平成20年5月27日
東京電力株式会社
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<概要>
(事象の発生状況)
5号機は5月23日から起動操作を開始しておりましたが、5月25日、高圧注
水系の作動試験を実施したところ停止したため、原子炉隔離時冷却系も作動試
験を実施したところ自動停止したことから、保安規定の要求にもとづき、午前
10時49分に原子炉を手動停止いたしました。
(経済産業省原子力安全・保安院への報告内容)
本件については、原子炉施設の故障による運転上の制限からの逸脱に該当し、
かつ、弁の点検など原因調査に時間を要するため速やかに復旧できないことか
ら、本日、国への報告対象事象であると判断し、報告いたしました。
(これまでの調査状況)
・高圧注水系を起動させた際、蒸気の流量を調整する弁付近より蒸気らしき
ものが発生したため、高圧注水系を手動停止いたしました。これにより蒸
気らしきものの発生は止まりました。
・原子炉隔離時冷却系を駆動する蒸気の量を調整する弁を動かす機構の一部
に、大きな隙間が確認されました。
(今後の予定)
引き続き、原因調査を行います。
(安全性、外部への影響)
本事象による作業員および外部への放射能の影響はありません。
詳細は以下のとおりです。
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1.事象の発生状況
平成20年5月25日、起動操作中の福島第一原子力発電所5号機において、高
圧注水系*1の作動試験を実施したところ自動停止したことから、保安規定で
定める「運転上の制限*2」から逸脱していると判断いたしました。
ただちに「運転上の制限」を満足しない場合に要求される措置である原子炉
隔離時冷却系*3の作動試験を実施したところ、同系統も自動停止したことか
ら「運転上の制限」から逸脱していると判断し、保安規定の要求*4にもとづ
き午前3時40分から原子炉の停止操作を開始し、午前10時49分に原子炉を停止
いたしました。
その後、午後1時45分、原子炉の圧力が低下し、保安規定による高圧注水系
と原子炉隔離時冷却系の動作要求がなくなったことから、「運転上の制限」の
逸脱から復帰いたしました。
(平成20年5月25日お知らせ済み・公表区分I)
2.経済産業省原子力安全・保安院への報告内容
本件については、原子炉施設の故障による運転上の制限からの逸脱事象に該
当し、かつ、弁の点検等、原因調査に時間を要するために速やかに復旧できな
いと判断したことから、本日「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」
にもとづく報告対象事象*5と判断し、報告いたしました。
3.これまでの調査状況
・5月24日午後11時30分頃、高圧注水系を手動で起動させたが、異常は発見
されなかったこと。
・5月25日午前0時50分頃、再度、高圧注水系を手動で起動させた際、「高
圧注水系タービントリップ」の警報が発生し、警報とほぼ同時に現場より、
蒸気の流量を調整する弁付近より蒸気らしきものが発生しているとの連絡
を受けたため、運転員が高圧注水系の手動停止操作を行い、蒸気らしきも
のの発生は止まったこと。
・5月25日にお知らせした際、高圧注水系は自動停止したとお知らせしたが、
「高圧注水系タービントリップ」の警報は、起動から所定の時間内に高圧
注水系を駆動する蒸気の止め弁が開かなかったために発生したものであり、
運転員が高圧注水系の手動停止操作をしたことで最終的に停止していたこ
と。
・原子炉隔離時冷却系は自動停止しており、原子炉隔離時冷却系を駆動する
蒸気の量を調整する弁を動かす機構の一部に、従来よりも大きな隙間が確
認されたこと。
4.今後の予定
引き続き、原因を調査いたします。
5.安全性、外部への影響
本事象による作業員および外部への放射能の影響はありません。
以 上
*1 高圧注水系
非常用炉心冷却系の一つで配管等の破断が比較的小さく、原子炉圧力が
急激には下がらないような事故時に、原子炉の蒸気を駆動源にしてポンプ
を回し、原子炉に冷却水を注入することのできる系統。
*2 運転上の制限
保安規定では原子炉の運転に関し、「運転上の制限」や「運転上の制限
を満足しない場合に要求される措置」等が定められており、運転上の制限
を満足しない場合には、要求される措置にもとづき対応することになる。
*3 原子炉隔離時冷却系
何らかの原因により、通常の原子炉給水系が使用不可となり、原子炉水
位が低下した場合等において、原子炉の蒸気を駆動源にしてポンプを回し、
原子炉の水位確保および炉心の冷却を行う系統。なお、本系統は非常用炉
心冷却系ではない。
*4 保安規定の要求
保安規定では原子炉圧力が1.04メガパスカル以上のときは高圧注水系と
原子炉隔離時冷却系が動作可能であることを要求している。
高圧注水系が動作可能でない場合は、原子炉隔離時冷却系の機能が健全
であることを、原子炉隔離時冷却系が動作可能でない場合は、高圧注水系
の機能が健全であることを確認することを要求している。
また、高圧注水系と原子炉隔離時冷却系のいずれも動作可能でない場合
は、24時間以内に原子炉を停止することを要求している。
*5 報告対象事象
「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」の第十九条の十七に
おいて、原子炉の事故故障等があった場合に経済産業大臣に報告すること
を定めており、第五号において「原子炉施設の故障(原子炉の運転に及ぼ
す支障が軽微なものを除く)により、運転上の制限を逸脱したとき」をそ
の対象としている。
添付資料
・高圧注水系系統概略図(手動起動試験時)、原子炉隔離時冷却系統概略図
(手動起動試験時)(PDF 22.8KB) |