平成11年8月11日
東京電力株式会社
○ 東京電力の会長の、荒木です。本来ならば南社長が出席して
申しあげるところですが、以前から所用が入っており、本日は
私から、このたびの事業構想について一言申しあげたいと思い
ます。
○ このたび私どもは、先ほどの孫さんのお話にもありましたと
おり、孫正義さん、ビル・ゲイツさん、と手を組んで、私ども
の光ファイバー通信のインフラと技術を活用し、一般コンシュ
ーマー向けの、使いたい放題、定額制で、これまでに例のない
格安なインターネット・サービスを始めることにしました。
○ 当社が持っている「光ファイバー通信」のインフラがどの程
度のものかといいますと、実は、通信会社以外の企業として、
当社は世界最大の光ファイバーネットワークを持っております。
これは、電力会社の特徴である基幹送電系統から電柱に至るま
での電力設備を活用して光ファイバーネットワークを充実して
きたためで、関東一円に施設してある光ファイバーはこう長で
約4万km、心線の延長では約130万km(地球約33周分)にものぼり
ます。
○ また、技術的にも、私どもは昭和50年代にわが国で初めて
「光ファイバー伝送」を実用化した実績を持っており、施工・
運用両面にわたるノウハウの面でトップクラスの水準にあると
自負しております。また、光ファイバーについては、20数年前
に変電所の通信ネットワークとして導入したとき、電力の影響
を受けない電力向きの優れた技術ということで感心したのをよ
く覚えています。
○ こうしたことを踏まえまして、私どもは2~3年程前から、
皆さまからどちらかというと疎んじられている「電柱」に何か
付加価値をつけられないか、電柱に施設している光ファイバー
ネットワークに何らかの付加価値を付けて、新しいビジネスや
サービスができないものかと、CALSやEDIへの活用など
の検討を重ねてまいりました。
特に電柱は、電線がのっているだけではありません。通信線、
CATVなどいろいろなものがのっているわけで、それらをも
っと何とか使えないかということで勉強してきた訳です。
○ ただ、私どもの弱点のひとつは、光ファイバーネットワーク
は持っていても、「足回り」を持っていないということです。
すなわち、一般のお客さまへ最終的に接続するために必要な、
通信の引込み線部分を持っていません。そこに何でアプローチ、
アクセスしたらよいかということで、電力線搬送やCATV、
PHS、ファイバー・トゥ・ザ・ホーム、さらには今回採用を
考えている加入者無線など、いろいろと勉強してきた次第です。
○ もうひとつの弱点をあげると、私どもがインフラというハー
ドを持っている一方で、ソフトを持っていないということです。
外部のコンサルタントの方からも、「十分なソフトを持ってい
る企業と協力してすすめる方が良いのではないか」といったア
ドバイスをいただいておりました。
○ そうした中、丁度ひと月半程前に、ソフト分野で豊富なノウ
ハウをお持ちの「孫さん」から、光ファイバーネットワークと
高速無線を組み合わせることで低廉なインターネット料金を達
成できるという画期的なアイディアをお伺いしたということで
あります。インフラを持つ私どもと、アイデアを持つ孫さんの
思惑が一致したということだと考えています。
○ 国内のインターネットを中心とする通信分野では、NTTさ
んのほぼ独占状態となっている引込線部分の接続料金が高いと
の声があります。NTTさんとしてはこれまでの経緯もあって、
米国のように「使いたい放題・定額制」で利用料金を大胆に下
げるのは難しいと伺っています。しかし、私どもはこの分野で
過去の古い歴史を背負っていないだけに、思いきって割安な料
金を実現することが可能と考えたわけです。
○ 「ビル・ゲイツさん」については、改めて私から申し上げる
までもありませんが、「孫さん」につきましても、今日のよう
な変革の時代において、先見性を発揮し、スピーディーで戦略
的な経営を実践している経営者として、かねてより、敬意を表
しておりました。特に高速通信を利用するという優れたアイデ
アや、物事をはこぶスピードの速さについて学ぶところが多く
あると考えています。
これから力をあわせて事業を進めていくわけですが、特に、
私としては、電気事業でも大切にしてきた「公益性」を重視し
ております。今後は、イコールパートナーとして、この事業の
持つ「公益性」をともに育て、社会的な役割をしっかりと果た
していくことが大切だと考えています。
○ いずれにしても、このような素晴らしいお二人と「画期的な
共同プロジェクト」をすすめることは、私としても極めて喜ば
しいことでありますし、これが起爆剤となって、わが国のイン
ターネット時代が本格的な幕開けを迎え、わが国の活力ある情
報化社会の新たな一ページとなることを心から期待する次第で
す。
○ つきましては、当事業について、国をはじめとする関係各位
の適切なご指導をお願い申し上げますとともに、皆さまのあた
たかいご支援を心よりお願い申し上げます。
○ 私からは以上です。
以 上
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