたしました。また、原子炉出力は約13%から約0%になりました。
  その後、現場を確認したところ、タービンバイパス弁駆動部の連結部(以下、
 当該連結部)が外れていることがわかりました。
  原因を調査するため、午前8時49分、制御棒を全て挿入し原子炉を手動で停止
 いたしました。
  本事象については、原子炉の出力が5%を超えて変動したことから、法令で定
 める報告事象に該当するものと判断いたしました。
               (平成21年2月25日お知らせ済み・公表区分I)
  その後、外れていた当該連結部の状態について調査したところ、当該連結部の
 ねじ込み部のねじ山がつぶれて抜けていたことを確認いたしました。
                     (平成21年3月6日お知らせ済み)
  
2.調査結果
  調査の結果、以下のことがわかりました。
   ・当該連結部は、タービンバイパス弁駆動部の軸(差込側)が受け側にねじ
    込み式に差し込まれて接続されており、ねじ込み部を固定するためゆるみ
    防止用ナットで締めつける構造となっていたこと。
   ・差込側のねじ山が摩耗によりつぶれており、当該連結部が抜けていたこと。
   ・当該連結部は、定期的な分解点検の対象ではなかったことから、第2回定
    期検査時(昭和47年9月〜12月)に交換して以降、交換や分解点検をして
    いなかったこと。
   ・模擬試験により、当該連結部を固定するゆるみ防止用ナットを締め付けた
    状態では、ねじ込み部のねじ山に摩耗の兆候は確認されなかったが、締め
    つけが十分でない場合、ねじ込み部のねじ山の摩耗が確認されたこと。
   ・1号機のタービンバイパス弁駆動部には、当該連結部を含め20箇所の連結
    部があり、当該連結部の他にも1箇所のねじ込み部のねじ山に軽微な摩耗
    が確認されたこと。
   ・「運転上の制限」の逸脱からの復旧の過程で、タービンバイパス弁を開い
    て原子炉の圧力を下げるため、タービンバイパス弁のテスト用電磁弁*3
    を動作させた際、テスト用電磁弁の弁棒が1本折損していたこと。

3.推定原因
  第2回定期検査時(昭和47年)に当該連結部を交換した際、当該連結部を固定
 するゆるみ防止用ナットの締めつけが十分でなかったことから、タービンバイパ
 ス弁の開閉を繰り返すうちに、タービンバイパス弁駆動部の軸(差込側)のねじ
 山と受け側のねじ山が接触を繰り返し、差込側のねじ山が徐々に摩耗してつぶれ
 ていったものと推定いたしました。
  また、第2回定期検査時(昭和47年)の交換以降、当該連結部の交換や定期的
 な分解点検を行っておらず、当該連結部を固定するゆるみ防止用ナットの締めつ
 け不足を発見できなかったため、差込側のねじ山の摩耗を発見することができず、
 抜けたものと推定いたしました。
  なお、タービンバイパス弁のテスト用電磁弁の弁棒折損については、弁棒にお
 けるピン穴に引張り応力が繰り返し作用することで生じたき裂が進展し、折損に
 いたったものと推定いたしました。

4.対策
  当該連結部を新品と交換するとともに、当該連結部を固定するゆるみ防止用ナ
 ットを確実に締めつけました。
  今後、当該連結部を含むタービンバイパス弁駆動部の連結部について、定期的
 に分解点検を行い、その際連結部を固定するゆるみ防止用ナットの締めつけ状態
 も管理することといたします。
  なお、「運転上の制限」の逸脱からの復旧の過程で折損したタービンバイパス
 弁のテスト用電磁弁の弁棒については、新品と交換いたしました。

                                  以 上

*1 タービンバイパス弁
    原子炉圧力を調整するための弁で、タービンバイパス弁が開くと、原子炉
   で発生する蒸気が復水器に流れ、原子炉圧力を調整することができます。な
   お、送電系統の事故時などにタービンを保護するために、主蒸気を復水器に
   直接送る際にも使用する。弁は全部で8つある。
*2 運転上の制限
    保安規定では原子炉の運転に関し、「運転上の制限」や「運転上の制限を
   満足しない場合に要求される措置」等が定められており、運転上の制限を満
   足しない場合には、要求される措置にもとづき対応することになる。原子炉
   圧力については6.91 MPa以下であることが要求されている。
*3 タービンバイパス弁のテスト用電磁弁
    タービンバイパス弁個々の開閉テスト用の弁で、磁力により弁を開閉させ
   るもの。

添付資料
・添付1:概略系統図(PDF 132KB)
・添付2:外れた連結部の詳細(PDF 129KB)
・添付3:タービンバイパス弁駆動機構連結部の外れ事象の概要(PDF 41.4KB)
・添付4:タービンバイパス弁駆動機構連結部の外れ事象の推定メカニズム
                               (PDF 103KB)

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