予兆を検知し、トラブルを防ぐ! リモート監視センター

2019/01/21

予兆を検知し、トラブルを防ぐ! リモート監視センター

2018年7月、東京電力フュエル&パワー内に、火力発電運営のさらなる最適化を目的として、リモート監視センター(DAC:Data monitoring & Analyzing Center)が新設されました。社会インフラに携わる発電事業の新たな柱として期待されているリモート監視センターの業務内容について、日々奮闘している二人の社員に聞きました。

リモート監視センター予兆管理グループ
データサイエンスチームリーダー兼プレディクションチームリーダー

島添道裕

2004年入社。発電設備の運転・保守・建設業務を経験。現在は、主に国内外の火力発電設備の遠隔監視による予兆管理業務を担当。

島添道裕

リモート監視センター予兆管理グループ

安田和樹

2015年入社。広野火力発電所にて発電所の運転業務を3年間経験。現在は主に国内の自社火力発電設備の遠隔監視による予兆管理業務を担当。

安田和樹

大きなトラブルにつながる小さな予兆

リモート監視センターは、火力発電設備の温度・圧力などの運転データを監視・分析することで、今までは発生してからでないと気が付くことができなかった発電設備トラブルの「予兆検知」をすること、設備の熱効率低下を早期に検知し、燃料費最小化のための「性能管理」を行うことが主な業務内容です。

安田「リモート監視センターという組織ですが、監視するだけでなく分析をするという意味で、私たちはDAC(Data monitoring & Analyzing Center)と言っています。」

島添「DACの強みは、複数メーカーによる数多くの発電設備を保有し、10年以上蓄積してきた膨大な運用保守の実績と知見を持つことです。
機器の異常・性能低下を知らせる小さな声をとらえることで、重大なトラブルや、熱効率の悪化を未然に防ぐだけでなく、どのようなメンテナンスが必要か検討する時間を停止前に確保でき、計画外の停止日数の削減および熱効率の維持にもつながります。」

発電運営の最適化と外販ビジネスの拡大へ

昨年度の予兆検知による不具合の検知件数は73件。
計画外の停止日数を前年度比14%削減し、安定的で経済的な発電所の運営に貢献しました。本年度は、前年度比からさらに20%削減できるよう、予兆検知の技術向上に努めています。

これまでは自社発電所のみを対象にして予兆検知の技術を用いた監視を行ってきましたが、加えて、この監視システムと培ってきたノウハウを、外部の事業者向けに提供するサービスを開始しました。その第一歩として三菱日立パワーシステムズ株式会社との協業である、フィリピンのパグビラオ発電所への遠隔監視サービスの提供をスタートさせました。

パグビラオ発電所

ビッグデータ×ノウハウによる予兆検知技術の向上

安田「予兆を検知するために、ビッグデータを分析していますが、各設備に特化した専門知識が必要な場合も有り、DACのメンバーのみでは解決できないこともあります。そのため、私たちのすぐ隣には設備のエキスパートがそろうエンジニアリングセンターがあり、必要に応じてエキスパートと一緒に対応しています。
例えば、設備異常の予兆検知があった場合、その検知結果の分析や、分析に基づく設備異常の対処方法などを、エキスパートと一緒に検討します。また、予兆を検知できなかった事象に対しても、どのようにすれば検知することができたのかを、ともに検討しています。」

島添「予兆検知の技術を向上させるためには実際に設備を見ている発電所の知見も必要となるため、発電所とのコミュニケーションを大事にしています。そのため日々の発電所への連絡以外に、発電所メンバーとデータ分析方法や分析対象に関する意見交換を行い、設備を運転している方々の意見を取り入れるようにしています。
こういったエンジニアリングセンター・発電所とのコミュニケーションも、予兆検知の技術の向上に繋がっています。」

安田「データ分析力と当社が今まで培ってきたノウハウであるエンジニアリング力、現場力の結集は、予兆検知の技術を高める上でとても重要です。
こういった取り組みから、発電所で発生する不具合を未然に防止することができようになり、発電所設備の更なる運営最適化に貢献できると考えています。」

ビッグデータ×ノウハウによる予兆検知技術の向上

さらなる発電設備運営の最適化へ

島添「当社は多くの火力発電設備を所有しており、そこから得られるセンサ信号や運転保守に関する情報等のビッグデータを保有しております。ただしデータは保有するだけでは価値はないので、活用に向けて様々なことに挑戦しています。」

安田「DACでは遠隔監視以外にもIoT技術によりビッグデータを活用することも検討しており、現在、発電設備の運用を最適化するため、AIを活用してボイラの燃焼状態を最適に調整する技術について検証をしています。この他にもIoT技術により実現できることは多くあり、可能性を感じています。様々な技術を活用し、お客さまに対して顕在的な問題を解決するだけではなく、潜在的なニーズも掘り起こして改善していけるような提案ができればと考えています。」

安田「また予兆検知技術の今後の目標としては、今まではベテランの運転員の勘やコツに依存していた事象の分析手法や、現場から得られる知見をデータベース化し、客観的な判定を行えるようにすることです。
判定結果を適切に運転員に提示することが出来れば、たとえ経験の浅い運転員でも今プラントで何が起こっているかを理解し適切な行動が出来るようになります。これは国内外の人材不足に悩むお客さまに対しても有効なサービスになり得ると考えています。」

島添「今後は他産業とのデータ共有事業として様々な発電事業者と繋がっていくことで、火力発電設備にとどまらず、水力、風力等をはじめとした発電設備の運営最適化にも貢献していくことを目指します。」

リモート監視センター

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