「地球温暖化抑制のための森林評価研究」の開始について
-尾瀬地域において森林の温室効果ガス収支に関する調査研究を開始-
平成11年7月15日
東京電力株式会社
当社はこのたび、地球温暖化抑制に向けた研究の一環として、尾瀬地域(注)
に二酸化炭素(CO2)を観測するタワーを設置し、森林全体のCO2吸収能力
に関する調査研究を開始することといたしました。こうしてタワーを建設し、森
林のCO2収支データの直接的な調査研究を行うのは、民間としてはわが国初で
す。
当社では、昨年9月から尾瀬地域の北方林(カラマツ、オオシラビソ)と温帯
林(ブナ)の樹木約 1,800本の直径と高さを年1回測定し、その成長度合いから
CO2吸収量を推定する調査を実施しております。こうした調査に加えて、この
たび開始する調査研究は、3地点に設置したタワー(高さ25~31メートル)で樹
木上部のCO2濃度や風向・風速の変動を季節ごとに年4回、1週間連続で観測
し、森林と大気の間のCO2の出入りを計測するものです。
この2つの測定結果を組み合わせることによって、森林全体としての精度の高
いCO2収支データを評価・分析するとともに、あわせて湿原のCO2蓄積量を
調査し、尾瀬地域全体のCO2収支データを評価いたします。
当社は、今回の研究結果をもとにして、森林のCO2吸収効果が地球温暖化抑
制の観点からも有効であることを科学的・定量的に評価するとともに、森林プロ
ジェクトのコンサルティング事業など、将来の新規事業検討の資として役立てて
まいりたいと考えております。
以 上
(注)当社は尾瀬地域の群馬県側(約180平方キロメートル、山手線内側の2.8倍)
の土地を、水力発電に重要な緑のダムとして所有しており、尾瀬の貴重な
自然を守るため、30年以上前から全長20キロメートルに及ぶ木道の整備や、
踏み荒らされた湿原の植生作業などさまざまな自然保護活動に取り組んで
います。
<参考>
「地球温暖化抑制のための森林評価研究」の概要
1.研究目的
尾瀬の代表樹種であるブナ、カラマツ、オオシラビソの森林について樹木
の直径、樹高の増加を測定するストック測定と、タワーを用い森林と大気の
間の直接のやりとりを観測するフラックス観測を行い、客観的かつ科学的精
度の高いCO2データを得る。さらに、湿原調査の結果から尾瀬全体のCO2
吸収量を評価し、本調査結果から森林のCO2吸収効果が地球温暖化抑制
の観点からも有効であることを科学的・定量的に評価する。
2.研究期間
平成10年9月~平成13年12月
3.研究費用
約2.7億円
4.調査手法
(1) タワーによる観測(フラックス観測)
光合成によって森林がCO2を吸収する際の昼間の下向きの流れと、森林
がCO2を排出する際の夜間の上向きの流れを直接計器で計測する方法で、
0.1 秒単位のCO2濃度の変化と3次元風向・風速計から鉛直方向の変化を
季節ごとに年4回、1週間連続で観測する。タワーの色は景観に配慮した環
境調和色(こげ茶色)に塗装している。
(2) 森林・湿原の定期測定(ストック測定)
森林3地点において調査区を設定し、カラマツ、オオシラビソ、ブナの持
つCO2固定量を推計するために、サンプル木の胸高直径・樹高を年1回測
定し、光合成寄与分の調査を実施する。
また、森林3地点に湿原を加えた4地点において、土壌の有機物分解によ
るCO2放出、土壌中のCO2固定量を評価するため、土壌発生ガス・有機
物量などの分析を行う。
これらの測定により、樹木について地上部のみならず、地下部についても
CO2固定量の評価が可能となる。
(3)評価手法の確立
(1)(2)の2つの測定結果を比較検証することにより、精度の高い尾瀬森林
のCO2収支の評価を行い、森林全体の収支を評価する手法の確立を図る。
以 上
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