【社長に聞く】世界とダイナミックに渡り合う企業体を目指す
2016/06/10
電力の9割以上をまかなう「火力発電」と、安定した電力供給のための「燃料調達」。電気事業の基盤となる、この2つの事業を担うのが東京電力フュエル&パワー株式会社。世界を舞台に戦いを挑む同社が目指す今後の姿について、佐野社長にうかがった。
東京電力フュエル&パワー株式会社 代表取締役社長
佐野敏弘
競争の時代を勝ち抜き、福島への責任を果たすために
私たち東京電力フュエル&パワーは、電力自由化を迎えた時代の中で、発電事業者として“生き残る”のではなく、“勝ち抜いていく”ことを目標としています。なぜ、勝ち抜いていかなければいけないのか──。その理由は、燃料・火力発電事業を通じて高い収益を上げることで福島復興のための原資を創出し、福島への責任を果たしていくためです。東京電力フュエル&パワーは4月から燃料・火力発電事業会社として独立し、これまでとは全く違う経営環境に置かれています。もはや電気の安定供給だけでなく、激動するグローバルなエネルギー市場の中で打ち勝っていかなければ、会社としての存続も難しいと言えます。従って私たちは、国内にとどまることなく世界とダイナミックに渡り合い、グローバルに戦える会社を目指して、挑戦していかなければいけないと思っています。
資源開発から発電までのバリュー・チェーンを一体化してマネジメント
私たちの挑戦の一つめは、広範かつ効果的な包括的アライアンスの実現です。昨年4月には中部電力との間で共同事業会社「JERA」を設立しました。JERAでは、資源開発などの燃料上流事業から火力発電事業に至るバリュー・チェーンを一体化してマネジメントしていく、という新たなエネルギー事業モデルの構築を目指しています。例えば、ある発電所で予期せぬことが発生し、調達してきた燃料を自社内の発電所で受け入れることができなくなった場合、別の発電所に輸送先を変更するなどの柔軟な運用を行うことによって、燃料輸送船を待機させることによる余計な費用の発生を防ぐことができます。このように、バリュー・チェーン全体を常に見極めながら、その時々で最適な燃料の調達先や輸送先を検討しつつ、発電所の運転や停止の判断も連動させることで、より効率的かつ低コストなマネジメントが可能となるわけです。
発電所の運営スキルを世界で展開
挑戦の二つめは、火力発電事所のバリュー・アップです。現在各発電所では、通常業務の効率化・最適化による生産性倍増活動を徹底的に推進しています。一例をあげますと、石炭火力や高効率のLNG火力は、従来型の火力と比較して一日あたり数千万円程度、発電にかかる費用を安くできます。そのため、建設中プラントの早期運転開始や定期点検の短縮化を行うことで、大幅なコストダウンが実現できるということです。
また、昨年より生産現場の改善に長年取り組んでこられた内川晋氏(トヨタ自動車東日本株式会社名誉顧問)を招へいし、トヨタ式カイゼン方式についてご指導頂いています。常陸那珂火力発電所2号の定期検査においては、昼夜2交代制の導入や作業上の創意工夫を行うとともに、作業を秒単位まで見える化して無駄を徹底的に取り除くことによって、定期検査の工期を2/3程度まで短縮するなどの成果を上げています。
こうしたカイゼン活動の実績を積み上げ、世界トップレベルの発電所運営スキルを確立していくことで、3年後には、世界の火力発電事業者に対してビジネス展開していきたいと考えています。
強みは長年培ってきた技術力と2,500名の多様な人財
これらの挑戦を支える基盤となっているのは、長年培ってきた技術力と多様な人財です。各火力発電所では、これまで積み重ねてきた技術・技能の維持・向上を行いながら、創意工夫を通じた生産性倍増も自律的に取り組む職場環境を醸成しています。私たちが最も大切にしているのは、各火力発電所の現場に足を運び、その労をねぎらうとともに、直接経営の意志を現場に伝えることです。現場に足を運ぶことによって、その発電所毎に実施しているよい取り組み事例や課題などが見えてきますし、所員に対して経営としての客観的な意見や、会社全体として目指すところを伝えることができるからです。
社内では同時に、グローバルな競争を勝ち抜き、かつバリュー・チェーン全体を俯瞰して変革に取り組む多様な人財を育成しています。厳しい競争環境の中で打ち勝っていくためには、約2,500人ひとりひとりがそれぞれの視点で考え、アイディアを持ち寄ってカイゼンしていく、そんな会社を目指しています。
プロフィール
昭和52年4月 入社
平成21年6月 執行役員火力部長
平成23年6月 常務取締役技術開発本部長
平成24年6月 常務執行役
平成26年6月 取締役、代表執行役副社長 フュエル&パワー・カンパニープレジデント
平成28年4月 東京電力フュエル&パワー株式会社 代表取締役社長