平成11年7月29日
東京電力株式会社
当社はこのたび、98年度における当社の環境問題への取り組み状況や今後の目
標などを主な内容とする99年版「環境行動レポート」を作成しました。
「環境行動レポート」は、当社の環境保全活動全般について、広く皆さまにご
紹介し、ご理解いただくとともに、ご意見を承り、今後の活動に生かしていくた
めに、92年度から毎年公表しているもので、今年で8回目となります。
98年度における主な成果は下記の通りですが、とりわけ、CO2、SOx,NOx
については総排出量、排出原単位ともに、前年度比でさらなる減少を達成したこ
とが特徴です。なお、SOx、NOxについては、従来に引き続き世界のトップ水
準を維持しています。
また、当社の資源リサイクル率は93%と、日本の全産業のリサイクル率37%を
大幅に上回っております。
1.当社の環境保全の主な取り組み実績(98年度)
(1)CO2排出原単位は前年度比5%減とさらに減少
90年度 97年度 98年度 対前年度比
CO2排出原単位 92 80 76 ▲5%
(g-C/kWh)(注1)
(注1)g-C/kWh:1kWhの電気を発電するときに発生するCO2量を炭素換
算で表した単位。
98年度は景気が前年度よりさらに後退したことから、発電電力量は、産業用
電力需要の落ち込みなどに伴って、前年度とほぼ同水準(+0.1%)となりまし
たが、
(1)CO2を排出しない原子力発電の設備利用率が向上(97年度:79.5%→
98年度:83.1%#clt;自社分#cgt;)し、原子力発電電力量が増加したこと
(2)火力発電電力量が減少し、さらに火力発電の中でもLNG(液化天然ガス)の
比率が増大(97年度:64%→98年度:69%#clt;他社込#cgt;)したこと
により、CO2排出原単位は前年度に比べ5%減少し、その結果、総排出量も5
%低下しました。
〈参考〉
90年度 97年度 98年度 対前年度比
CO2総排出量(万t-C)(注2) 2,280 2,420 2,290 ▲5%
発電電力量(億kWh)(注3) 2,485 3,026 3,030 +0.1%
(注2)t-C:炭素換算トン
(注3)発電電力量=当社の発電所分(発電端)と他社分(発電端)、他電力
会社との融通分などの合計
なお、発電電力量の46%を占める原子力発電によるCO2抑制量は2,620
万t-Cと試算されます。これは、当社の98年度におけるCO2総排出量を上
回る量であり、それだけ多くのCO2排出を抑制できたことになります。
(2)SOX、NOXの排出原単位は前年度比、それぞれ25%減、8%減とさら
に減少
97年度 98年度 対前年度比
SOX排出原単位(g/kWh) 0.08 0.06 ▲25%
NOX排出原単位(g/kWh) 0.12 0.11 ▲8%
全発電電力量に占める火力発電の割合が減少し、さらに火力発電電力量に占
めるLNGの構成比が増加したため、SOx、NOxとも排出原単位が減少しま
した。
なお、これらの実績は、従来に引き続き、世界的に見ても極めて高い水準を
維持しています。
(3)リサイクル率は前年度比プラス2ポイントの93%、埋立処分量は
前年度比約40%削減
97年度 98年度 対前年度比
埋立処分量(千t) 16.4 10.3 ▲37%
再資源化率(%) 91 93 +2ポイント
コンクリートくず、貝類などの再資源化率の向上によって、埋立処分量は前
年度と比べ37%減少し、また再資源化率は前年度と比べて2ポイント増の93%
に達しました。これは、日本の全産業の再資源化率37%(1996年度)を大きく上
回っています。
(4)規制対象フロン類の修正消費量は、前年度比19%減少
97年度 98年度 対前年度比
修正消費量(ODP-t)(注4) 7.0 5.7 ▲19%
実消費量(t) 21.5 26.5 +23%
工事点検(洗浄用)などで規制対象フロン類の実消費量は5t増加しましたが、
オゾン破壊係数(ODP)の小さいフロンやオゾンを破壊しないフロンへの切り替え
を進めたことにより、オゾンに与える影響度を考慮した修正消費量(注4)は、前
年度に比べ19%減少しました。
(注4) 修正消費量とは、フロンの種類ごとの実消費量に、各フロンのオゾン
への影響度を表す「オゾン破壊係数」(ODP=Ozone Depletion Potential)
をかけて算出したもの。
2.当社の環境保全に向けた新たな取り組み
当社は地球環境問題から地域の環境保全にいたるまで、一層の充実に向けた新
たな取り組みを展開しています。99年版「環境行動レポート」に紹介した新たな
取り組みは次のとおりです。
(1) 「環境会計」に向けた取り組み
当社は、従来より環境に関するコストを公害防止等に直接資する「環境対策
投資額」、より良い環境を創造するための「環境関連対策投資額」、環境対策
設備にかかわる経費である「環境対策設備維持管理費」の3類型に分類、整理
し、管理してきました。
・このうち、当社の98年度の環境に関する投資額実績(環境対策投資額と環境
関連対策投資額の合計)は、2,455億円となっており、全設備投資額(原子燃料
を除く)の約25%を占めています。
<環境に関する投資額>
環境対策投資額: 大気汚染防止施設、水質汚濁防止施設、騒音・
348億円 振動防止施設、産業廃棄物処理施設の建設など
環境関連対策 : 自然環境保全(緑化、環境調査など)、環境調和
投資額 (送配電線の地中化および移設工事、変電設備の
2,107億円 コンパクト化など)など
合計2,455億円
・また、将来、「環境会計」を実現することをめざして、環境対策投資に伴
う資本費・修繕費など環境対策設備にかかわる経費も今回から公表するこ
とにしました。
<環境対策設備にかかわる経費>
環境対策設備: 資本費(環境対策設備から発生する減価償却費な
維持管理費 ど)、修繕費(定期点検などの費用)、その他(大気
971億円 ・水質などの測定、廃棄物運搬・焼却に関する委託
費用など)
*「環境会計」は、環境保全・環境管理の効率化を図る手段として、また環
境に関する情報開示を充実させる方策として重要な役割を果たすと考えられ
るため、今後、環境コストの全体像の把握を進めるとともに、コストに対応
した「収益(効果)」面の把握方法などについて検討を進め、環境会計の実現
に向けて努力してまいります。
(2) 地球温暖化防止に向けた新たな取り組み
地球温暖化防止対策として、発電過程でのCO2の発生がない原子力発電の推
進や火力熱効率の向上、省エネルギーなどの取り組みを引き続き推進していく
とともに、これら国内対策を補完する手段として、京都メカニズム注5)(柔軟性
措置)の活用を目指した国際的取り組みについても積極的に進めています。
こうした取り組みの一つとして、1999年7月当社は、豪州ニューサウスウェー
ルズ州森林局が推進している植林プロジェクトへの参加に向けた「意思表明書」
を交換しました。植林は、世界の森林資源の保全に貢献し、大気中のCO2を直
接固定する現実的な温暖化防止対策であることから、本プロジェクトへ参加す
る方向で準備を進めているところです。今後、具体的な協議が整い次第、正式
契約を結び、2000年に約1,000haの植林に着手し、今後10年間で植林面積を1万
~4万haに拡大することを検討してまいります。例えば、1万haの土地に植林
したとすると、そこで吸収・固定されるCO2量は年間4~5万t-C程度と試算
されます。
注5)京都メカニズム…一昨年12月の地球温暖化防止京都会議で採択された京
都議定書に定められた、温室効果ガスを効果的に削減するための仕組み
で、
・排出権取引(炭素クレジットの売買)
・共同実施(先進国間で協力してCO2排出削減を実施。実施者は応分量を自
らの削減量としてカウントできる。)
・クリーン開発メカニズム(先進国と途上国の間で協力してCO2排出削減を実施)
がある。
(3) 環境マネジメントのためのシステムのさらなる充実
支店や発電所などにおいて、環境マネジメントのためのシステムを約3年前
から導入し、運用しています。(今回のレポートでは、具体的な事例として、
多摩支店における環境マネジメントシステムの運用状況を紹介。)
今後、さらに充実を図るための手段のひとつとして、ISO14001の外部認証取
得を目指した活動も進めております。現在、神流川水力建設所でこの活動を進
めており、1999年度内に認証を取得する予定です。
3.「環境行動レポート」の内容充実に向けた取り組み
・今回の「環境行動レポート」では、「資源循環型社会への取り組み」「環境
・エネルギー教育」の2つの章を新設し、廃棄物や原子燃料のリサイクル、環
境教育支援活動など従来からの幅広い取り組みについて、内容の充実を図り
ました。
・また、「専門用語について分かりやすく解説してほしい」というお客さまの
ご要望に応え、「用語の解説」を巻末に付加するとともに、昨年に続き、本
レポートの要約版として、カラーパンフレット「東京電力の環境保全へのと
りくみ」を別冊で作成しました。
以 上
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