平成10年12月3日
東京電力株式会社
すでにお知らせしましたとおり、当社は中性子遮へい材データに疑義が
見られた使用済燃料輸送容器8基について原電工事株式会社に対する調査
を実施した結果、これらの容器に使用されている中性子遮へい材の材料証
明書において、データの書き換えあるいは原料取り替え前の材料証明書が
使用されていたことを確認いたしました。このため、当社はこれらの容器
を使用した発電所の構内輸送を見合わせるとともに、国の「使用済燃料輸
送容器調査検討委員会」の検討状況を踏まえ、輸送容器の安全性確認や再
発防止策について検討を進めてまいりました。
(10月13日、11月12日お知らせ済み)
本日、上記調査検討委員会において検討報告書が取りまとめられたこと
を踏まえ、当社としての再発防止策を含めた今後の取り組みならびに容器
の遮へい安全性評価結果について、通商産業省に報告を行いましたのでお
知らせいたします。
本報告に関しては、通商産業省から、今後かかる事態が発生しないよう、
厳重注意を受けるとともに、
・ 調査検討委員会報告書の指摘を十分踏まえ、当社の対策を確実に実
施し、再発防止に万全を期すこと、
・ 引き続き発電所の構内輸送を見合わせるとともに、個々の燃料輸送
容器の遮へい性能の妥当性を再点検すること、
を求める指示がありました。
当社といたしましては、これを受けて、今回のような問題が二度と起き
ないようにするため、また、原子力に対する信頼を取り戻すためにも、本
日ご報告した対策を的確に実施していくことに加え、情報の開示・透明性
の確保、企業内・企業間の情報の流れの円滑化やモラルの向上といった風
土の改善策について、今後さらに検討を重ねてまいる所存です。
また当社は、今回の問題が原子力発電に対する社会的信頼を損ねるに至
ったことを重く受けとめ、以下の措置をとることといたしました。
友野 勝也 取締役副社長原子力本部長 減給3割 2ヶ月
榎本 聰明 取締役原子力本部副本部長 減給2割 1ヶ月
なお、具体的な取り組みならびに遮へい安全性評価結果は下記のとおり
です。
記
1.品質管理、技術に関する再発防止対策
以下の対策については、輸送容器のみならず原子力発電所で使用する
安全上重要な機器の製造、保守作業についても対象にすることとし、同
様の問題の再発防止を図っていく。
(1)材料仕様等に関する関係者との情報交換、技術検討
特殊材料または新技術の採用の場合は、材料仕様等の意味や重要
性、技術内容等が十分理解されるよう、必要に応じ材料メーカ、製
造メーカ、当社の間で一層の情報交換を行うとともに、当社におい
ても必要な技術検討を行う。
(2)下請け承認審査の充実
元請け企業との間で、元請け企業が下請け企業を選定する際、企
業の技術能力、組織、品質管理体制等について確認することを明確
化する。また下請け企業がさらにその下請け企業を選定する際にも
、必要に応じ、同様の確認を行うよう指導する。
(3)品質保証監査の充実
当社は、元請け企業の監査にあたり下記の項目を既に行っている
が、改めてこれを再確認し、さらにその運用を徹底していく。
・ 元請け企業自身において、内部監査、あるいは外部監査を受け
る等適切な企業内監査の仕組みが働いていること
・ 下請け企業が適切な品質管理を行っていることを元請け企業が
監査し、確認していること
・ 元請け企業と下請け企業との間で、責任関係が明確になってい
ること
また、必要に応じ、当社が下請け企業に対して直接監査が行える
旨を契約に反映する。
(4)データの確認方法の充実
当社が行う材料証明書(公的規格が定められていない材料)の確
認について、下記の事項を徹底する。
・ 材料証明書が、品質管理部門等の確認を受けたものであること
また、発行責任者が明確であることを確認する。
・ さらに、直接、機能確認ができない材料は、必要に応じて元デ
ータの確認を実施する。
(5)工程調整の円滑化
品質への影響を与えるような無理な工程となっていないか等、請
負企業等との連絡調整をより円滑に行う。
2.環境的要因の改善
1.の品質管理等の観点からの対策に加え、環境的な要因については
単に今回の問題の再発防止にとどまらず、下記の基本的な方針に基づき
改善に取り組み、原子力に対する透明性の向上をはかり、広く社会の皆
さまにご理解をいただけるよう努めていく。
(1)モラルの向上
・ 当社ならびに原子力に関連する協力企業の職員のモラル向上と、
その必要性、重要性の周知徹底をはかる。
・ モラルに関する教育の充実をはかる。
(2)情報の流れの円滑化
・ 不具合等の負の情報を協力企業から、ならびに社内において吸い
上げていく仕組みを見直す。
・ 不都合なものも含め、情報の流れを阻害する要因を摘出し対応策
を検討する。
当社は、今回の問題の重要性に鑑み、再発防止対策の実効性を高める
ため、社内に「風土改革検討委員会」を設置(11月5日)し、現在その
検討を進めている。改善策について成案を得しだい内容に応じ計画的に
実施する。
3.NFT型使用済燃料輸送容器の遮へい安全性評価結果の概要
NFT型使用済燃料輸送容器について、実機の中性子遮へい材の密度、
ホウ素及び水素濃度に対して、使用済燃料輸送容器調査検討委員会が
設定した十分厳しめな条件を用いて、設計上最も厳しい使用済燃料を収
納した場合について遮へい解析を実施し、遮へい性能の評価を行った。
この結果、中性子吸収材の成分の変化による線量当量率(単位時間当
たりに出る放射線の量)への影響は少ないことが確認され、また、これ
らは法令に定められた基準値を十分下回ることも確認できた。
なお、当社は本結果を使用済燃料輸送容器調査検討委員会に報告して
おり、検討委員会においては、別途、国の機関により実施した解析結果
も踏まえ、使用済燃料輸送容器の遮へい性能に関し、以下のような報告
がなされている。
(報告書の抜粋)
NFT型使用済燃料輸送容器(6タイプ注1)について、濃度等の測
定誤差及び工程中の誤差要因等を考慮して、十分厳しめな解析用入力値
を設定した上で、設計仕様上最も厳しい線源条件の使用済燃料を収納し
た場合についての遮へい性能に関する安全性評価(通常輸送時)を実施
した結果、ホウ素濃度を20%減、水素濃度を10%減とした場合でも輸送
容器側部中央部表面の線量当量率の増加は最大でも6%であり、レジン
の成分の変化による線量当量率への影響は少ないとの結論が得られた。
すなわち、使用済燃料輸送容器調査検討委員会の調査で信頼に足ると
考えられる濃度等の測定値に基づき、分析誤差等を考慮して実際の輸送
容器全体について遮へい性能を概括してみた結果、その線量当量率は法
令に定める基準を十分満たすものであるとの評価が得られた。
ただし、個別の輸送容器の取扱いについては、各省庁において、デー
タの信頼性に留意しつつ、遮へい性能の妥当性について改めて審査を行
うべきである。
注1)当社の構内輸送に用いられているのは4タイプ
以 上
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