平成10年5月26日
東京電力株式会社
当社は、鉛電池に比べて電力貯蔵密度が3倍と高く、コンパクトな電力貯蔵用
「NAS電池(ナトリウム-硫黄電池)」の研究開発を昭和59年度から日本ガイ
シ(株) と共同で進めてまいりましたが、このたび、量産すれば一層のコストダ
ウンが達成できる電池の技術開発に成功いたしました。このことによりNAS電
池は技術的には実用化の域に到達いたしました。
NAS電池は、都市部などの需要地やその近傍に設置して、深夜に充電・貯蔵
し、昼間のピーク時などに放電を行うものです。この電池が実用化されると、都
市部などの需要地に揚水式水力発電所と同様の機能を持たせることができます。
その利用により、昼夜間の格差が大きい電力負荷の平準化や、電力設備の効率的
運用、設備投資の抑制などに役立つだけでなく、非常時の電源として、あるいは
出力が不安定な自然エネルギーのバッファーとしても役割が期待できます。
NAS電池については、これまで要素モデルや原型機等の各開発ステージで安
全性を含めた基本性能を確認し、当社の川崎電力貯蔵連系試験場や綱島変電所等
での実証試験により、耐久性や運転・保守性等を確認してまいりました。このた
び、単電池(モジュールの構成要素)の出力・容量を従来のものの約2.5倍にス
ケールアップすることにより、開発当初は1キロワットあたり300万円程度の建
設費が必要でしたが、1キロワットあたり120万円程度へと大幅なコストダウン
をはかることに成功しました。
今回工夫した点は、単電池を組み合わせた1モジュールあたりの出力・容量を
2倍にしたことで、これによってエネルギー密度を従来のものより約2割向上さ
せ、電池設置スペースも従来の3/4程度に縮小できました。また、単電池をス
ケールアップするにあたっては、効率低下などの技術的課題がありましたが、固
体電解質(ベータアルミナ管)の抵抗を低くして克服し、その他の性能について
もメーカー工場内での諸試験において目標値をクリアすることを確認いたしまし
た。なお、これからは将来的に量産化を図ることにより揚水式発電所の建設コス
ト並みにコストダウンすることが課題であります(揚水式発電所の建設コストは
、流通設備コストを含め、1キロワットあたり30万円程度)。
今後はこの単電池を384本組み合わせた50キロワットのモジュール電池を使い、
実用規模の変電所設置用6,000キロワット級NAS電池システムを当社の大仁変
電所(静岡県田方郡大仁町三福)に設置するとともに、お客さま設置用200キロ
ワット級NAS電池システムを当社技術開発センター(神奈川県横浜市鶴見区)
へ設置して、さらなるコストダウンに向けた量産技術をはじめ、運転・保守性
能、設計合理化を検証する予定です。
なお、大仁変電所のNAS電池システムについては、本年9月頃に試験設備工
事に着工し、平成11年3月頃から、3台ある変圧器ごとに2,000kWずつ、段階的に
運転を開始する予定であり、また、技術開発センターについては、平成11年のは
じめ頃に運転開始する予定です。
以 上
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