尾瀬ヶ原より500mほど高い、標高1,960mに位置する山上湿原「アヤメ平」。
「アヤメ平」と聞くと、アヤメがさぞ綺麗に咲いているのだろうと思われますが、実はアヤメの花は一輪も咲きません。
この地に群生する「キンコウカ」という植物の葉がアヤメの葉と似ているため、見間違えて名付けたのが「アヤメ平」の由来と言われています。
2021年度の冬は昭和56年豪雪以来の大雪と言われるほどの積雪があり、尾瀬に伝わる「大雪の年は花付きが良い」との言葉どおり、アヤメ平のキンコウカは現在、”黄色い絨毯”のような素晴らしい群生となっています。
昭和30年代、♪夏が来れば思い出す~で知られる名曲「夏の思い出」の流行と共に、多くのハイカーが尾瀬に訪れました。
その時代はまだ湿原を自由に歩くことができたため、ハイカーたちによってアヤメ平が踏み荒らされ、湿原の約1ヘクタールが見るも無残に裸地化してしまいました。
東京電力は昭和39年(1964年)から、湿原に踏み込まず尾瀬を楽しんでいただけるよう木道を設置するとともに、昭和44年(1969年)から、アヤメ平の植生復元に取り組んでいます。
現在は裸地化した湿原の約9割が改善されましたが、残りの1割は緑化困難とも言われている中、引き続き地道な植生回復活動を続けています。
尾瀬で出会うことのできる「自然の美しさ」は、時を超えて多くの人たちに愛されています。湿原の荒廃と再生の歴史に想いを馳せながら、この黄色いキンコウカの絨毯を眺めてみてはいかがでしょうか。