大清水湿原は、平成22年(2010年)頃まで、毎年4月後半になると、ミズバショウの群落を見ることができました。また、大清水湿原に駐車場が隣接していることや車いすの方でも気軽に楽しむことのできるワイド木道を敷いていることもあり、多くの方々が訪れていました。
しかし、平成23年(2011年)以降、尾瀬国立公園でもニホンジカの急激な増加により、食害によってミズバショウが減少し、大清水湿原では見ることのなかったコバイケイソウ(在来種)が増加するなど、植生状況の変化が確認されるようになりました。
平成24年(2012年)、大清水湿原の魅力を回復させようと、尾瀬山小屋組合や尾瀬林業株式会社(現・東京パワーテクノロジー株式会社)が中心となって、毎年4月中旬にミズバショウの移植作業を始めました。しかし、水辺の地面が柔らかく植えやすい場所に植栽していたからか、ミズバショウは根付かず、翌年に再び、移植作業という状況が続いていました。
そこで、大清水湿原における湿原植生調査および植生回復作業にさらなる力を注力すべく、今年度は、地元の群馬県立尾瀬高校の生徒や宇都宮大学農学部 谷本丈夫名誉教授(森林科学科)に協力いただき、取り組んでいくこととなりました。谷本教授の指導のもと、これまでに植栽していた場所や時期を見直し、湿潤でありながら、流水のない場所を選定して、一株ずつ植えています。
写真は、平成28年4月20日、東京パワーテクノロジー株式会社の指導のもと、尾瀬高校の生徒(普通科・自然環境科2年生 55名)がミズバショウの移植作業を行った様子です。湿原では、周りの植物の根っこ等が絡み合っていたため、ミズバショウを植える穴を掘るのに苦労していましたが、1時間ほどで用意した1,000株を一つ一つ丁寧に植え終えました。
また、尾瀬高校の生徒による継続的な生育状況の調査によって、植栽後の状況観察やこれまでに根付かなかった原因を追究していきます。5月下旬に、ミズバショウの活着状況等の確認をするために現地調査を行ったところ、ミズバショウはうまく活着しているようでした。生徒たちの植えた水芭蕉が根付き、訪れた人々に喜んでいただけるよう、育つことを願っています。