平成11年10月5日
東京電力株式会社
住友電気工業株式会社
東京電力(株)と住友電気工業(株)の2社は、かねてより共同で高温
超電導(注)ケーブルの開発を進め、平成9年10月、世界で初めて高効率
の高温超電導ケーブル用線材(断面形状が丸線型で、電力損失を従来の10
分の1に低減)の開発に成功いたしましたが、このたび、超電導線材を組
み込んだ長さ100mのコンパクトな高温超電導ケーブルシステムを試作し、
実用に近い状態で課電・通電試験を実施することといたしました。
高温超電導ケーブルは、マイナス196℃の液体窒素冷却による超電導状
態で、大電流が抵抗(ロス)なく流れるという原理を応用して送電を行う
ものであり、限られた太さのケーブルで大きな電流を流すことができると
いうのが特長です。ケーブルサイズがコンパクトですむので、それにあわ
せて地中送電線の管路も小型で、かつ数も少なくてすみ、将来的に実用化
されれば、流通設備建設に際し、大幅なコストダウンを達成できるものとし
て期待しております。
今回のプロジェクトでは、まず断面形状が長方形で、製造実績の多い従
来型の超電導線材(10万kW級)を導体として用い、それを3本まとめてひ
とつの管におさめると同時に、絶縁に液体窒素を使った長さ100mのコンパ
クトな高温超電導ケーブルシステムを試作、設置し、約1年にわたって系
統への接続を想定した課電・通電試験を続けて、その性能を検証いたしま
す。あわせて内径150mmの管路内へ敷設した場合の技術的な課題を分析する
とともに、超電導状態をつくるための冷媒が導体へどのような影響を与え
るかを検証します。今回のように三相一括の高温超電導ケーブルを実用に
近いシステムとして組み上げて試験を行うのは、世界で初めてのことです。
今後、電力の流通設備建設にあたっては、都市部で利用できるスペース
が限られることから、効率化をおしすすめることがますます必要となりま
す。
高温超電導ケーブルが実用化されると、既存の地中管路(内径150mm程度)
を利用してこれまでと比べ最大10倍程度の電力(10万kW程度→100万kW程度)
が送電できるなど、既設設備の有効活用も可能であり、建設費の大幅なコ
ストダウンと地下空間の有効利用につながるものと考えております。
今後、両社は、このたびの試験とあわせ、既に研究中の超電導大容量ケ
ーブルの開発を着実にすすめ、高温超電導ケーブルの実用化に向けて取り
組んでまいります。
以 上
(注)高温超電導
超電導体には液体ヘリウム冷却(-269℃)を伴う金属系の超電導
体と、液体窒素冷却(-196℃)を伴う酸化物系の超電導体があり、
その冷却温度の違いから、後者を特に高温超電導体と呼ぶ。
超電導ケーブルを金属系の超電導体を用いて作ろうとすると、高
温超電導体よりもはるかに低い温度に冷却しなければならず、冷却
管が大きくなってしまう。このため、コンパクトな超電導ケーブル
を作るには高温超電導体が有望である。
<参考>
高温超電導ケーブルシステム課電・通電試験の概要
1.研究主体
・東京電力株式会社
所在地:東京都千代田区内幸町1-1-3 電話:03-3501-8111
社 長:南 直哉
・住友電気工業株式会社
所在地:大阪市中央区北浜4-5-33 電話:06-6220-4141
社 長:岡山紀男
2.内容
(1)現在の技術水準で製作可能な超電導ケーブルを試作
・電圧66kV(対地課電圧38kV)、容量10万kW(電流
1kA)、長さ100m、コンパクトな3相一括型
(2)以下の評価項目について、試験を実施
・長尺ケーブルの敷設施工性
・長尺断熱管の冷却特性
・長期定格運転特性
・各種負荷変動
3.研究期間
平成11年10月~平成15年3月
・ケーブルシステム開発・設置:平成11年10月~平成13年6月
・課電・通電試験:平成13年6月から1年程度
4.試験場所
(財)電力中央研究所・横須賀研究所内
所在地:神奈川県横須賀市長坂2-6-1 電話:0468-56-2121
5.費用
約18億円
・東京電力(株) 9億円
・住友電気工業(株) 9億円
以 上
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