平成19年4月26日
東京電力株式会社
平成19年3月31日、当社・福島第一原子力発電所の構内において、当社社員お
よび協力企業作業員が、放射線管理区域*1に設定された5号機圧力抑制プール
水貯蔵タンク*2のポンプ室内で、簡易型放射線計測器の校正用線源の変更*3に
ともなう点検を行っていたところ、同日午後6時頃、当該計測器に設定されてい
たベータ線放出率*4に誤りがあることがわかりました。
その後の調査で、当該計測器に設定されていたベータ線放出率が本来設定すべ
き値よりも小さく(100分の1に過小評価)、管理区域から退出する者の身体お
よび衣服の汚染測定が正しく行われていないことがわかり、4月3日、保安規定
に抵触していると判断いたしました。
なお、過去の定期測定の記録を調査した結果、当該計測器付近の床面に汚染は
検出されていないこと、および汚染レベルに応じた保護衣を着用し、退出時には
着替えを行っていることから、当該エリアからの退出時において、汚染はなかっ
たものと考えております。
(平成19年4月3日お知らせ済み)
【調査結果】
当該計測器における警報の動作履歴や、半年に一度実施する定期点検の記録な
どについて調査したところ、以下のことがわかりました。
・平成16年9月および11月に警報が動作したものの、この時期の定期測定の記録
から、当該モニタ近傍では汚染は検出されておらず、警報動作時の測定値*5
の100倍という高レベルの汚染はなかったことから、この時期のベータ線放出
率は正しいと判断した。
・平成16年12月の定期点検における警報動作試験*6では、警報設定値(0.8ベク
レル/cm2)*7で動作した実績がなかった。
・平成17年6月の定期点検における警報動作試験では、警報設定値での動作はな
く、警報設定値未満で動作した実績があり、動作した測定値を100倍すると通
常の警報動作試験時の測定値とほぼ一致しているため、この時期のベータ線放
出率が誤っていたものと判断した。
・平成17年6月以降は、警報の動作がなかった。
・当該計測器の定期点検で用いる手順書に、ベータ線放出率の設定方法の記載が
なかった。
以上から、ベータ線放出率を誤設定した時期は、平成16年12月の定期点検時で
ある可能性が高いと推定いたしました。
【原因】
ベータ線放出率の設定を誤った原因は、計測器の定期点検に用いる手順書にベ
ータ線放出率の設定方法の記載がなかったことから、当該計測器に入力するベー
タ線放出率を求める過程で計算を誤ってしまったものと推定いたしました。
なお、当該計測器と同型の計測器(計5台)について、ベータ線放出率、およ
び警報の動作履歴を確認したところ、すべての計測器で、ベータ線放出率の設定
が正しいこと、および定期点検時において警報設定値で警報が動作していたこと
を確認いたしました。
また、これまでベータ線放出率の設定誤りに気づかなかった原因は、以下のよ
うに推定しています。
・当社は、計測器の管理にあたり、当該協力企業が作成する点検記録(6ヶ月毎)
の確認を行っていたが、点検記録は、計測器への入力値および入力後に計測器
が表示する値とは異なる単位で記載する様式であったため、設定誤りを発見し
づらかった。
・当該協力企業は、平成17年12月以降、同一の作業員が定期点検時の警報動作試
験を実施していたが、入力データに変更がないことから、問題ないと思いこん
だまま継続的に定期点検を実施し、点検記録を作成していた。
【再発防止対策】
本件に係る再発防止対策として、以下を実施いたします。
・点検記録について、計測器への入力値および出力表示値をそのまま記載する様
式へ変更する。
・定期点検に用いる手順書に、ベータ線放出率の設定方法などを明記する。
・ベータ線放出率などの線源データの誤設定が原因となって保安規定に影響を与
える計測器については、定期点検後に、当社社員が点検記録の記載内容が確実
に設定されていることを確認する。
・当該協力企業に対しては、今回判明した点検作業の不備に関する特別監査を早
急に実施し、必要に応じて是正指導を行う。また、当社指導のもと、点検作業
者を対象に事例検討会を行い、再発防止の徹底を図る。
なお、当該エリアからの退出者について改めて過去の記録を確認した結果、汚
染レベルが保安規定の値を超える退出者はなかったものと判断いたしました。
以 上
*1 放射線管理区域
放射線による無用な被ばくを防止するため、また、放射性物質による放
射能汚染の拡大防止をはかるため管理を必要とする区域。
*2 圧力抑制プール水貯蔵タンク
圧力抑制プール※点検のために水を一時的に貯蔵するタンク。
※原子炉格納容器の下部にあり、原子炉圧力容器の圧力が上昇した場合
にその蒸気を圧力抑制室内に導いて冷却することで原子炉格納容器内
の圧力を低下させる設備。また、原子炉冷却材喪失事故時の非常用炉
心冷却系の水源として水を貯蔵する役割もある。
*3 簡易型放射線計測器の校正用線源の変更
校正用の線源を天然ウランからコバルトに変更した。
*4 ベータ線放出率
校正用線源から単位時間に放出されるベータ線の数。
*5 警報動作時の測定値
警報動作時の測定値は1.33ベクレル/cm2および3.11ベクレル/cm2。この
時期に当該モニタ近傍で汚染の発生がないこと、過去の同型モニタのケー
ブル接続不良による誤検出事象が数ベクレル/cm2〜10ベクレル/cm2程度の
値を示していることから、一時的なケーブルの接続不良等によるものと推
定。
*6 警報動作試験
検出器に警報設定値以上の線源を近づけて汚染の画面表示および警報が
発生することを確認する試験。
*7 警報設定値(0.8ベクレル/cm2)
警報は法令値※の5分の1(0.8ベクレル/cm2)に設定。
※表面密度限度(40ベクレル/cm2)の10分の1=4ベクレル/cm2
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